ANOVAと箱ひげではどの群差かは未確定
分野: 図表読解
本問は統合問題です。つなぐ論点は、(1) ANOVA表のF棄却(少なくとも1群が異なる)、(2) 箱ひげによる分布の視覚(Aが高め、BとCは重なる)、(3) 「どのペアか」は全体Fでは決まらない、です。13問目の単独F判定を、図と過大解釈の抑制まで拡張しています。
1. 表の判定
$k=3$、$N=30$、df は 2 と 27。$F=320/80=4.00>3.35$ なので5%で $H_0:\mu_A=\mu_B=\mu_C$ を棄却します。結論は「3平均が全部同じではない」です。平方和 640+2160=2800 も整合します。
2. 箱ひげの読み
視線は中央値→箱(IQR)→ひげ→外れ値候補の順です。Aの箱は80点台で他より上、BとCの箱は60点台後半〜70点台で大きく重なります。Bの上側ひげが長いのは右裾(88点)で、1.5×IQRの内側です。図は「Aが候補として高い」印象を与えますが、重なりがある以上、B対Cはもちろん、A対B・A対Cも、視覚だけで有意差を断定できません。
3. なぜペアは未確定か
全体Fは対比較を同時に制御した検定ではありません。棄却は「どこかに差がある」という存在命題です。どの対かを言うには多重比較が必要で、比較回数分だけ第一種の誤りが増えないよう調整します。箱の非重なりは、CIの重なりと同様、必要十分条件ではありません。
4. 矛盾ではない
BとCが似ていてAだけが違う、というパターンでも全体Fは有意になり得ます。箱の重なりはANOVA無効の証拠ではありません。逆に、図でAが高く見えても、分散とn次第ではA対Bが非有意、ということもあり得ます。
5. 選択肢の検討
- 全ペアが有意 → 誤り。全体Fの過大解釈です。
- 中央値が最高のAが唯一の有意差 → 誤り。視覚と多重比較なしの断定です。
- 箱の重なりとANOVAが矛盾 → 誤り。部分的な重なりと全体差は両立します。
- 中央値が近いので母平均は等しい → 誤り。「等しい」は証明できず、非棄却でも同等ではありません。
- 少なくとも1群が異なるがペアは未確定 → 正しい。表と図を接続し、やり過ぎない結論です。
全体Fはドアを開け、どの部屋かは多重比較
箱ひげは候補を絞る探索図です。報告は「全体差あり。対比較は未実施(または別表)」と書き分けます。
等分散が疑わしいときはWelch型や変換を検討しますが、本問のメッセージは「棄却≠全ペア差」です。
6. 表と図を矛盾なく読む
F=4.00>3.35 で全体差あり。図ではAの箱が上、BとCが重なる。この2つは両立します。Aだけが違うパターンでも全体Fは棄却されます。
Bの長い上ひげは右裾で、中央値はCに近いです。ここから「BとCは同じ」「Aが唯一有意」はどちらも飛躍です。対比較を行うまでは、「少なくとも1群が異なる。図上の候補はAが高め」までが誠実な要約です。
箱の重なりをANOVA無効と呼ぶのは、5問目のCI重なり誤読と同型です。全体指標とペア指標は階層が違います。多重比較を省略して全ペア有意と書くと、第一種の誤りが比較回数分膨らみます。
13問目が表だけのF判定、本問が表+図+過大解釈の抑制、という役割分担です。視覚で候補を挙げ、断定は次の分析へ送る、が到達点です。
統合の採点ポイントは、F棄却=少なくとも1群が異なる、箱ひげはAが高めという候補、どのペアかは未確定、の3点です。全ペア有意・Aが唯一・箱重なりでANOVA無効・中央値が近いので母平均は等しい、はいずれも階層を飛ばした断定です。5問目の重なり誤読と同じ精神で、全体指標からペア指標を読み過ぎないことが到達点です。
したがって、最も適切なのは、全体として差はあるがどの群差かは未確定、という結論です。