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<h4>p値 (P-value) とは?</h4>
<p>p値(有意確率)は、統計的仮説検定において非常に重要な概念です。これは、「<strong>帰無仮説(H₀: 例えば『差がない』『効果がない』)が正しいと仮定した場合に、観測されたデータ(またはそれ以上に極端なデータ)が得られる確率</strong>」を表します。</p>
<ul>
<li>p値が小さいほど、観測されたデータは帰無仮説の下では起こりにくい(珍しい)ことになります。</li>
<li>p値が大きいほど、観測されたデータは帰無仮説の下でも十分に起こりうる(ありふれた)ことになります。</li>
</ul>
<p>慣例的に、p値が事前に設定した<strong>有意水準(Significance Level, \(\alpha\))</strong>(通常は 0.05 や 0.01)よりも小さい場合(\(p < \alpha\))、帰無仮説を棄却し、対立仮説(H₁: 例えば『差がある』『効果がある』)を採択します。これは、「観測された結果は偶然では起こりにくいほど珍しいので、帰無仮説は恐らく間違っているだろう」と判断するためです。</p><h5>両側検定 (Two-tailed Test) のp値</h5>
<p>両側検定は、対立仮説が「差がある」(どちらの方向に差があるかは問わない)という形式の場合に行われます。例えば、「グループAとグループBの平均値は異なる」といった場合です。</p>
<p>この場合、観測されたテスト統計量(この問題ではZ統計量 \(Z_{obs}\))と同じくらい、またはそれ以上に「極端な」(帰無仮説から離れた)値が、分布の<strong>両側</strong>で得られる確率を合計してp値を計算します。標準正規分布(Z分布)は平均0に対して対称なので、計算は比較的簡単です。</p>
<div class="formula">
$p\text{-value} = P(Z \ge |Z_{obs}|) + P(Z \le -|Z_{obs}|)
= 2 \times P(Z \ge |Z_{obs}|) \quad (\text{分布の対称性より})$
</div>
<p>これは、観測されたZ統計量の絶対値 \(|Z_{obs}|\) 以上の値が分布の右側の裾で得られる確率 \(P(Z \ge |Z_{obs}|)\) を計算し、それを2倍することと同じです。</p><h5>今回の計算</h5>
<p>問題の条件:</p>
<ul>
<li>観測されたテスト統計量: \(Z_{obs} = 2.5\)</li>
<li>検定の種類: 両側検定</li>
<li>与えられた確率: \(P(Z > 2.5) = 0.0062\) (これは \(P(Z \ge 2.5)\) とほぼ等しい)</li>
</ul>
<p>両側p値の計算式に値を代入します。</p>
<div class="formula">
$p\text{-value} = 2 \times P(Z \ge |2.5|)
= 2 \times P(Z \ge 2.5)
\approx 2 \times 0.0062
= 0.0124$
</div><h5>結果の解釈</h5>
<p>したがって、このZ値に対応する両側のp値は <strong>0.0124</strong> (または 1.24%) です。</p>
<p>もし有意水準を \(\alpha = 0.05\) (5%) と設定していた場合、\(p = 0.0124 < 0.05\) なので、帰無仮説は棄却されます。つまり、「観測されたZ=2.5という結果は、偶然(帰無仮説が正しい場合)では起こりにくい(確率1.24%)ため、統計的に有意な差がある」と結論付けられます。</p>