行列式の性質と意味
行列式 \(\det(\mathbf{A})\) または \(|\mathbf{A}|\) は、正方行列 \(\mathbf{A}\) に関連付けられるスカラー値で、線形代数において重要な役割を果たします。
- 幾何学的意味: 行列式の絶対値は、行列による線形変換によって空間の「体積」がどれだけ拡大または縮小されるかの倍率を表します。2次元の場合は面積の変化率、3次元の場合は体積の変化率です。行列式の符号は、変換によって空間の向きが反転するかどうかを示します(正なら維持、負なら反転)。そのため、行列式は負の値も取り得ます。(選択肢1は誤り)
- 正則性との関係: 行列が正則 (Regular) である、すなわち逆行列が存在するための必要十分条件は、その行列式が0でないことです (\(\det(\mathbf{A})
eq 0\))。行列式が0の場合、その行列は逆行列を持たず、特異行列 (Singular Matrix) と呼ばれます。特異行列には、単位行列でないもの(例:ゼロ行列、同じ行/列を持つ行列など)も多く含まれます。(選択肢2は誤り、選択肢3は正しい)
- 計算方法 (2x2): \(\mathbf{A} = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}\) の場合、\(\det(\mathbf{A}) = ad - bc\) で計算されます。これは対角成分の和(トレース: a+d)とは異なります。(選択肢4は誤り)
- 固有値との関係: 行列式は、その行列の固有値すべての積に等しくなります。
- 行列の積の行列式: \(\det(\mathbf{AB}) = \det(\mathbf{A}) \det(\mathbf{B})\) が成り立ちます。
- 転置行列の行列式: \(\det(\mathbf{A}^T) = \det(\mathbf{A})\) が成り立ちます。
したがって、行列式に関する正しい記述は選択肢3です。
行列式の重要性
- 逆行列の存在判定(正則性チェック)に使われる。
- 連立一次方程式の解の存在や一意性を調べる(クラメルの公式など)のに役立つ。
- 固有値計算(特性方程式 \(\det(\mathbf{A} - \lambda \mathbf{I}) = 0\))の基礎となる。
- 線形変換による体積変化率を表す幾何学的な意味を持つ。