因子分析における共通性の計算
共通性の定義と意味
共通性(Communality)は、各観測変数の分散のうち、共通因子によって説明される部分の割合を表します。これは因子分析における最も重要な概念の一つで、変数がどの程度因子構造に適合しているかを示す指標です。
共通性の計算手順
Step 1: 因子分析モデルの復習
因子分析の基本モデル:
$X_i = \lambda_{i1}F_1 + \lambda_{i2}F_2 + \cdots + \lambda_{im}F_m + \epsilon_i$
ここで:
- $\lambda_{ij}$:変数$i$の因子$j$に対する負荷量
- $F_j$:共通因子(標準化されている)
- $\epsilon_i$:独自因子(変数$i$固有の部分)
Step 2: 分散の分解
変数$X_i$の分散は以下のように分解されます:
$\text{Var}(X_i) = \underbrace{\sum_{j=1}^{m} \lambda_{ij}^2}_{\text{共通性 } h_i^2} + \underbrace{\psi_i}_{\text{独自性}}$
共通性の公式
変数$i$の共通性は、その変数の因子負荷量の2乗和として計算されます:
$h_i^2 = \sum_{j=1}^{m} \lambda_{ij}^2$
Step 3: 与えられた因子負荷行列
因子負荷行列:
$\mathbf{L} = \begin{pmatrix} 0.8 & 0.3 \\ 0.6 & 0.4 \\ 0.7 & -0.2 \end{pmatrix}$
各行は変数に対応し、各列は因子に対応します:
- 変数$X_1$:第1因子負荷量 = 0.8、第2因子負荷量 = 0.3
- 変数$X_2$:第1因子負荷量 = 0.6、第2因子負荷量 = 0.4
- 変数$X_3$:第1因子負荷量 = 0.7、第2因子負荷量 = -0.2
Step 4: 変数$X_1$の共通性計算
変数$X_1$の共通性:
$h_1^2 = \lambda_{11}^2 + \lambda_{12}^2$
$h_1^2 = (0.8)^2 + (0.3)^2$
$h_1^2 = 0.64 + 0.09 = 0.73$
Step 5: 結果の解釈
共通性の意味
| 項目 | 値 | 解釈 |
|---|
| 共通性 | $h_1^2 = 0.73$ | 変数$X_1$の分散の73%が共通因子で説明 |
| 独自性 | $\psi_1 = 0.27$ | 変数$X_1$の分散の27%が独自因子(誤差含む) |
| 第1因子寄与 | $0.64/0.73 = 87.7\%$ | 共通性の大部分を第1因子が説明 |
他変数との比較
参考として、他の変数の共通性も計算してみます:
- 変数$X_2$:$h_2^2 = (0.6)^2 + (0.4)^2 = 0.36 + 0.16 = 0.52$
- 変数$X_3$:$h_3^2 = (0.7)^2 + (-0.2)^2 = 0.49 + 0.04 = 0.53$
変数$X_1$が最も高い共通性を持ち、因子構造に良く適合していることがわかります。
考慮事項
- 低い共通性(< 0.2):因子分析に不適合な変数
- 中程度の共通性(0.2-0.7):適度に因子で説明可能
- 高い共通性(> 0.7):因子構造に良く適合
- 過度に高い共通性(> 0.9):多重共線性の可能性