解答と解説を表示
<p>仮説検定の基本概念について考えましょう。</p><p class='step'>1. 帰無仮説と対立仮説</p>
<p>仮説検定では、2つの対立する仮説を設定します:</p>
<ul>
<li><strong>帰無仮説($H_0$)</strong>:通常、「差がない」「効果がない」「関連がない」などの仮説です。統計的検定では、この仮説を棄却するための証拠を集めようとします。</li>
<li><strong>対立仮説($H_1$ または $H_a$)</strong>:帰無仮説と対立する仮説で、通常は研究者が証明したいと考えている仮説です。</li>
</ul><p class='step'>2. p値の解釈</p>
<p>p値は、帰無仮説が真であると仮定したとき、観測されたデータまたはそれよりも極端なデータが得られる確率です。p値が小さいほど、帰無仮説と観測データの間の不一致が大きいことを示し、帰無仮説を棄却する根拠が強くなります。</p><p class='step'>3. 検定の誤り</p>
<p>仮説検定では2種類の誤りが発生する可能性があります:</p>
<ul>
<li><strong>第1種の誤り(偽陽性)</strong>:帰無仮説が真であるのに棄却してしまう誤りです。この誤りの確率は有意水準 $\alpha$ で制御されます。</li>
<li><strong>第2種の誤り(偽陰性)</strong>:帰無仮説が偽であるのに棄却できない誤りです。この誤りの確率は $\beta$ で表され、検定力は $1-\beta$ で定義されます。</li>
</ul><p class='step'>4. 有意水準と検定力の関係</p>
<p>有意水準 $\alpha$ を上げると(例えば0.05から0.10に)、帰無仮説を棄却しやすくなります。これにより:</p>
<ul>
<li>第1種の誤りの確率が増加します(より多くの偽陽性)</li>
<li>第2種の誤りの確率は減少します(より少ない偽陰性)</li>
<li>検定力 $1-\beta$ が増加します</li>
</ul><p class='step'>5. 検定統計量の分布</p>
<p>検定統計量は、検定の種類や前提条件によって様々な分布に従います:</p>
<ul>
<li>z検定:標準正規分布</li>
<li>t検定:t分布</li>
<li>F検定:F分布</li>
<li>カイ二乗検定:カイ二乗分布</li>
</ul>
<p>検定統計量が常に正規分布に従うわけではありません。</p><p class='note'>選択肢の検討:</p>
<ol>
<li>「帰無仮説は、研究者が証明したい仮説である」→ 誤り。研究者が証明したい仮説は通常、対立仮説です。</li>
<li>「p値が小さいほど、帰無仮説を棄却する根拠が弱くなる」→ 誤り。p値が小さいほど、帰無仮説を棄却する根拠が強くなります。</li>
<li>「第1種の誤りは、帰無仮説が真であるのに棄却してしまう誤りである」→ 正しい。</li>
<li>「有意水準を上げると、第2種の誤りの確率は減少する」→ 正しいですが、同時に第1種の誤りの確率も増加します。</li>
<li>「検定統計量は常に正規分布に従う」→ 誤り。検定統計量は様々な分布に従います。</li>
</ol><p>したがって、正しい選択肢は「第1種の誤りは、帰無仮説が真であるのに棄却してしまう誤りである」です。</p>