ベイズファクターによる簡単な仮説比較
ベイズファクターは、2つの競合仮説間でのデータの支持度を定量化する重要な指標です。この問題では、薬の効果について簡単な例で学習します。
問題設定
- データ:2人とも回復(成功回数x=2, 試行回数n=2)
- 仮説H₀:p = 0.5(薬に効果なし)
- 仮説H₁:p = 0.8(薬に効果あり)
Step 1: H₀の下での尤度
H₀では p = 0.5 なので:
$P(\text{データ}|H_0) = (0.5)^2 = 0.25$
Step 2: H₁の下での尤度
H₁では p = 0.8 なので:
$P(\text{データ}|H_1) = (0.8)^2 = 0.64$
Step 3: ベイズファクターの計算
$BF_{01} = \frac{P(\text{データ}|H_0)}{P(\text{データ}|H_1)} = \frac{0.25}{0.64} = 0.391$
Step 4: 結果の解釈
ベイズファクターの解釈
- BF₀₁ = 0.391 < 1:データはH₁を支持
- BF₁₀ = 1/0.391 ≈ 2.56:H₁への弱い証拠
- 判定:薬に効果があるという仮説が支持される
判定基準(Kass & Raftery)
- BF > 10:強い証拠
- 3 < BF < 10:中程度の証拠
- 1 < BF < 3:弱い証拠
- BF ≈ 1:証拠なし
今回のBF₁₀ ≈ 2.56は弱い証拠の範囲に入ります。
ベイズファクターの実用的意味
Step 5: 比較の詳細分析
| 仮説 | 事前の妥当性 | データとの整合性 | 総合評価 |
|---|
| H₀ (p=0.5) | 中立的仮説 | 25%の確率で起こる | やや低い支持 |
| H₁ (p=0.8) | 効果的な薬仮説 | 64%の確率で起こる | より高い支持 |
Step 6: 計算の検証
別の観点から確認してみましょう:
$\text{尤度比} = \frac{0.64}{0.25} = 2.56$
これは、観測されたデータが H₁ の下で H₀ の下よりも 2.56倍起こりやすいことを示しています。
より大きなサンプルでの考察
もし10人中8人が回復した場合:
- H₀:$P(\text{データ}|H_0) = \binom{10}{8}(0.5)^{10} = 45 \times 0.00098 ≈ 0.044$
- H₁:$P(\text{データ}|H_1) = \binom{10}{8}(0.8)^8(0.2)^2 = 45 \times 0.168 \times 0.04 ≈ 0.302$
- BF₀₁:$0.044/0.302 ≈ 0.146$
- BF₁₀:約6.9(中程度の証拠)
サンプルサイズが大きくなると、証拠がより明確になります。
実際の臨床応用での考慮事項
Step 7: 臨床的意義
- 統計的証拠:BF₁₀ = 2.56は弱い証拠
- 臨床的判断:追加の患者での検証が必要
- リスク評価:副作用や費用も考慮
- 意思決定:統計だけでなく総合的判断が重要
ベイズファクター vs p値
| 項目 | ベイズファクター | p値 |
|---|
| 解釈 | 仮説間の証拠の重み | 帰無仮説との整合性 |
| 基準 | 連続的な証拠の強さ | 0.05という任意的基準 |
| 仮説 | 複数仮説の直接比較 | 帰無仮説のみ検定 |
| 解釈の直感性 | 「何倍支持されるか」 | 「稀な事象の確率」 |