確率編

確率の基礎から応用まで確認しましょう

ベイズの定理 レベル1

ある病気の検査を考える。この病気の有病率は1%である。検査の感度(病気の人が陽性と判定される確率)は95%、特異度(健康な人が陰性と判定される確率)は90%である。検査で陽性と判定された人が実際に病気である確率を求めよ。小数第3位まで求めよ。

解説
解答と解説を表示
<p>ベイズの定理を用いて解く問題です。</p><p class='step'>1. 事象の定義</p><p>以下の事象を定義します:</p><ul><li>事象 $D$:実際に病気である</li><li>事象 $H$:健康である(病気でない)</li><li>事象 $T^+$:検査で陽性と判定される</li><li>事象 $T^-$:検査で陰性と判定される</li></ul><p>問題で与えられた情報:</p><ul><li>有病率:$P(D) = 0.01$(したがって $P(H) = 1 - P(D) = 0.99$)</li><li>感度:$P(T^+ | D) = 0.95$(病気の人が陽性と判定される確率)</li><li>特異度:$P(T^- | H) = 0.90$(健康な人が陰性と判定される確率)</li></ul><p>求めるのは、検査で陽性と判定された人が実際に病気である確率 $P(D | T^+)$ です。</p><p class='step'>2. ベイズの定理</p><p>ベイズの定理は以下のように表されます:</p><p class='formula'>$P(A|B) = \frac{P(B|A) \times P(A)}{P(B)}
lt;/p><p>この問題に適用すると:</p><p class='formula'>$P(D|T^+) = \frac{P(T^+|D) \times P(D)}{P(T^+)}
lt;/p><p>分母の $P(T^+)$ は全確率の法則を用いて計算できます:</p><p class='formula'>$P(T^+) = P(T^+|D) \times P(D) + P(T^+|H) \times P(H)
lt;/p><p>ここで、$P(T^+|H)$ は健康な人が陽性と判定される確率で、特異度の補数です:</p><p class='formula'>$P(T^+|H) = 1 - P(T^-|H) = 1 - 0.90 = 0.10
lt;/p><p class='step'>3. 確率の計算</p><p>全確率の法則を用いて $P(T^+)$ を計算します:</p><p class='formula'>$P(T^+) = 0.95 \times 0.01 + 0.10 \times 0.99 = 0.0095 + 0.099 = 0.1085
lt;/p><p>次に、ベイズの定理を用いて $P(D|T^+)$ を計算します:</p><p class='formula'>$P(D|T^+) = \frac{0.95 \times 0.01}{0.1085} = \frac{0.0095}{0.1085} \approx 0.0876 \approx 0.088
lt;/p><p class='note'>この問題は、医療検査の文脈でよく現れるベイズの誤謬または基準率の誤謬を示しています。検査の感度(95%)が高くても、病気の有病率(1%)が低い場合、陽性判定を受けた人が実際に病気である確率は意外に低くなります。</p><p>この結果は、検査で陽性と判定された人のうち、実際に病気なのは約8.8%に過ぎないことを意味します。残りの約91.2%は偽陽性(実際は健康だが検査では陽性と判定された)です。</p><p>医療検査の評価では、以下の指標がよく用いられます:</p><ul><li>感度(Sensitivity)または真陽性率:病気の人が陽性と判定される確率</li><li>特異度(Specificity)または真陰性率:健康な人が陰性と判定される確率</li><li>陽性的中率(Positive Predictive Value, PPV):陽性と判定された人が実際に病気である確率(この問題で求めたもの)</li><li>陰性的中率(Negative Predictive Value, NPV):陰性と判定された人が実際に健康である確率</li></ul><p>したがって、検査で陽性と判定された人が実際に病気である確率は約0.088(小数第3位まで)です。</p>
問題 1/10
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