二元配置分散分析における交互作用の解釈
二元配置分散分析では、2つの要因の主効果と交互作用を同時に検定できます。交互作用の有意性は、要因間の関係性を理解する上で重要な指標となります。
交互作用の意味
交互作用なし:各要因の効果が独立(加法的効果)
交互作用あり:一方の要因の効果が、他方の要因の水準によって変化(乗法的効果)
分散分析表の読み方
Step 1: 各効果の検定結果
効果 | F値 | p値 | 有意性(α=0.05) | 判定 |
---|
要因A | 8.75 | 0.002 | p < 0.05 | 有意 |
要因B | 12.38 | 0.003 | p < 0.05 | 有意 |
A×B交互作用 | 3.32 | 0.065 | p > 0.05 | 非有意 |
Step 2: 交互作用の解釈
- p値 = 0.065 > 0.05:統計的に有意でない
- 結論:要因Aと要因Bの効果は独立(加法的)
- 意味:一方の要因の効果は、他方の要因の水準に関係なく一定
交互作用の統計的検定
Step 3: F検定の詳細
$$F_{交互作用} = \frac{MS_{A \times B}}{MS_{error}} = \frac{22.90}{6.88} = 3.32$$
自由度:
- 分子:df(A×B) = df(A) × df(B) = 2 × 1 = 2
- 分母:df(error) = 24
臨界値:
$$F_{0.05}(2, 24) = 3.40$$
判定:
$$F_{観測} = 3.32 < F_{臨界} = 3.40$$
したがって交互作用は有意でない(p = 0.065 > 0.05)
主効果の解釈
Step 4: 要因Aの主効果
- F値:8.75, p値:0.002
- 判定:高度に有意(p < 0.01)
- 意味:要因Aの水準間に明確な差がある
Step 5: 要因Bの主効果
- F値:12.38, p値:0.003
- 判定:高度に有意(p < 0.01)
- 意味:要因Bの水準間に明確な差がある
効果サイズの評価
Step 6: 偏イータ二乗の計算
要因A:
$$\eta_p^2(A) = \frac{SS_A}{SS_A + SS_{error}} = \frac{120.5}{120.5 + 165.0} = \frac{120.5}{285.5} = 0.422$$
要因B:
$$\eta_p^2(B) = \frac{SS_B}{SS_B + SS_{error}} = \frac{85.3}{85.3 + 165.0} = \frac{85.3}{250.3} = 0.341$$
交互作用A×B:
$$\eta_p^2(A \times B) = \frac{SS_{A \times B}}{SS_{A \times B} + SS_{error}} = \frac{45.8}{45.8 + 165.0} = \frac{45.8}{210.8} = 0.217$$
効果サイズの判定基準
効果 | η²ₚ | 効果サイズ | 実用的重要性 |
---|
要因A | 0.422 | 大(>0.14) | 高い |
要因B | 0.341 | 大(>0.14) | 高い |
A×B交互作用 | 0.217 | 大(>0.14) | 統計的には非有意だが効果サイズは中程度 |
選択肢の詳細検討
選択肢A:交互作用は有意であり、要因は独立ではない
- 誤り:p = 0.065 > 0.05 で非有意
- 統計的有意性の判定を誤っている
選択肢B:交互作用は有意でなく、要因は独立である
- 正解:p = 0.065 > 0.05 で非有意
- 要因の効果が加法的であることを正しく示している
選択肢C:要因Aのみが有意
- 誤り:要因Bも有意(p = 0.003 < 0.05)
- 両方の主効果が有意であることを見落としている
選択肢D:すべての効果が有意
- 誤り:交互作用は非有意
- 統計的判定の基準を正しく適用していない
実際の研究での解釈
交互作用非有意時の解釈手順
- 加法モデルの採用:要因の効果が独立
- 主効果の解釈:各要因の効果を個別に検討
- 平均値の比較:多重比較による水準間差の検定
- 効果サイズの報告:実用的重要性の評価
研究デザインの考慮事項
Step 7: サンプルサイズと検出力
交互作用の検出には主効果より大きなサンプルサイズが必要:
- 現在のサンプルサイズ:N = 30
- 交互作用のp値:0.065(境界的)
- 効果サイズ:η²ₚ = 0.217(中程度〜大)
- 考察:サンプルサイズが少し大きければ有意になった可能性
結果の報告例
論文での報告例:
「二元配置分散分析の結果、要因A(F(2,24) = 8.75, p = 0.002, η²ₚ = 0.422)および要因B(F(1,24) = 12.38, p = 0.003, η²ₚ = 0.341)の主効果が有意であった。一方、A×B交互作用は有意でなかった(F(2,24) = 3.32, p = 0.065, η²ₚ = 0.217)。したがって、両要因の効果は独立(加法的)であると解釈される。」
交互作用のパターン
交互作用の種類
パターン | 特徴 | グラフの形状 | 解釈 |
---|
序数的交互作用 | 順序は保持 | 平行でない直線 | 効果の大きさが変化 |
逆序的交互作用 | 順序が逆転 | 交差する直線 | 効果の方向が変化 |
交互作用なし | 平行線 | 平行な直線 | 加法的効果 |
統計ソフトでの実行
- R:
aov(Y ~ A * B)
- SPSS:「一般線形モデル」→「一元配置」
- SAS:
PROC GLM
- Python:
statsmodels.stats.anova
実践的な考慮事項
交互作用の検討における注意点
- 検出力:交互作用の検出には大きなサンプルサイズが必要
- 効果サイズ:統計的有意性と実用的重要性の区別
- 多重比較:事後検定における多重性の調整
- グラフ化:交互作用プロットによる視覚的確認