解答: $T_1$のみ
不偏推定量の性質
不偏推定量とは、期待値が推定対象のパラメータと等しい推定量のことです:$E[\hat{\theta}] = \theta$
各推定量の期待値計算
Step 1: $T_1 = \bar{X} + S^2$について
標本平均と不偏分散の期待値:
$E[\bar{X}] = \mu$ (標本平均は不偏推定量)
$E[S^2] = \sigma^2$ (不偏分散は不偏推定量)
したがって:
$E[T_1] = E[\bar{X}] + E[S^2] = \mu + \sigma^2 = \theta$
$T_1$は不偏推定量です。
Step 2: $T_2 = \bar{X} + \frac{1}{n}\sum_{i=1}^n (X_i - \bar{X})^2$について
$\frac{1}{n}\sum_{i=1}^n (X_i - \bar{X})^2$は標本分散で、これは:
$\frac{1}{n}\sum_{i=1}^n (X_i - \bar{X})^2 = \frac{n-1}{n}S^2$
標本分散の期待値:
$E\left[\frac{1}{n}\sum_{i=1}^n (X_i - \bar{X})^2\right] = \frac{n-1}{n}E[S^2] = \frac{n-1}{n}\sigma^2$
したがって:
$E[T_2] = \mu + \frac{n-1}{n}\sigma^2 = \mu + \sigma^2 - \frac{\sigma^2}{n} \neq \theta$
$T_2$は偏った推定量です(下方バイアス)。
Step 3: $T_3 = \bar{X} + \frac{n}{n+1}S^2$について
$E\left[\frac{n}{n+1}S^2\right] = \frac{n}{n+1}E[S^2] = \frac{n}{n+1}\sigma^2$
したがって:
$E[T_3] = \mu + \frac{n}{n+1}\sigma^2 = \mu + \sigma^2 - \frac{\sigma^2}{n+1} \neq \theta$
$T_3$も偏った推定量です(下方バイアス)。
標本分散と不偏分散の違い
重要な区別
- 標本分散:$\frac{1}{n}\sum(X_i-\bar{X})^2$ → 期待値は$\frac{n-1}{n}\sigma^2$(偏りあり)
- 不偏分散:$\frac{1}{n-1}\sum(X_i-\bar{X})^2$ → 期待値は$\sigma^2$(不偏)
分母が$(n-1)$である理由は、標本平均$\bar{X}$を用いることで自由度が1つ減るためです。
不偏性の確認手順
Step 4: 推定量の構成原理
線形結合の期待値の性質:$E[aX + bY] = aE[X] + bE[Y]$を活用して:
- 各成分の期待値を求める
- 線形結合の期待値を計算
- 目標パラメータと比較
Step 5: バイアスの定量化
| 推定量 | 期待値 | バイアス | 不偏性 |
|---|
| $T_1$ | $\mu + \sigma^2$ | $0$ | ○ |
| $T_2$ | $\mu + \frac{n-1}{n}\sigma^2$ | $-\frac{\sigma^2}{n}$ | × |
| $T_3$ | $\mu + \frac{n}{n+1}\sigma^2$ | $-\frac{\sigma^2}{n+1}$ | × |
実用的な意味
Step 6: 漸近的性質
$n \to \infty$のとき:
- $T_2$のバイアス:$-\frac{\sigma^2}{n} \to 0$(漸近不偏)
- $T_3$のバイアス:$-\frac{\sigma^2}{n+1} \to 0$(漸近不偏)
大標本では全て漸近的に不偏になりますが、有限標本では$T_1$のみが不偏です。
したがって、不偏性を満たすのは$T_1$のみです。