フィッシャー3原則:局所管理(ブロック)
この問題では、局所管理(blocking)を、既知の異質性である標高に対してどう使うかを適用します。茶園の標高帯という設定で考えます。
1. 局所管理が狙うもの
収量は肥料だけでなく気温・日照・土壌水分でも変わります。標高が高い区画はもともと収量が低い傾向があるなら、高い区画にばかり新肥料を置くと、新肥料が不利に見えます。逆なら有利に見えます。標高は実験前から分かっている交絡(または誤差を膨らませる要因)です。局所管理は、この既知の異質性で実験単位をグループ(ブロック)に分け、ブロックの中で処理を比較します。
2. 茶園への当てはめ
標高を「低・中・高」などの帯に切ってブロックとします。各帯の中で、有機肥料の区画と従来肥料の区画を両方置きます。比較は「高い場所の有機 vs 高い場所の従来」「低い場所の有機 vs 低い場所の従来」という局所的な差です。標高そのものの効果はブロック間の差として分離され、肥料の差を測る誤差分散が小さくなります。
$$\text{収量} = \text{肥料の効果} + \text{標高ブロックの効果} + \text{誤差}$$
ブロック内で比べ、ブロック間は層と見る
- ブロックは、似た環境の実験単位の束である
- 処理の比較はブロックの内側で行う
- ブロック間の大きな差は、処理効果の判定から外す(誤差に入れない)
無作為化は各ブロックの中で行うのが原則です。標高帯を切っただけで、帯の中で担当者の好みで肥料を置くと、局所管理の効果が薄れます。
3. 反復・無作為化との関係
ブロック化は反復の代わりではありません。各ブロック内でも、処理ごとに十分な実験単位(反復)が必要です。無作為化は、ブロックに入れなかった未知要因の系統的偏りを平均的に薄めます。3原則は並べて使うものであり、一つで他を省略できません。
4. 各選択肢の検討
- 「標高を無視して希望割付」→ 誤り。既知の異質性を放置し、さらに選択バイアスを入れます。
- 「ブロック内比較を避ける」→ 誤り。局所管理の核心はブロック内比較です。
- 「反復があればブロックは不要」→ 誤り。反復は誤差の見積もりです。標高という系統的な差は、回数を増やしても設計に入れなければ誤差を膨らませます。
- 「無作為抽出と同じ」→ 誤り。抽出は標本調査の話、ブロック化は実験単位の比較の場を揃える話です。
- 「標高帯をブロックにし、帯の中で肥料を比較する」→ 正しい。
5. ブロックに入れる変数の選び方
ブロックにするのは、結果を大きく動かし、実験前から分かる要因です。茶園では標高がその条件を満たします。一方、肥料を置いたあとに決まる変数(その週の降雨を処理の割付に使う等)はブロックではありません。測っていない微小な差までブロックにすると、ブロック数が増え、各ブロック内の反復が足りなくなります。
標高帯の中で有機と従来の両方を置くことが必須です。高い帯はすべて有機、低い帯はすべて従来、だと標高と肥料が完全に交絡し、局所管理どころか識別不能になります。ブロックは「似た場所で両方の処理を走らせる」ための箱です。
標高以外にも、斜面の向きや土壌の種類が事前に分かるなら、それらを追加のブロック因子にできます。ただし因子を増やすほど、各ブロック内の区画が足りなくなります。現場で効果が大きいと分かっている標高を、まず一つのブロック因子として入れるのが局所管理の実務です。
ブロック化は、標高という大きなノイズを処理比較の分母から外す操作です。肥料の効果そのものを作る操作ではありません。効果の識別は、ブロック内で両方の肥料を走らせることで行います。
したがって、局所管理の適用は、標高帯をブロックとしてその中で肥料を比較し、既知の異質性を誤差から除くことです。