信頼区間の重なりだけでは差を判断できない
分野: 図表読解
2群それぞれの母平均の95%信頼区間を見たとき、「重なったら差は有意でない」「重ならなければ有意」と短絡する誤読を防ぐ問題です。本問では差の信頼区間もp値も与えません。図から読み取れることと、読み取れないことを分けます。
1. 図の読み取り
午前の区間は14.0〜22.0、夕方は20.5〜27.5です。20.5〜22.0で重なります。各区間は「その群の母平均」に対する不確かさであり、「差」の不確かさではありません。
2. 重なりと有意性の関係
独立2群について、個々の95%CIが重ならないなら、差はおおむね有意水準5%で有意、という十分条件に近い経験則はあります。しかし逆は成り立ちません。少し重なっていても、差の標準誤差は各群SEの合成であり、差の95%CIが0を含まないことがあります。重なりの有無は、差の検定の必要十分条件ではありません。
3. 何が必要か
差の有意性を判断するには、(i) 差の信頼区間が0を含むか、(ii) 2標本の検定のp値、のいずれかが必要です。本問にはどちらもないので、「有意/非有意」は決められません。
4. 選択肢の検討
- 重なり=差がない → 誤り。重なりは「差がない証拠」ではありません。差がないと言い切るには、実質的な同等性の枠組みが別に必要です。
- 重なり=5%で非有意 → 誤り。これが本問の基本誤読です。軽微な重なりでも差が有意な例があります。
- 重なりだけでは決まらない → 正しい。図から言えるのは「各群の区間が一部重なる」ことまでです。
- 点推定が大きいので必ず有意 → 誤り。差の大きさだけでなく標準誤差と標本サイズが要ります。
- nが同じなら重なりは非有意 → 誤り。nが等しくても、重なり幅とSEの関係次第です。
群ごとのCIの重なり ≠ 差の有意性
視線は「2本の誤差バーが触れているか」ではなく、「差そのものの区間が0を跨ぐか」に向ける。後者はこの図にはありません。
頻度論の95%CIは「この区間に母数が入る確率が95%」ではありません。同じ手続きを繰り返したとき、区間が母数を含む割合が約95%です。解釈を混同すると、重なりの話もさらに乱れます。
5. 図のどこを見るか
横軸は遅延(分)です。午前は円マーカーで14〜22、夕方は四角で20.5〜27.5。重なりは約1.5分と、各区間の幅8分・7分に対して小さめです。この「小さめの重なり」こそ、差が有意なことも非有意なこともあり得るグレーゾーンです。差の標準誤差は各群SEの合成(独立なら根号の和)なので、個々の区間幅より差の区間は広くも狭くもなりませんが、0を含むかどうかは重なりだけでは読めません。
本問では差のCIもp値も図に出していません。これは意図的で、上級の「差の区間まで見て推論する」問題と役割分担しています。ここでは「足りない情報が何かを言える」ことが正解です。
重ならない→有意、はおおむね保守的な目安です。重なる→非有意、は誤りです。後者を選ばないことが、このL1読解の到達点です。
読解の手順は、(1) 各区間の端点を読む、(2) 重なりの有無を確認する、(3) それでも差の有意性は保留する、(4) 必要な追加情報(差のCIまたはp)を述べる、です。本問の正解は(3)(4)を言語化したものです。点推定の大小だけで有意と言い切る選択肢は、標準誤差を無視している点で別種の誤りです。
補足として、重ならない場合は差が有意である可能性が高い、という片側の目安は残して構いません。禁止されるのは重なりから非有意を読む方向です。差の分散は各群分散の合成なので、群CIより差のCIの方が判断に直結します。本図に差の区間がない以上、有意とも非有意とも書かないのが正しい読解です。
したがって、最も適切なのは「各群の95%信頼区間の重なりだけでは差の有意性は決まらない」です。