この問題では自然対数の底 $e$ の定義として知られる重要な極限を学習します。この極限は複利計算、確率論、微分方程式など、数学と応用分野の多くの場面で現れる基本的な概念です。
自然対数の底 $e$ の導入
この極限の値は数学定数 $e \approx 2.71828...$ として知られており、自然対数の底として定義されます。
1. 複利計算からの動機
この極限は元々、複利の計算から生まれました:
- 元本1円を年利100%で1年間複利運用
- 年 $n$ 回複利計算すると: $\left(1 + \frac{1}{n}\right)^n$
- $n \to \infty$ (連続複利)での極限値
2. 数値的な観察
$x$ の値を大きくしていくと:
- $x = 10$: $\left(1 + \frac{1}{10}\right)^{10} = (1.1)^{10} \approx 2.594$
- $x = 100$: $\left(1 + \frac{1}{100}\right)^{100} \approx 2.705$
- $x = 1000$: $\left(1 + \frac{1}{1000}\right)^{1000} \approx 2.717$
- $x = 10000$: $\left(1 + \frac{1}{10000}\right)^{10000} \approx 2.718$
値が $e \approx 2.71828...$ に収束していることが分かります。
3. 対数による解析
$y = \left(1 + \frac{1}{x}\right)^x$ とすると:
$\ln y = x \ln\left(1 + \frac{1}{x}\right)$
$\frac{1}{x} = t$ と置換すると $x \to \infty$ のとき $t \to 0$ なので:
$\ln y = \frac{\ln(1 + t)}{t}$
$\lim_{t \to 0} \frac{\ln(1 + t)}{t} = 1$ (これは $\ln$ の導関数の定義)
したがって $\lim_{x \to \infty} \ln y = 1$ より $\lim_{x \to \infty} y = e^1 = e$
4. 関連する重要な極限
この基本極限から以下が導かれます:
- $\lim_{x \to 0} (1 + x)^{\frac{1}{x}} = e$
- $\lim_{x \to 0} \frac{e^x - 1}{x} = 1$
- $\lim_{x \to 0} \frac{\ln(1 + x)}{x} = 1$
自然対数の底の重要性
定数 $e$ は以下の分野で基本的な役割を果たします:
- 複利計算: 連続複利における成長率
- 確率論: ポアソン分布、指数分布の基本定数
- 微分方程式: 指数的成長・減衰の記述
- 機械学習: ソフトマックス関数、シグモイド関数の基礎