条件付き確率の実務シナリオ
分野: 確率
結果(エスカレーション)が観測されたあとで原因(問い合わせ種別)の確率を求める、条件付き確率の実務問題です。ベイズの定理と同じ計算ですが、本問は定義 $P(A|B)=P(A\cap B)/P(B)$ を直接使います。
1. 事象の定義
- $B$:請求関連($P(B)=0.40$)
- $T$:技術関連($P(T)=0.60$)
- $E$:エスカレーション
与えられた条件付き確率は $P(E|B)=0.25$、$P(E|T)=0.10$ です。求めるのは $P(B|E)$ です。
2. 同時確率(経路の重み)
$P(E\cap B)=P(E|B)P(B)=0.25\times 0.40=0.10$
$P(E\cap T)=P(E|T)P(T)=0.10\times 0.60=0.06$
1000件なら、請求からエスカレーション100件、技術から60件です。
3. 全確率で分母を作る
$P(E)=0.10+0.06=0.16$
4. 条件付き確率
$P(B|E)=\dfrac{0.10}{0.16}=0.625$
小数第3位までで 0.625 です。エスカレーション率は請求の方が高いので、エスカレーション全体に占める請求の割合は、元の構成比40%より大きくなります。
5. よくある誤り
- $P(E|B)=0.25$ をそのまま答える(原因と結果を逆にする)。
- 構成比0.40を答える(エスカレーションという情報を無視する)。
- 分母を1にして 0.10 と答える(全確率を忘れる)。
「結果が分かったあとの原因」は分母を結果の確率にする
表にすると、行が種別・列がエスカレーション有無の分割表です。知りたいセルを、その列の合計で割ります。
感度と特異度の医療検査と同じ構造です。事前確率(構成比)を忘れると、稀な種別の事後確率を過大評価します。
6. 分割表で検算する
問い合わせ1000件とすると、請求400、技術600です。エスカレーションは請求100、技術60、合計160。そのうち請求は100なので 100/160=0.625 で、公式と一致します。「エスカレーションされた一件」という条件は、160件の列に制限する操作です。行の構成比40%を答えるのは、列の制限を忘れた誤りです。
乗法定理 $P(E\cap B)=P(E|B)P(B)$ を使わず、$P(B|E)=P(E|B)$ とする逆転は、医療検査でも最頻の誤りです。感度25%をそのまま「請求である確率」と読むと、事前確率と他経路(技術からの流入)を無視します。本問では技術経路が60件あり、無視できません。
ベイズ更新と書く必要はありませんが、計算は事後確率そのものです。ゲスト帯では定義の適用ができれば十分で、事前をベータ分布にする階層ベイズまでは扱いません。
条件付き確率は「分母を条件の世界に取り直す」操作です。エスカレーション160件が新しい全体になり、その中の請求100件が分子です。事前の1000件を分母に残すと0.10になり、これは同時確率であって条件付きではありません。定義 $P(B|E)=P(B\cap E)/P(E)$ の分母を忘れないことが、実務シナリオでもサイコロでも共通の技術です。
実務ではエスカレーション理由の構成比を見て人員配置を決めます。事後確率0.625は『上位対応の過半数は請求由来』を意味し、技術より請求のスクリプト整備を先にする根拠になります。ただしこれは1時点の条件付き確率であり、季節やキャンペーンで事前構成比が変われば事後も動きます。事前を更新しながら同じ公式を使い回す、が運用上の次の一歩です。
答え0.625は小数第3位までぴったりです。0.250や0.400は条件の向きを間違えた値、0.160はエスカレーションの周辺確率です。分母をEに取り直したかを検算してください。
したがって、求める確率は 0.625 です。