1標本t検定とt統計量
1標本t検定は、抽出された1つの標本データに基づいて、その標本が由来する母集団の平均値が、特定の既知の値 \(\mu_0\) と統計的に有意に異なるかどうかを判断するための仮説検定手法です。特に、母集団の標準偏差(母標準偏差 \(\sigma\))が未知で、標本サイズが比較的小さい場合によく用いられます。(母標準偏差が既知、または標本サイズが大きい場合はZ検定を用います)
t統計量は、この検定において中心的な役割を果たす値で、「標本平均 \(\bar{x}\) が、帰無仮説で想定される母平均 \(\mu_0\) から、標準誤差(Standard Error)の何倍分離れているか」を示します。
t統計量の計算式
$t = \frac{\text{標本平均} - \text{仮説上の母平均}}{\text{標準誤差}} = \frac{\bar{x} - \mu_0}{SE}$
ここで、標準誤差 (SE) は標本平均 \(\bar{x}\) のばらつき(推定の精度)を示す指標で、母標準偏差 \(\sigma\) が未知の場合は、標本標準偏差 \(s\) を使って以下のように推定します。
$SE = \frac{s}{\sqrt{n}}$
- \(s\): 標本標準偏差 (標本データのばらつき)
- \(n\): 標本サイズ
したがって、t統計量の計算式は最終的に以下のようになります。
$t = \frac{\bar{x} - \mu_0}{s / \sqrt{n}}$\
今回の計算ステップ
問題で与えられた値:
- 標本平均: \(\bar{x} = 53\)
- 仮説上の母平均(帰無仮説): \(\mu_0 = 50\)
- 標本標準偏差: \(s = 8\)
- 標本サイズ: \(n = 16\)
1. 標準誤差 (SE) の計算:
$\sqrt{n} = \sqrt{16} = 4$
$SE = \frac{s}{\sqrt{n}} = \frac{8}{4} = 2$
標準誤差が2であるということは、この標本サイズ(n=16)で母集団から標本を繰り返し抽出した場合、標本平均 \(\bar{x}\) は真の母平均の周りに標準偏差2程度でばらつく、と推定されることを意味します。
2. t統計量の計算:
$t = \frac{\bar{x} - \mu_0}{SE} = \frac{53 - 50}{2} = \frac{3}{2} = 1.5$
結果の解釈
計算されたt統計量の値は 1.5 です。
- これは、観測された標本平均(53)が、帰無仮説の母平均(50)から、標準誤差(2)の1.5倍だけ離れていることを示します。
- t統計量の絶対値が大きいほど、標本平均は仮説上の母平均から大きくずれていることを意味し、帰無仮説が誤っている可能性が高まります。
このt値 = 1.5が統計的に有意な差を示すかどうかを判断するには、このt値を自由度 (degrees of freedom, df) \(df = n - 1 = 16 - 1 = 15\) のt分布と比較して、p値を計算する必要があります。p値が事前に設定した有意水準(例: 0.05)より小さければ、帰無仮説(母平均は50である)を棄却し、「母平均は50とは異なる」と結論付けます。