モーメント母関数から確率分布を特定する問題です。
1. モーメント母関数の定義と性質
確率変数 $X$ のモーメント母関数 $M_X(t)$ は以下のように定義されます:
$M_X(t) = E[e^{tX}]$
モーメント母関数は確率分布を一意に特定します。つまり、2つの確率変数のモーメント母関数が同じであれば、それらの確率分布も同じです。
また、モーメント母関数を $t$ で $n$ 回微分して $t = 0$ で評価すると、$X$ の $n$ 次モーメント(期待値)が得られます:
$E[X^n] = \left. \frac{d^n}{dt^n} M_X(t) \right|_{t=0}$
特に、以下の関係が成り立ちます:
- $E[X] = M_X'(0)$(平均)
- $E[X^2] = M_X''(0)$(2次モーメント)
- $V(X) = E[X^2] - (E[X])^2 = M_X''(0) - (M_X'(0))^2$(分散)
2. 与えられたモーメント母関数の分析
問題で与えられたモーメント母関数は $M_X(t) = e^{\frac{t^2}{2}}$ です。
平均を求めるために、$M_X(t)$ を $t$ で微分します:
\begin{align}M_X'(t) &= e^{\frac{t^2}{2}} \cdot \frac{d}{dt}\left(\frac{t^2}{2}\right) \\&= e^{\frac{t^2}{2}} \cdot t\end{align}
$t = 0$ で評価して平均を求めます:
$E[X] = M_X'(0) = e^{0^2/2} \cdot 0 = 1 \cdot 0 = 0$
2次モーメントを求めるために、$M_X'(t)$ をさらに微分します:
\begin{align}M_X''(t) &= \frac{d}{dt}\left(e^{\frac{t^2}{2}} \cdot t\right) \\
&= \frac{d}{dt}\left(e^{\frac{t^2}{2}}\right) \cdot t + e^{\frac{t^2}{2}} \cdot \frac{d}{dt}(t) \\
&= e^{\frac{t^2}{2}} \cdot t \cdot t + e^{\frac{t^2}{2}} \cdot 1 \\
&= e^{\frac{t^2}{2}} \cdot (t^2 + 1)
\end{align}
$t = 0$ で評価して2次モーメントを求めます:
$E[X^2] = M_X''(0) = e^{0^2/2} \cdot (0^2 + 1) = 1 \cdot 1 = 1$
分散を計算します:
$V(X) = E[X^2] - (E[X])^2 = 1 - 0^2 = 1$
3. 確率分布の特定
平均が0、分散が1の確率変数 $X$ のモーメント母関数を考えます。
標準正規分布 $N(0, 1)$ のモーメント母関数は以下のように知られています:
$M_X(t) = e^{t^2/2}$
これは問題で与えられたモーメント母関数と一致します。したがって、確率変数 $X$ は標準正規分布 $N(0, 1)$ に従います。
モーメント母関数は、確率分布を特定するためのツールです。特に、正規分布、ポアソン分布、二項分布などの一般的な確率分布のモーメント母関数は、閉じた形で表現できることが知られています。
また、独立な確率変数の和のモーメント母関数は、各確率変数のモーメント母関数の積になります:
$M_{X+Y}(t) = M_X(t) \cdot M_Y(t)$($X$ と $Y$ が独立の場合)
この性質は、中心極限定理の証明や、複雑な確率分布の解析に役立ちます。
したがって、確率変数 $X$ の分布として最も適切なものは平均0、分散1の正規分布です。