実験計画やデータの種類に応じて適切な検定手法を選択する能力を問う問題です。
同一の対象者やペアに対して、異なる条件下での測定値を比較する場合(例:投薬前と投薬後、処理前と処理後)、データには対応(ペア)があると見なします。このような場合、個体差の影響を除去できる「対応のあるデータのt検定(ペアードt検定)」が適切です。
1. データの性質の理解
問題文では、「10人の被験者に対して投薬前と投薬後の血圧を測定」とあります。これは、各被験者について「投薬前」と「投薬後」という2つの測定値のペアが得られることを意味します。これらのペアは互いに独立ではなく、同じ被験者から得られたデータであるため「対応のあるデータ」または「対のデータ」と呼ばれます。
2. 各検定手法の適用範囲
- 独立な2群の平均値の差のt検定: 互いに独立な2つのグループ(例: 男性グループと女性グループ、実験群と対照群で被験者が異なる場合)の平均値を比較する場合に用います。等分散を仮定する場合としない場合(ウェルチの検定)があります。今回のケースは独立な2群ではありません。
- 対応のあるデータのt検定(ペアードt検定): 同一の個体またはペアに対する2つの測定値の差の平均が0と異なるかどうかを検定します。具体的には、各ペアの差を計算し、その差の標本に対して1標本のt検定を行います。今回のケースに適合します。
- 分散分析(ANOVA): 3群以上の平均値の差を比較する場合や、複数の因子が影響を与える場合の主効果や交互作用を分析する際に用います。今回のケースは2つの時点の比較なので、分散分析は一般的ではありません(ただし、反復測定デザインの分散分析という形はあり得ますが、t検定がより直接的です)。
- カイ二乗検定: カテゴリデータの独立性の検定や適合度の検定に用いられます。血圧のような連続尺度のデータの平均値の比較には適していません。
3. 結論
投薬前と投薬後の血圧データは、同じ被験者から得られた対応のあるデータであるため、これらの平均値の差を検定するには「対応のあるデータのt検定(ペアードt検定)」が最も適切です。