ワルド検定統計量の計算
単一パラメータに対する仮説検定におけるワルド統計量を計算します。
ワルド検定の理論的基礎
Step 1: ワルド統計量の定義
パラメータ$\theta$に対する仮説$H_0: \theta = \theta_0$のワルド統計量:
$W = \frac{(\hat{\theta} - \theta_0)^2}{\text{Var}(\hat{\theta})}$
ここで、$\hat{\theta}$は最尤推定量、$\text{Var}(\hat{\theta})$はその分散です。
Step 2: 本問題への適用
与えられた情報:
- 最尤推定量:$\hat{\beta_1} = 0.8$
- 標準誤差:$\text{se}(\hat{\beta_1}) = 0.2$
- 帰無仮説:$H_0: \beta_1 = 0.5$
ワルド統計量の計算
Step 3: 推定値と仮説値の差
$\hat{\beta_1} - \beta_{1,0} = 0.8 - 0.5 = 0.3$
Step 4: 分散の計算
標準誤差から分散を求める:
$\text{Var}(\hat{\beta_1}) = [\text{se}(\hat{\beta_1})]^2 = (0.2)^2 = 0.04$
Step 5: ワルド統計量の計算
$W = \frac{(\hat{\beta_1} - \beta_{1,0})^2}{\text{Var}(\hat{\beta_1})} = \frac{(0.3)^2}{0.04} = \frac{0.09}{0.04} = 2.25$
検定統計量の分布と判定
Step 6: 漸近分布
大標本において、帰無仮説の下でワルド統計量は:
$W \xrightarrow{d} \chi^2_1$
自由度1のカイ二乗分布に従います。
ワルド検定の特徴
- 計算簡便性:制約なし推定量のみで構成
- 直感的解釈:推定値と仮説値の「距離」の二乗
- 標準化:分散で正規化することで分布が決定
- 一般性:線形・非線形制約に拡張可能
臨界値との比較
Step 7: 有意水準5%での判定
$\chi^2_1$分布の95%点は約3.84なので:
- $W = 2.25 < 3.84$:帰無仮説を棄却しない
- つまり、$\beta_1 = 0.5$という仮説は5%水準で棄却されない
Step 8: t検定との関係
単一パラメータの場合、ワルド検定はt検定の二乗に等しい:
$t = \frac{\hat{\beta_1} - \beta_{1,0}}{\text{se}(\hat{\beta_1})} = \frac{0.3}{0.2} = 1.5$
$W = t^2 = (1.5)^2 = 2.25$
したがって、ワルド統計量$W = 2.25$です。