<p>この問題では、データの<strong>散らばり具合</strong>を示す最も基本的な指標である<strong>分散</strong>と<strong>標準偏差</strong>の計算方法と、それらが持つ意味について理解を深めます。</p><h4>分散 (Variance) とは?</h4>
<p>分散は、データが平均値からどれだけ散らばっているかを示す指標の一つです。具体的には、各データ点と平均値との差(<strong>偏差</strong>)を二乗し、それらを平均した値です。</p>
<ul>
<li><strong>なぜ二乗するのか?</strong>: 偏差($x_i - \bar{x}$)をそのまま合計すると、常に0になってしまい散らばり具合を測れません。二乗することで、平均からの距離の大きさを正の値として評価できます。</li>
</ul>
<p>母集団全体のデータに対する分散(母分散 $\sigma^2$)は以下のように計算されます(記述統計の文脈では、標本データに対してもこの式を用いることがあります)。</p>
<div class='formula'>
$\sigma^2 = \frac{\sum_{i=1}^{n} (x_i - \bar{x})^2}{n}$
</div>
<p>ここで、$x_i$ は個々のデータ、$\bar{x}$ はデータの平均値、$n$ はデータの総数を表します。</p><h4>標準偏差 (Standard Deviation) とは?</h4>
<p>標準偏差は、分散の正の平方根です。分散と同様にデータの散らばり具合を示しますが、より直感的に理解しやすい指標です。</p>
<ul>
<li><strong>なぜ平方根を取るのか?</strong>: 分散の単位は、元のデータの単位の二乗(例:データがcmなら分散はcm²)となります。標準偏差は平方根を取ることで、元のデータと同じ単位に戻り、解釈が容易になります。</li>
</ul>
<div class='formula'>
$\sigma = \sqrt{\sigma^2} = \sqrt{\frac{\sum_{i=1}^{n} (x_i - \bar{x})^2}{n}}$
</div><p class='step'>1. 平均値の計算</p>
<p>まず、データの平均値 $\bar{x}$ を計算します。</p>
<p>与えられたデータは $2, 4, 6, 8, 10$ です。</p>
<div class='formula'>
\begin{align}
\bar{x} &= \frac{2 + 4 + 6 + 8 + 10}{5} \\
&= \frac{30}{5} \\
&= 6
\end{align}
</div><p class='step'>2. 偏差と偏差の二乗の計算</p>
<p>次に、各データ点 $x_i$ と平均値 $\bar{x}$ との差(偏差)を計算し、それぞれを二乗します。</p>
<div class='formula'>
\begin{align}
(2 - 6)^2 &= (-4)^2 = 16 \\
(4 - 6)^2 &= (-2)^2 = 4 \\
(6 - 6)^2 &= 0^2 = 0 \\
(8 - 6)^2 &= 2^2 = 4 \\
(10 - 6)^2 &= 4^2 = 16
\end{align}
</div><p class='step'>3. 分散の計算</p>
<p>偏差の二乗の合計をデータの個数 $n$ で割って、分散 $\sigma^2$ を計算します。</p>
<p>偏差の二乗の合計は $16 + 4 + 0 + 4 + 16 = 40$ です。</p>
<p>データの個数は $5$ 個です。</p>
<div class='formula'>
\begin{align}
\sigma^2 &= \frac{40}{5} \\
&= 8
\end{align}
</div><p class='step'>4. 標準偏差の計算</p>
<p>分散 $\sigma^2$ の正の平方根を取って、標準偏差 $\sigma$ を計算します。</p>
<div class='formula'>
\begin{align}
\sigma &= \sqrt{8} \\
&\approx 2.8284...
\end{align}
</div>
<p>問題では小数第2位まで求めよとあるので、標準偏差は約 $2.83$ となります。</p><div class='key-point'>
<div class='key-point-title'>分散と標準偏差のポイント</div>
<ul>
<li><strong>解釈のしやすさ</strong>: 標準偏差は元のデータと同じ単位を持つため、データの散らばりを直感的に理解しやすいです。例えば、「平均点から標準偏差1つ分だけ点数が高い」といった表現が可能です。</li>
<li><strong>正規分布との関連 (68-95-99.7ルール)</strong>: データが正規分布に近い場合、
<ul>
<li>平均値 ±1 標準偏差の範囲に約68%のデータ</li>
<li>平均値 ±2 標準偏差の範囲に約95%のデータ</li>
<li>平均値 ±3 標準偏差の範囲に約99.7%のデータ</li>
</ul>
が含まれるという経験則があり、データのばらつきを評価する目安になります。</li>
<li><strong>不偏分散</strong>: 標本から母集団の分散を推定する場合、分母を $n$ ではなく $n-1$ で割った<strong>不偏分散</strong> ($s^2$) を用いることが一般的です。これは、標本分散が母分散を過小評価する傾向があるため、それを補正するためです。
<div class='formula'>$s^2 = \frac{\sum_{i=1}^{n} (x_i - \bar{x})^2}{n-1}
lt;/div>
統計検定2級ではこの概念も重要になりますが、この問題は記述統計の範囲でデータの特性を捉えることが目的なので、分母 $n$ の分散を計算しています。
</li>
</ul>
</div><p class='note'>
<strong>補足:</strong><br>
分散や標準偏差が大きいほど、データは平均値から広範囲に散らばっていることを意味し、小さいほどデータは平均値の周りに集中していることを示します。これらの指標は、品質管理、金融リスク分析、科学的研究など、様々な分野でデータのばらつきを評価するために不可欠です。
</p><p>この問題の答えとして、標準偏差は $2.83$ (指定により小数第2位まで)となります。</p>