解答と解説を表示
<p>カイ二乗分布の性質に関する問題です。</p><p class='step'>1. カイ二乗分布の定義</p>
<p>自由度 $k$ のカイ二乗分布は、$k$ 個の独立な標準正規分布に従う確率変数の二乗和の分布です。</p><p>$Z_1, Z_2, \ldots, Z_k$ が互いに独立で標準正規分布 $N(0, 1)$ に従うとき、確率変数 $X = Z_1^2 + Z_2^2 + \ldots + Z_k^2$ は自由度 $k$ のカイ二乗分布 $\chi^2(k)$ に従います。</p><p>カイ二乗分布の確率密度関数は以下のように定義されます：</p>
<p class='formula'>$f(x) = \frac{1}{2^{k/2}\Gamma(k/2)} x^{k/2-1} e^{-x/2}$（$x > 0$）</p><p>ここで、$\Gamma(\cdot)$ はガンマ関数です。</p><p class='step'>2. カイ二乗分布の期待値と分散</p>
<p>自由度 $k$ のカイ二乗分布の期待値と分散は以下のようになります：</p>
<p class='formula'>
\begin{align}
E(X) &= k \\
Var(X) &= 2k
\end{align}
</p><p>これらの値は、標準正規分布の性質から導出できます。標準正規分布 $N(0, 1)$ に従う確率変数 $Z$ について、$E(Z) = 0$、$Var(Z) = 1$、$E(Z^2) = Var(Z) + (E(Z))^2 = 1 + 0 = 1$、$Var(Z^2) = E(Z^4) - (E(Z^2))^2 = 3 - 1 = 2$ となります。</p><p>独立な確率変数の和の期待値は期待値の和、分散は分散の和になるため：</p>
<p class='formula'>
\begin{align}
E(X) &= E(Z_1^2 + Z_2^2 + \ldots + Z_k^2) \\
&= E(Z_1^2) + E(Z_2^2) + \ldots + E(Z_k^2) \\
&= 1 + 1 + \ldots + 1 \text{ ($k$ 項)} \\
&= k
\end{align}
</p><p class='formula'>
\begin{align}
Var(X) &= Var(Z_1^2 + Z_2^2 + \ldots + Z_k^2) \\
&= Var(Z_1^2) + Var(Z_2^2) + \ldots + Var(Z_k^2) \\
&= 2 + 2 + \ldots + 2 \text{ ($k$ 項)} \\
&= 2k
\end{align}
</p><p class='step'>3. 選択肢の検討</p>
<p>各選択肢を検討します：</p><p>選択肢1：「期待値はk、分散は2kである」</p>
<p>正しいです。上記の計算で示したように、自由度 $k$ のカイ二乗分布の期待値は $k$、分散は $2k$ です。</p><p>選択肢2：「期待値はk/2、分散はkである」</p>
<p>誤りです。期待値は $k/2$ ではなく $k$ です。</p><p>選択肢3：「期待値はk、分散はkである」</p>
<p>誤りです。期待値は $k$ で正しいですが、分散は $k$ ではなく $2k$ です。</p><p>選択肢4：「期待値は0、分散はkである」</p>
<p>誤りです。カイ二乗分布は非負の値のみをとる分布であり、期待値は $0$ ではなく $k$ です。また、分散も $k$ ではなく $2k$ です。</p><p>選択肢5：「期待値はk/2、分散は2kである」</p>
<p>誤りです。期待値は $k/2$ ではなく $k$ です。分散は $2k$ で正しいです。</p><p class='note'>カイ二乗分布の特徴と応用：</p>
<ul>
<li>カイ二乗分布は、正規母集団からの標本分散の分布や、分割表の独立性検定など、様々な統計的検定で重要な役割を果たします。</li>
<li>自由度 $k$ が大きくなるにつれて、カイ二乗分布は正規分布に近づきます。具体的には、$(X - k) / \sqrt{2k}$ は標準正規分布に漸近的に従います。</li>
<li>独立なカイ二乗分布に従う確率変数の和も、カイ二乗分布に従います。自由度 $k_1$ と $k_2$ のカイ二乗分布に従う独立な確率変数の和は、自由度 $k_1 + k_2$ のカイ二乗分布に従います。</li>
<li>ガンマ分布の特殊ケースとして、カイ二乗分布は形状パラメータ $k/2$、尺度パラメータ $2$ のガンマ分布と等価です。</li>
</ul><p>この問題では、自由度 $k$ のカイ二乗分布の期待値と分散について問われました。正しい答えは「期待値はk、分散は2kである」です。</p>