実験計画法

分散分析、因子実験、乱塊法、直交表など統計検定準1級レベルの実験計画法を学習します。

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解説
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交互作用のグラフ解釈と単純主効果の分析

2要因実験では、要因間の交互作用によって一方の要因の効果が他方の要因の水準によって変化します。単純主効果の分析により、特定の条件下での要因効果を正確に把握できます。

交互作用の重要性

条件依存効果:要因の効果が他の要因の水準によって変化することを示します。実用的洞察:最適な条件の組み合わせを特定するために不可欠です。

Step 1: データの整理

要因A要因B行平均
B₁B₂
A₁152017.5
A₂103020.0
列平均12.525.018.75(全体平均)

Step 2: 単純主効果の定義

単純主効果とは、他の要因の特定の水準における一つの要因の効果です。

要因Aの単純主効果(B₁水準):

$$A|B_1 = \bar{X}_{A_2B_1} - \bar{X}_{A_1B_1}$$

これは、B₁水準において、AをA₁からA₂に変化させたときの効果を表します。

Step 3: 計算の実行

$$A|B_1 = 10 - 15 = -5$$

小数第1位まで:-5.0

Step 4: 他の単純主効果の計算(参考)

要因Aの単純主効果(B₂水準):

$$A|B_2 = \bar{X}_{A_2B_2} - \bar{X}_{A_1B_2} = 30 - 20 = 10$$

要因Bの単純主効果(A₁水準):

$$B|A_1 = \bar{X}_{A_1B_2} - \bar{X}_{A_1B_1} = 20 - 15 = 5$$

要因Bの単純主効果(A₂水準):

$$B|A_2 = \bar{X}_{A_2B_2} - \bar{X}_{A_2B_1} = 30 - 10 = 20$$

単純主効果の解釈

単純主効果解釈
A効果(B₁下)-5.0B₁水準では、A₂よりA₁が良い
A効果(B₂下)+10.0B₂水準では、A₁よりA₂が良い
B効果(A₁下)+5.0A₁水準では、B₁よりB₂が良い
B効果(A₂下)+20.0A₂水準では、B₁よりB₂がより良い

Step 5: 主効果と交互作用効果の分解

要因Aの主効果:

$$主効果A = \frac{A|B_1 + A|B_2}{2} = \frac{-5 + 10}{2} = 2.5$$

要因Bの主効果:

$$主効果B = \frac{B|A_1 + B|A_2}{2} = \frac{5 + 20}{2} = 12.5$$

A×B交互作用効果:

$$AB = \frac{(A|B_2) - (A|B_1)}{2} = \frac{10 - (-5)}{2} = \frac{15}{2} = 7.5$$

Step 6: 交互作用プロットの作成

交互作用を視覚化するため、プロットを描きます:

交互作用プロット

X軸:要因BB₁B₂傾き
A₁の線1520+5
A₂の線1030+20

プロットの特徴:

  • 非平行線:交互作用の存在を示す
  • 交差パターン:B₁でA₁>A₂、B₂でA₂>A₁
  • 傾きの差:20-5=15が交互作用の大きさ×2

交互作用パターンの分類

交互作用の種類

パターン特徴解釈本例
無交互作用平行線要因効果が一定該当なし
順序交互作用非平行、非交差効果の大きさが変化該当なし
逆転交互作用交差効果の向きが逆転該当
天井・床効果非線形上限・下限による制約該当なし

Step 7: 統計的検定の枠組み

単純主効果の検定では、特定の条件下での効果の有意性を評価します:

$$t = \frac{単純主効果}{SE_{単純主効果}}$$

標準誤差は元の分散分析から求められます:

$$SE_{A|B_j} = \sqrt{\frac{2 \times MSE}{n}}$$

ここで、nは各セルのサンプルサイズです。

実際の研究での応用例

交互作用の実例

分野要因A要因B交互作用の意味
教育教授法学習者のタイプ方法の効果が学習者により異なる
医学薬剤患者の年齢薬効が年齢により変化
工業温度圧力最適温度が圧力により変化
心理学刺激強度個人特性反応が個人により異なる

Step 8: 最適条件の特定

本例での最適条件:

  • 最大値:A₂B₂の組み合わせ(30)
  • 最小値:A₂B₁の組み合わせ(10)
  • 条件依存性:Bの水準によって最適なAが異なる

実用的推奨事項

  1. B₁条件下:A₁を選択(15 > 10)
  2. B₂条件下:A₂を選択(30 > 20)
  3. 全体最適:可能ならA₂B₂を選択
  4. 制約がある場合:条件に応じた選択

分散分析表での位置づけ

変動要因効果重要度実用的意味
A主効果2.5平均的なA効果は小さい
B主効果12.5Bの影響は一般に大きい
A×B交互作用7.5条件依存効果が重要

交互作用存在時の注意点

  • 主効果の解釈:交互作用がある場合、主効果の解釈は限定的
  • 単純主効果の重視:具体的条件下での効果が重要
  • グラフ化の重要性:数値だけでなく視覚的理解が必要
  • 実用的判断:統計的有意性と実用的重要性の区別

結果の報告例

論文での報告例:

「要因A×Bの交互作用が有意であった(F = 15.2, p < 0.01)。単純主効果分析の結果、要因AのB₁水準での効果は-5.0(p < 0.05)、B₂水準での効果は+10.0(p < 0.01)であり、要因Aの効果は要因Bの水準により逆転することが確認された。」

統計ソフトでの分析

  • SPSS:「単純主効果の分析」オプション
  • Remmeansパッケージのsimple関数
  • SASPROC GLMLSMEANSSLICE
  • Pythonstatsmodelsの事後分析機能
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