全体の散布図が右上がりでも、グループに分けると傾きの符号が変わることがあります。シンプソンのパラドックスに近い「見かけの相関」です。入門の職種別散布図(群内はほぼ平坦)とは違い、本図は群内が明確な負、全体が正、という逆転です。
全体の雲と、マーカーごとの雲
図を見るときは、まず凡例の丸(北工場)と四角(南工場)で点を分けます。色だけに頼らず、形で層を固定します。
Step 1: 工場内の傾き
北工場は左下(検査2〜4.5時間、不良18〜13件)に集まり、検査が長い点ほど不良が少ない負の関係です。南工場は右上(8〜10.5時間、不良38〜33件)でも、同様に右下がりです。各工場内では検査時間が長い観測ほど不良件数が少ない負の関連です。
Step 2: 混ぜたときの見かけ
2群を1つの雲として見ると、左下の北から右上の南へ点が並び、全体では正の相関に見えます。これは検査時間の効果というより、工場という第3の変数(規模・工程・製品)が、検査時間と不良件数の両方をずらしているためです。南工場はもともと不良が多く、検査時間も長い、という配置です。
Step 3: 選択肢の検討
- 工場内は負、混ぜると正に見える: 正しいです。層別と全体で符号が逆転しています。
- 工場内でも全体でも正: 工場内は右下がりなので誤りです。
- 検査を増やすと不良は必ず増える: 全体の見かけを因果に読み替えた誤りです。工場内は逆方向です。
- 全体が右上がりなので北工場内も右上がり: 北の6点だけを辿ると右下がりです。
- 層別しても変わらない: 本図がその反例です。工場を無視すると符号を誤ります。
層別してから相関を語る
マーカーが2種類ある散布図では、(1) 全体、(2) 各層、の両方の傾きを述べます。全体だけを「検査時間の効果」と読むのは交絡の典型です。偏相関は、工場のような第3変数を数値的に固定した相関で、解説の次の段です。
したがって、工場内では負、混ぜると正に見える、が最も適切な解釈です。
交絡としての工場
北工場の6点は検査時間が短く不良も相対的に少ないクラスタ、南工場は検査が長く不良の水準自体が高いクラスタです。検査時間と不良の群間差が、群内の負の傾きを打ち消して全体を正に見せます。これを「検査を増やすと不良が増える」と読むと、現場では逆の施策になりかねません。
対処は、(1) 工場で層別して散布図を描く(本図)、(2) 工場をダミー変数として回帰に入れる、(3) 偏相関で第3変数を線形に取り除く、です。偏相関の計算は本問の範囲外ですが、「全体の$r$だけを報告しない」という態度は2級の相関・回帰に直結します。色と形の両方が凡例にあるのは、色覚に依存せず層を読むためです。
入門の職種別散布図は、群内がほぼ平坦で全体だけ正、という「見かけ」でした。本図は群内が明確な負で、全体が正という符号逆転です。同じ「層別せよ」でも、読み取るパターンを変えてあります。北の右下がり6点と南の右下がり6点を、指で別々に辿ってから全体を見る、と手順化すると誤りが減ります。
シンプソンのパラドックスの分割表版は、率の向きが層と全体で逆転する話です。本図はその散布図版で、符号逆転が点の2つの雲として目に見えます。全体の直線を引く前にマーカーを見る、が鉄則です。