モデル選択・評価

AIC、BIC、交差検証、ROC曲線、混合行列など、統計モデルの選択と評価に関する手法

時系列交差検証の実装 レベル1

時系列データに対する交差検証において、次のうち適切でない手法はどれか。

解説
解答と解説を表示

この問題では、時系列データ特有の課題に対応した交差検証手法について理解を深めます。時系列データでは、時間的な順序関係と自己相関が存在するため、通常の交差検証手法をそのまま適用することはできません。

時系列データの特徴と課題

Step 1: 時系列データの基本特性

時系列データの特殊性:

  • 時間順序:観測値の順序に意味がある
  • 自己相関:隣接する観測値が相関を持つ
  • 非定常性:時間とともに統計的性質が変化する可能性
  • 季節性:周期的なパターンが存在する場合がある

データリークの問題:

時系列データでの原則は「未来の情報で過去を予測してはならない」ことです。通常のランダム分割では、以下の問題が発生します:

  • 情報漏洩:未来のデータが学習に使用される
  • 過度に楽観的な評価:実際の予測性能より高い評価が得られる
  • 現実との乖離:実運用時の性能と大きく異なる結果

Step 2: 適切な時系列交差検証手法

1. Time Series Split(時系列分割)

$$\\text{Train}_{i}: [1, 2, \\ldots, i \\times n] \\quad \\text{Test}_{i}: [i \\times n + 1, \\ldots, (i+1) \\times n]$$

特徴:

  • 時間順序を完全に保持
  • 各分割で学習データサイズが増加
  • 現実的な予測シナリオに対応

実装例:

  • Fold 1: Train[1:100], Test[101:125]
  • Fold 2: Train[1:125], Test[126:150]
  • Fold 3: Train[1:150], Test[151:175]

2. Walk-Forward Analysis(ウォークフォワード解析)

$$\\text{Train}_{i}: [i, i+1, \\ldots, i+w-1] \\quad \\text{Test}_{i}: [i+w]$$

ここで $w$ は固定ウィンドウサイズです。

特徴:

  • 固定長の学習ウィンドウを使用
  • 1ステップ先予測を反復実行
  • 最も現実的な評価手法

3. Purged Cross-Validation(パージ交差検証)

概念:学習データと検証データの間に「隔離期間」を設ける手法です。

$$\\text{Train}: [1, \\ldots, t-g] \\quad \\text{Purge}: [t-g+1, \\ldots, t+g-1] \\quad \\text{Test}: [t+g, \\ldots, T]$$

ここで $g$ はパージ期間の長さです。

目的:

  • 自己相関による情報漏洩を防止
  • モデルの短期記憶効果を排除
  • より保守的で現実的な評価
時系列交差検証手法の比較
手法時間順序保持データ漏洩現実性適用場面
Time Series Splitなし一般的な時系列予測
ランダムk-foldあり時系列以外
Walk-Forwardなし最高短期予測、高頻度取引
Purged CVなし金融データ、自己相関強

Step 3: ランダムk-fold の問題点詳細

データ漏洩のメカニズム:

  1. 時間順序の破綻:未来のデータで過去を学習
  2. 自己相関の利用:隣接データの強い相関を悪用
  3. 評価の歪み:実際より大幅に良い結果

具体例:

株価データ [100, 102, 101, 103, 105] を考えると:

  • 正しい方法:[100, 102, 101] で学習 → [103, 105] を予測
  • 誤った方法:[100, 103, 105] で学習 → [102, 101] を予測

後者では未来の情報(103, 105)を使って過去(102, 101)を予測しており、現実的ではありません。

実装上の考慮事項

Step 4: 実践的な実装ガイドライン

学習期間の設定:

  • 固定窓:直近n期間のみ使用(概念ドリフト対応)
  • 拡張窓:過去全データを使用(データ量最大化)
  • 加重窓:新しいデータに重みを付与

検証期間の設定:

  • 単一期間:1期間先予測の評価
  • 複数期間:多期間先予測の評価
  • ローリング予測:継続的な1期間先予測

パラメータ調整への影響:

ネスト交差検証の必要性:

  1. 外側ループ:性能評価用の時系列分割
  2. 内側ループ:ハイパーパラメータ調整用の時系列分割
  3. 時間一貫性:両ループで時間順序を維持
問題 1/10
カテゴリ一覧に戻る