一標本の分散の検定
正規分布に従う母集団からの標本を用いて、母分散に関する仮説検定を行います。
カイ二乗検定統計量の理論的基礎
Step 1: 検定統計量の定義
標本分散$s^2$を用いた母分散の検定統計量:
$\chi^2 = \frac{(n-1)s^2}{\sigma_0^2}$
ここで、$n$は標本サイズ、$s^2$は標本分散、$\sigma_0^2$は帰無仮説の分散値です。
Step 2: 検定統計量の分布
帰無仮説$H_0: \sigma^2 = \sigma_0^2$の下で、検定統計量は自由度$\nu = n-1$のカイ二乗分布に従います:
$\chi^2 \sim \chi^2_{n-1}$
与えられた情報の整理
Step 3: 数値の確認
与えられた情報:
- 標本サイズ:$n = 10$
- 標本分散:$s^2 = 12.5$
- 帰無仮説の分散:$\sigma_0^2 = 16$
- 自由度:$\nu = n - 1 = 10 - 1 = 9$
検定統計量の計算
Step 4: カイ二乗統計量の算出
検定統計量の計算:
$\chi^2 = \frac{(n-1)s^2}{\sigma_0^2} = \frac{(10-1) \times 12.5}{16} = \frac{9 \times 12.5}{16}$
$= \frac{112.5}{16} = 7.03125$
小数第2位まで求めると:
$\chi^2 = 7.03$
Step 5: 計算の検証
計算過程の確認:
- $(n-1) = 9$
- $s^2 = 12.5$
- $(n-1)s^2 = 9 \times 12.5 = 112.5$
- $\sigma_0^2 = 16$
- $\chi^2 = \frac{112.5}{16} = 7.03125$
一標本分散検定の特徴
- 正規性の仮定:母集団が正規分布に従うことが必要
- 独立性の仮定:各観測値が独立に抽出されること
- 自由度:$n-1$(標本平均の推定により1つ減少)
- 両側検定:分散の大小両方向を検定
- 頑健性:正規性からの逸脱に敏感
検定の実施と判定
Step 6: 臨界値との比較
有意水準$\alpha = 0.05$の両側検定の場合、自由度9のカイ二乗分布の臨界値:
- 下側臨界値:$\chi^2_{0.025,9} = 2.700$
- 上側臨界値:$\chi^2_{0.975,9} = 19.023$
Step 7: 判定結果
検定統計量$\chi^2 = 7.03$について:
- $2.700 < 7.03 < 19.023$:棄却域に入らない
- 結論:帰無仮説$H_0: \sigma^2 = 16$を棄却しない
- つまり、5%水準で母分散は16と有意に異ならない