<p>2つの母平均の差の検定(対応なし)に関する問題です。</p><p class='step'>1. 仮説の設定</p>
<p>この問題では、2つの教授法の効果(テストの平均点)に差があるかどうかを検定します。</p><p>帰無仮説 $H_0$ と対立仮説 $H_1$ は以下のように設定されます:</p>
<p class='formula'>
\begin{align}
H_0: \mu_1 - \mu_2 &= 0 \\
H_1: \mu_1 - \mu_2 &\neq 0
\end{align}
</p><p>ここで、$\mu_1$ はグループAの母平均、$\mu_2$ はグループBの母平均です。</p><p>これは両側検定です。</p><p class='step'>2. 検定統計量の選択</p>
<p>2つの独立したグループの母平均の差の検定には、t検定を用います。2つのグループのサイズが等しく($n_1 = n_2 = 30$)、母分散が等しいと仮定できる場合、プールされた分散を用いたt検定を行います。</p><p>検定統計量 $t$ は以下のように計算されます:</p>
<p class='formula'>$t = \frac{\bar{x}_1 - \bar{x}_2}{s_p \sqrt{\frac{1}{n_1} + \frac{1}{n_2}}}
lt;/p><p>ここで、$\bar{x}_1$ と $\bar{x}_2$ はそれぞれのグループの標本平均、$s_p$ はプールされた標準偏差、$n_1$ と $n_2$ はそれぞれのグループの標本サイズです。</p><p>プールされた分散 $s_p^2$ は以下のように計算されます:</p>
<p class='formula'>$s_p^2 = \frac{(n_1 - 1)s_1^2 + (n_2 - 1)s_2^2}{n_1 + n_2 - 2}
lt;/p><p>ここで、$s_1^2$ と $s_2^2$ はそれぞれのグループの標本分散です。</p><p class='step'>3. 検定統計量の計算</p>
<p>まず、プールされた分散を計算します:</p>
<p class='formula'>
\begin{align}
s_p^2 &= \frac{(n_1 - 1)s_1^2 + (n_2 - 1)s_2^2}{n_1 + n_2 - 2} \\
&= \frac{(30 - 1) \times 8^2 + (30 - 1) \times 10^2}{30 + 30 - 2} \\
&= \frac{29 \times 64 + 29 \times 100}{58} \\
&= \frac{1856 + 2900}{58} \\
&= \frac{4756}{58} \\
&= 82
\end{align}
</p><p>プールされた標準偏差は $s_p = \sqrt{82} = 9.06$ です。</p><p>次に、検定統計量を計算します:</p>
<p class='formula'>
\begin{align}
t &= \frac{\bar{x}_1 - \bar{x}_2}{s_p \sqrt{\frac{1}{n_1} + \frac{1}{n_2}}} \\
&= \frac{75 - 70}{9.06 \sqrt{\frac{1}{30} + \frac{1}{30}}} \\
&= \frac{5}{9.06 \sqrt{0.04 + 0.0278}} \\
&= \frac{5}{9.06 \sqrt{0.0678}} \\
&= \frac{5}{9.06 \times 0.2604} \\
&= \frac{5}{2.34} \\
&= 2.14
\end{align}
</p><p class='step'>4. 臨界値の決定</p>
<p>有意水準 $\alpha = 0.05$ の両側検定では、自由度 $n_1 + n_2 - 2 = 58$ のt分布の上側 $\alpha/2 = 0.025$ 点と下側 $\alpha/2 = 0.025$ 点が臨界値となります。</p><p>t分布表または計算ツールを用いて、$t_{58, 0.025} = 2.00$ を得ます。</p><p>したがって、棄却域は $t < -2.00$ または $t > 2.00$ です。</p><p class='step'>5. 判定</p>
<p>計算された検定統計量 $t = 2.14$ は、臨界値 $t_{58, 0.025} = 2.00$ よりも大きいため、棄却域に入ります。</p><p>したがって、有意水準5%で帰無仮説 $H_0: \mu_1 - \mu_2 = 0$ を棄却します。</p><p class='step'>6. 結論</p>
<p>有意水準5%で、2つの教授法の効果(テストの平均点)には有意な差があると結論づけられます。</p><p>具体的には、グループAの平均点(75点)はグループBの平均点(70点)よりも高く、この差は統計的に有意であると判断されました。</p><p class='note'>2つの母平均の差の検定に関する注意点:</p>
<ul>
<li>2つのグループの母分散が等しいという仮定が満たされない場合は、ウェルチのt検定(分散が等しくないt検定)を用いるべきです。</li>
<li>標本サイズが小さい場合は、正規性の仮定が重要になります。標本サイズが大きい場合は、中心極限定理により、正規性の仮定からの逸脱の影響は小さくなります。</li>
<li>対応のあるデータ(例:同じ被験者の前後の測定値)の場合は、対応のあるt検定を用いるべきです。</li>
<li>統計的有意性は、実質的な重要性を必ずしも意味しないことに注意が必要です。統計的に有意な差が見られても、その差が実用上重要でない場合もあります。</li>
<li>効果量(effect size)を計算することで、差の大きさを標準化して評価することができます。</li>
</ul><p>この問題では、2つの教授法の効果を比較するために、2つのグループのテスト結果を分析しました。計算の結果、検定統計量 $t = 2.14$ となり、有意水準5%で帰無仮説を棄却することになります。</p><p>したがって、検定統計量の値は2.14であり、結論は「帰無仮説を棄却する」です。</p>