二標本の分散の検定(F検定)
2つの正規分布に従う独立な母集団の分散が等しいかどうかを検定するF検定について説明します。
F検定統計量の理論的基礎
Step 1: 検定統計量の定義
2つの標本分散を用いたF検定統計量:
$F = \frac{s_1^2}{s_2^2}$
ここで、慣例として大きい方の標本分散を分子に置くことが多いですが、本問題では標本1を分子とします。
Step 2: 検定統計量の分布
帰無仮説$H_0: \sigma_1^2 = \sigma_2^2$の下で、検定統計量は自由度$(\nu_1, \nu_2)$のF分布に従います:
$F \sim F_{\nu_1, \nu_2}$
ここで$\nu_1 = n_1 - 1$、$\nu_2 = n_2 - 1$です。
与えられた情報の整理
Step 3: 数値の確認
与えられた情報:
- 標本1:$n_1 = 8$、$s_1^2 = 25$
- 標本2:$n_2 = 12$、$s_2^2 = 16$
- 自由度:$\nu_1 = n_1 - 1 = 8 - 1 = 7$
- 自由度:$\nu_2 = n_2 - 1 = 12 - 1 = 11$
F検定統計量の計算
Step 4: F統計量の算出
検定統計量の計算:
$F = \frac{s_1^2}{s_2^2} = \frac{25}{16} = 1.5625$
小数第2位まで求めると:
$F = 1.56$
Step 5: 計算の検証
計算過程の確認:
- $s_1^2 = 25$
- $s_2^2 = 16$
- $F = \frac{25}{16} = 1.5625$
- 小数第2位まで:$F = 1.56$
F検定の特徴
- 正規性の仮定:両母集団が正規分布に従うことが必要
- 独立性の仮定:2つの標本が独立に抽出されること
- 等分散性の検定:t検定の前提条件確認に使用
- 頑健性:正規性からの逸脱に敏感
- 片側性:F分布は非負の値のみを取る
検定の実施と判定
Step 6: 臨界値との比較
有意水準$\alpha = 0.05$の両側検定の場合、自由度$(7, 11)$のF分布の臨界値:
- 上側臨界値:$F_{0.025,7,11} \approx 3.60$
- 下側臨界値:$F_{0.975,7,11} = \frac{1}{F_{0.025,11,7}} \approx \frac{1}{3.01} \approx 0.33$
Step 7: 判定結果
検定統計量$F = 1.56$について:
- $0.33 < 1.56 < 3.60$:棄却域に入らない
- 結論:帰無仮説$H_0: \sigma_1^2 = \sigma_2^2$を棄却しない
- つまり、5%水準で2つの母分散に有意差はない