挟み撃ちの定理(サンドイッチ定理)は、直接計算が困難な極限を求める際の重要な手法です。特に振動する関数や複雑な合成関数の極限計算において威力を発揮し、数値解析の誤差評価にも応用されます。
挟み撃ちの定理の原理
$g(x) \leq f(x) \leq h(x)$ で $\lim_{x \to a} g(x) = \lim_{x \to a} h(x) = L$ のとき:
$\lim_{x \to a} f(x) = L$
1. 問題の分析
$f(x) = x^2 \sin\left(\frac{1}{x}\right)$ において:
- $x ≠ 0$ で定義される
- $\sin\left(\frac{1}{x}\right)$ は $x \to 0$ で激しく振動
- 直接的な極限計算は困難
2. 不等式の設定
$\sin$ 関数の基本性質 $-1 \leq \sin \theta \leq 1$ を利用します:
$-1 \leq \sin\left(\frac{1}{x}\right) \leq 1$
両辺に $x^2$ を掛けます($x^2 \geq 0$ なので不等号の向きは変わりません):
$-x^2 \leq x^2 \sin\left(\frac{1}{x}\right) \leq x^2$
3. 挟み撃ちの準備
設定した不等式:$-x^2 \leq x^2 \sin\left(\frac{1}{x}\right) \leq x^2$
ここで:
- $g(x) = -x^2$
- $f(x) = x^2 \sin\left(\frac{1}{x}\right)$
- $h(x) = x^2$
4. 両端の極限計算
$x \to 0$ のときの両端の極限:
- $\lim_{x \to 0} (-x^2) = 0$
- $\lim_{x \to 0} x^2 = 0$
両端の極限が等しく 0 なので、挟み撃ちの定理により:
$\lim_{x \to 0} x^2 \sin\left(\frac{1}{x}\right) = 0$
5. 視覚的理解
この関数の挙動:
- $\sin\left(\frac{1}{x}\right)$ は $x \to 0$ で $-1$ と $1$ の間で激しく振動
- しかし $x^2$ が 0 に近づく速度が速いため、全体として 0 に収束
- 「振動の振幅が急速に減少する」状況
6. 数値的確認
具体例での確認:
- $x = 0.1$: $|0.1^2 \sin(10)| \leq 0.01$
- $x = 0.01$: $|0.01^2 \sin(100)| \leq 0.0001$
挟み撃ちの定理の応用
挟み撃ちの定理は以下の場面で重要な役割を果たします:
- 数値解析: 計算誤差の上界評価
- 確率論: 確率変数の収束性証明
- 機械学習: 学習アルゴリズムの収束性保証
- 信号処理: ノイズを含む信号の解析