t分布を使う条件
分野: 確率分布
zとtの切替は「nが30」という丸暗記ではなく、母分散が既知か未知か、正規性がどこまで頼れるか、で決まります。
1. 統計量
正規母集団 $N(\mu,\sigma^2)$ から大きさ n の標本を取るとき、
$Z=(\bar{X}-\mu)/(\sigma/\sqrt{n})\sim N(0,1)$
$\sigma$ を不偏分散 $S^2=\sum(X_i-\bar X)^2/(n-1)$ の平方根 $S$ に替えると
$t=(\bar{X}-\mu)/(S/\sqrt{n})\sim t_{n-1}$
t分布は正規より裾が重く、dfが小さいほど臨界値は大きく、区間は広くなります。df→∞で標準正規に近づきます。
2. いつzか
母分散既知ならzです。未知でも n が十分大きく $S$ が $\sigma$ に近いなら、z近似が使われることがあります。2級では「未知ならt」が基本です。
3. 正規性
tの導出は正規母集団を使います。歪みが強い小標本では、t区間の名目信頼水準がずれます。大標本では中心極限定理で $\bar{X}$ が正規に近づき、t近似が実務的に使われます。しかし「未知なら正規性不要で常に正確」ではありません。
4. 比率
母比率の大標本区間は $\hat{p}$ の正規近似で、tではありません(別の問題です)。
5. 選択肢の検討
- 既知ならt → 誤り。既知はzです。
- 未知・正規母集団の平均推測にt(小標本で特に重要) → 正しい。
- n=1000なら既知でもt → 誤り。既知はzのままです。
- 比率にt → 誤り。大標本なら正規近似です。
- 未知なら正規性不要で常に正確 → 誤り。小標本の歪みに弱いです。
tは「σをsで代用したペナルティ」
dfが小さいほど区間は広い。nが大きくても未知なら形式的にはt、近似的にz、と説明を分けられるようにする。