自己回帰モデル(AR)の定常性理論
ARモデル
自己回帰(AR)モデルは時系列解析の基本的なモデルの一つで、現在の値が過去の値の線形結合で表現されます。金融、経済、工学など幅広い分野で応用されています。
AR(2)モデルの数学的構造
Step 1: AR(2)モデルの定義
AR(2)モデルは以下のように定義されます:
$X_t = \phi_1 X_{t-1} + \phi_2 X_{t-2} + \epsilon_t$
ここで:
- $\phi_1, \phi_2$:自己回帰係数
- $\epsilon_t \sim \text{WN}(0, \sigma^2)$:ホワイトノイズ
- $E[\epsilon_t \epsilon_s] = 0$ for $t \neq s$
特性方程式と定常性条件
Step 2: 特性方程式の導出
AR(2)モデルをラグ演算子$L$を用いて表現すると:
$(1 - \phi_1 L - \phi_2 L^2)X_t = \epsilon_t$
特性方程式は:
$1 - \phi_1 z - \phi_2 z^2 = 0$
または
$\phi_2 z^2 + \phi_1 z - 1 = 0$
Step 3: 定常性の必要十分条件
定常性条件
AR(2)モデルが定常となる必要十分条件は、特性方程式の根がすべて単位円の外側にあることです。
数学的には、特性方程式の根を$z_1, z_2$とすると:
$|z_1| > 1 \quad \text{かつ} \quad |z_2| > 1$
具体的な定常性条件
Step 4: パラメータ空間での条件
特性方程式の根が単位円外にある条件は、以下の3つの不等式で表現されます:
$\begin{cases}\phi_1 + \phi_2 < 1 \\\phi_2 - \phi_1 < 1 \\|\phi_2| < 1\end{cases}$
幾何学的解釈:
これらの条件は$\phi_1$-$\phi_2$平面上で三角形の領域を形成します:
- 頂点:$(1, 0)$、$(-1, 0)$、$(0, 1)$
- この三角形内部のパラメータで定常性が保証される
| 条件 | 意味 | 境界での挙動 |
|---|
| $\phi_1 + \phi_2 = 1$ | 単位根の存在 | ランダムウォーク |
| $\phi_2 - \phi_1 = 1$ | 負の単位根 | 交互変動 |
| $|\phi_2| = 1$ | 複素単位根 | 周期的変動 |
特性根の性質と時系列の挙動
Step 5: 根の種類による分類
1. 実根の場合
判別式$D = \phi_1^2 + 4\phi_2 \geq 0$のとき:
$z_{1,2} = \frac{\phi_1 \pm \sqrt{\phi_1^2 + 4\phi_2}}{2\phi_2}$
- 両根が正:単調な収束/発散
- 一方が負:振動を伴う収束/発散
2. 複素根の場合
判別式$D = \phi_1^2 + 4\phi_2 < 0$のとき:
$z_{1,2} = \frac{\phi_1 \pm i\sqrt{4\phi_2 - \phi_1^2}}{2\phi_2}$
- 周期的な振動パターン
- 周期:$T = \frac{2\pi}{\arccos(\phi_1/(2\sqrt{-\phi_2}))}$
一般化:AR(p)モデルの定常性
Step 6: 高次ARモデルへの拡張
一般的なAR(p)モデル:
$X_t = \phi_1 X_{t-1} + \phi_2 X_{t-2} + \cdots + \phi_p X_{t-p} + \epsilon_t$
特性方程式:
$1 - \phi_1 z - \phi_2 z^2 - \cdots - \phi_p z^p = 0$
一般的な定常性条件
AR(p)モデルが定常となる必要十分条件は、特性方程式のすべての根が単位円の外側にあることです。これは以下と等価です:
- 特性多項式$\phi(z) = 1 - \phi_1 z - \cdots - \phi_p z^p$について
- $|z| \leq 1$の範囲で$\phi(z) \neq 0$