モデル選択・評価

AIC、BIC、交差検証、ROC曲線、混合行列など、統計モデルの選択と評価に関する手法

モデル選択における情報量規準の比較 レベル1

線形回帰モデルにおいて、サンプルサイズn=100のデータに対して3つのモデルを比較した。各モデルの最大対数尤度とパラメータ数は以下の通りである。どのモデルがAICで最も良いか。 モデル1: 対数尤度 = -45.2, パラメータ数 = 3 モデル2: 対数尤度 = -42.8, パラメータ数 = 5 モデル3: 対数尤度 = -44.1, パラメータ数 = 4

解説
解答と解説を表示
<p>この問題では、<strong>実際のデータに基づくモデル選択</strong>において、AICを用いた定量的な比較方法について理解を深めます。</p><h4>AICを用いたモデル比較の実践</h4><p>AICは「相対的な比較」に意味があり、複数のモデル間で最も小さな値を持つモデルが最適とされます。</p><p class='step'><strong>Step 1: 各モデルのAIC計算</strong></p><p>AICの定義式:$\text{AIC} = -2 \ln L + 2k
lt;/p><p><strong>モデル1の計算:</strong></p><div class='formula'>$\text{AIC}_1 = -2 \times (-45.2) + 2 \times 3 = 90.4 + 6 = 96.4$

モデル2の計算:

$\text{AIC}_2 = -2 \times (-42.8) + 2 \times 5 = 85.6 + 10 = 95.6$

モデル3の計算:

$\text{AIC}_3 = -2 \times (-44.1) + 2 \times 4 = 88.2 + 8 = 96.2$
AIC比較結果
モデル対数尤度パラメータ数AIC順位
モデル1-45.2396.43位
モデル2-42.8595.61位
モデル3-44.1496.22位

Step 2: 結果の詳細解釈

最良モデル:モデル2(AIC = 95.6)

モデル2が最も低いAIC値を持つため、予測性能の観点から最適なモデルです。

AIC差による実用的解釈:

  • モデル2 vs モデル3:差 = 96.2 - 95.6 = 0.6
  • モデル2 vs モデル1:差 = 96.4 - 95.6 = 0.8

Step 3: AIC差の実用的意味

AIC差の一般的な解釈基準:

  • 差 < 2:実質的に同程度の性能
  • 2 ≤ 差 < 4:やや差がある
  • 4 ≤ 差 < 7:かなり差がある
  • 差 ≥ 10:決定的な差

この場合、差が0.6〜0.8と小さいため、3つのモデルは実質的に同程度の性能と言えます。

Step 4: モデル複雑性の影響分析

複雑性 vs 適合度のトレードオフ:

  • モデル2:最も複雑(パラメータ5個)だが最高の適合度
  • モデル1:最も単純(パラメータ3個)だが適合度は最低
  • モデル3:中間的な複雑性と適合度

モデル2では、追加パラメータによる複雑性増加を上回る適合度向上が得られています。

Step 5: BICでの比較(参考)

BIC = $-2 \ln L + k \ln n$で同じデータを評価した場合:

$\text{BIC}_1 = 90.4 + 3 \times \ln(100) = 90.4 + 13.8 = 104.2$
$\text{BIC}_2 = 85.6 + 5 \times \ln(100) = 85.6 + 23.0 = 108.6$
$\text{BIC}_3 = 88.2 + 4 \times \ln(100) = 88.2 + 18.4 = 106.6$</div><p>BICではモデル1が最良となり、AICとは異なる結果になります。これは<strong>BICがより強いペナルティ</strong>を課すためです。</p><h4>実践的な意思決定指針</h4><p class='step'><strong>Step 6: 総合的な判断</strong></p><p><strong>AICを選ぶべき場面:</strong></p><ul><li><strong>予測重視</strong>:新しいデータの予測精度を最大化したい</li><li><strong>説明変数の保持</strong>:重要な変数を落としたくない</li><li><strong>探索的分析</strong>:変数選択の初期段階</li></ul><p><strong>BICを選ぶべき場面:</strong></p><ul><li><strong>解釈重視</strong>:シンプルで理解しやすいモデルが欲しい</li><li><strong>真のモデル特定</strong>:因果関係の解明が目的</li><li><strong>大サンプル</strong>:データが豊富でより確実な選択を求める</li></ul><p class='note'><strong>実践的なアドバイス:</strong><br>この例では、AIC差が小さいため、どのモデルを選んでも大きな違いはありません。このような場合は、解釈のしやすさ、計算コスト、理論的背景なども考慮して最終的な選択を行うことが重要です。また、交差検証による性能確認も併用することを推奨します。</p>
問題 1/10
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