ベクトル加算の基本
ベクトル加算は、同じ次元を持つ2つ以上のベクトル間で、対応する要素同士を足し合わせる操作です。線形代数の基本的な演算であり、多くの応用で用いられます。
計算方法
n次元ベクトル \(\mathbf{a} = [a_1, a_2, ..., a_n]^T\) と \(\mathbf{b} = [b_1, b_2, ..., b_n]^T\) の和 \(\mathbf{c} = \mathbf{a} + \mathbf{b}\) は、以下のように各要素を足し合わせることで計算されます。
$\mathbf{c} = \begin{pmatrix} c_1 \\ c_2 \\ \vdots \\ c_n \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a_1 + b_1 \\ a_2 + b_2 \\ \vdots \\ a_n + b_n \end{pmatrix}$
設問の計算例
与えられたベクトルは \(\mathbf{a} = [1, -3, 2]^T\) と \(\mathbf{b} = [4, 0, -5]^T\) です。
ベクトル \(\mathbf{c} = \mathbf{a} + \mathbf{b}\) の各要素を計算します。
$ c_1 = a_1 + b_1 = 1 + 4 = 5 \\ c_2 = a_2 + b_2 = -3 + 0 = -3 \\ c_3 = a_3 + b_3 = 2 + (-5) = -3$
したがって、和ベクトルは \(\mathbf{c} = [5, -3, -3]^T\) となります。
問題で問われているのは、このベクトル \(\mathbf{c}\) の第1要素であるため、答えは 5 です。
重要ポイント
- 次元の一致: ベクトル加算は、同じ次元を持つベクトル間でのみ定義されます。次元が異なるベクトル同士を足し合わせることはできません。
- 交換法則と結合法則: ベクトルの加算は、スカラーの加算と同様に交換法則 (\(\mathbf{a} + \mathbf{b} = \mathbf{b} + \mathbf{a}\)) と結合法則 (\((\mathbf{a} + \mathbf{b}) + \mathbf{c} = \mathbf{a} + (\mathbf{b} + \mathbf{c})\)) が成り立ちます。
- ゼロベクトル: すべての要素が0であるベクトル(ゼロベクトル \(\mathbf{0}\))は、加算における単位元です (\(\mathbf{a} + \mathbf{0} = \mathbf{a}\))。
幾何学的な解釈
ベクトルを幾何学的な矢印として表現した場合、ベクトル \(\mathbf{a}\) と \(\mathbf{b}\) の和 \(\mathbf{a} + \mathbf{b}\) は、\(\mathbf{a}\) の終点に \(\mathbf{b}\) の始点を接続したときの、元の始点から最終的な終点へのベクトルに対応します。これは「平行四辺形の法則」としても知られています。
機械学習における応用
ベクトル加算は、機械学習の様々な場面で基本的な演算として登場します。
- 特徴量の結合: 異なるソースからの特徴量ベクトルを単純に足し合わせて、新しい特徴量ベクトルを作成する場合があります。
- バイアス項の加算: ニューラルネットワークにおいて、重みベクトルと入力ベクトルの内積にバイアスベクトル(またはスカラーをブロードキャストしたもの)を加算する操作は頻繁に行われます。
- 勾配の集約: 分散学習などで、各ワーカーで計算された勾配ベクトルをサーバーで集約(加算)してモデルパラメータを更新する際に使用されます。
- ベクトル表現の更新: Word2Vecなどの単語埋め込みモデルにおいて、文脈に応じた単語ベクトルの更新計算などでベクトル加算が用いられることがあります。