<p>二項分布の正規近似を用いた確率計算の問題です。</p><p class='step'>1. 二項分布の正規近似</p>
<p>二項分布 $B(n, p)$ は、$n$ が大きく、$p$ が0や1に極端に近くない場合、正規分布 $N(np, np(1-p))$ で近似できます。一般的には、$np \geq 5$ かつ $n(1-p) \geq 5$ が満たされれば、この近似は良好とされています。</p><p>連続分布である正規分布で離散分布である二項分布を近似する際には、連続性補正を適用することで精度が向上します。</p><p class='step'>2. 問題の設定</p>
<p>この問題では:</p>
<ul>
<li>二項分布のパラメータ:$n = 100$, $p = 0.4
lt;/li>
<li>求めるのは $P(X \leq 35)$:成功回数が35以下となる確率</li>
</ul><p>まず、近似の条件を確認します:</p>
<ul>
<li>$np = 100 \times 0.4 = 40 \geq 5
lt;/li>
<li>$n(1-p) = 100 \times 0.6 = 60 \geq 5
lt;/li>
</ul><p>条件は満たされているので、正規近似を適用できます。</p><p class='step'>3. 正規近似の適用</p>
<p>二項分布 $B(n, p)$ の平均と分散は:</p>
<ul>
<li>平均:$\mu = np = 100 \times 0.4 = 40
lt;/li>
<li>分散:$\sigma^2 = np(1-p) = 100 \times 0.4 \times 0.6 = 24
lt;/li>
<li>標準偏差:$\sigma = \sqrt{24} \approx 4.9
lt;/li>
</ul><p>連続性補正を適用すると、$P(X \leq 35)$ は $P(X \leq 35.5)$ で近似されます。これは、離散値35の範囲を連続的に表現するために、35と36の中間点である35.5を用いるためです。</p><p>標準化すると:</p>
<p class='formula'>
\begin{align}
P(X \leq 35) &\approx P(X \leq 35.5) \\
&= P\left(\frac{X - \mu}{\sigma} \leq \frac{35.5 - 40}{4.9}\right) \\
&= P\left(Z \leq \frac{35.5 - 40}{4.9}\right) \\
&= P(Z \leq -0.92) \\
&= \Phi(-0.92)
\end{align}
</p><p>ここで、$Z$ は標準正規分布に従う確率変数、$\Phi(z)$ は標準正規分布の累積分布関数です。</p><p>標準正規分布の対称性から:</p>
<p class='formula'>
\begin{align}
P(Z \leq -0.92) &= 1 - P(Z \leq 0.92) \\
&= 1 - \Phi(0.92) \\
&= 1 - 0.8212 \\
&= 0.1788 \approx 0.179
\end{align}
</p></p><p class='note'>二項分布の正規近似は、中心極限定理の応用例の一つです。二項分布は独立なベルヌーイ試行の和として表現できるため、試行回数 $n$ が大きくなると、中心極限定理により正規分布に近づきます。</p><p>連続性補正は、離散分布を連続分布で近似する際の誤差を減らすための調整です。一般に、$P(X \leq a)$ は $P(X \leq a + 0.5)$ で、$P(X \geq a)$ は $P(X \geq a - 0.5)$ で近似されます。</p><p>また、二項分布のパラメータ $n$ と $p$ によっては、ポアソン近似($n$ が大きく、$p$ が小さい場合)や正規近似以外の方法が適切な場合もあります。</p>