検定編

統計的仮説検定の理論と実践を学ぼう

2つの母平均の差の検定(対応あり) レベル1

15人の患者に新薬を投与し、投与前後の血圧を測定した。投与前後の血圧の差(後 - 前)の平均は-8mmHg、標準偏差は12mmHgであった。この新薬に血圧低下の効果があるかどうかを有意水準5%で検定せよ。検定統計量を示せ。

解説
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<p>2つの母平均の差の検定(対応あり)に関する問題です。</p><p class='step'>1. 仮説の設定</p> <p>この問題では、新薬の投与前後の血圧の差を分析し、血圧低下の効果があるかどうかを検定します。</p><p>帰無仮説 $H_0$ と対立仮説 $H_1$ は以下のように設定されます:</p> <p class='formula'> \begin{align} H_0: \mu_d &\geq 0 \\ H_1: \mu_d &< 0 \end{align} </p><p>ここで、$\mu_d$ は血圧の差(後 - 前)の母平均です。帰無仮説は「新薬に血圧低下の効果がない(または血圧が上昇する)」、対立仮説は「新薬に血圧低下の効果がある」ことを表しています。</p><p>これは左片側検定です。</p><p class='step'>2. 検定統計量の選択</p> <p>対応のあるデータの場合、差の値に対して1標本のt検定を行います。</p><p>検定統計量 $t$ は以下のように計算されます:</p> <p class='formula'>$t = \frac{\bar{d} - \mu_0}{s_d / \sqrt{n}}
lt;/p><p>ここで、$\bar{d}$ は差の標本平均、$\mu_0$ は帰無仮説で仮定される差の母平均(この場合は0)、$s_d$ は差の標本標準偏差、$n$ は標本サイズです。</p><p class='step'>3. 検定統計量の計算</p> <p>与えられた情報を代入して、検定統計量を計算します:</p> <p class='formula'> \begin{align} t &= \frac{\bar{d} - \mu_0}{s_d / \sqrt{n}} \\ &= \frac{-8 - 0}{12 / \sqrt{15}} \\ &= \frac{-8}{12 / 3.87} \\ &= \frac{-8}{3.1} \\ &= -2.58 \end{align} </p><p class='step'>4. 臨界値の決定</p> <p>有意水準 $\alpha = 0.05$ の左片側検定では、自由度 $n - 1 = 14$ のt分布の下側 $\alpha = 0.05$ 点が臨界値となります。</p><p>t分布表または計算ツールを用いて、$t_{14, 0.05} = -1.761$ を得ます。</p><p>したがって、棄却域は $t < -1.761$ です。</p><p class='step'>5. 判定</p> <p>計算された検定統計量 $t = -2.58$ は、臨界値 $t_{14, 0.05} = -1.761$ よりも小さいため、棄却域に入ります。</p><p>したがって、有意水準5%で帰無仮説 $H_0: \mu_d \geq 0$ を棄却します。</p><p class='step'>6. 結論</p> <p>有意水準5%で、この新薬には血圧低下の効果があると結論づけられます。</p><p>具体的には、投与前後の血圧の差の平均が-8mmHgであり、これは統計的に有意に0よりも小さいと判断されました。</p><p class='note'>対応のある検定と対応のない検定の違い:</p> <ul> <li>対応のある検定は、同じ被験者または対象の前後の測定値など、自然なペアが存在するデータに適用されます。</li> <li>対応のない検定は、異なる被験者または対象のグループ間の比較に適用されます。</li> <li>対応のある検定は、個体間の変動を除去することで、より検出力の高い検定を可能にします。</li> <li>対応のあるデータを対応のない検定で分析すると、検出力が低下し、第2種の誤りの確率が増加する可能性があります。</li> <li>対応のある検定では、差の値の正規性が重要な仮定となります。</li> </ul><p>この問題では、15人の患者の新薬投与前後の血圧の差を分析しました。計算の結果、検定統計量 $t = -2.58$ となり、有意水準5%で帰無仮説を棄却することになります。</p><p>したがって、検定統計量の値は-2.58であり、結論は「帰無仮説を棄却する」です。</p>
問題 1/10
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