決定係数 $R^2$ は「直線が $y$ のばらつきの何割を説明するか」であり、残差にパターンがないことは保証しません。高い $R^2$ と有意な傾きがあっても、関係が曲線なら直線モデルは誤指定です。本問は表($R^2$・p)と図(残差)を両方使う総合判断です。
$R^2$ が高いのに残差が曲がるとき
図8では、適合値が小さい左端で残差が+8、中央で−3付近、右端で+9と、0の破線に対してU字です。これは「真の関係が二次に近いのに直線を当てた」ときに出る典型です。直線は大まかな右上がりを拾って $R^2=0.91$ まで上げられますが、系統的な過大・過小予測が残ります。
Step 1: 表だけ読む危険
$R^2=0.91$ は「当てはまりが良い」印象を与えます。傾きのp=0.001も「温度は効いている」と言いたくなります。しかしp値は「傾きが0か」という狭い帰無に対するもので、直線が正しい形かは検定していません。
Step 2: 図のどこを見るか
残差0の破線に対し、点が左で上、中央で下、右で上、と弧を描くかを見ます。漏斗(幅の変化)ではなく、残差の位置の曲線です。線形性の仮定が疑わしい、という診断になります。
Step 3: 選択肢の検討
- $R^2$ は高いが曲線で仮定が疑わしい: 正しいです。表と図を矛盾なく読んだ判断です。
- $R^2$ が高いので図は無視: $R^2$ はパターンの有無を消しません。本図がその反例です。
- pが小さいので曲線は偶然: 傾きの検定は曲線診断の代替になりません。
- U字は等分散の証拠: U字は線形性の問題です。等分散は縦方向の幅の話です。
- $n=10$ なので何も言えない: 小さい標本では不確かさは増えますが、これだけ明瞭なU字を「読めない」とはしません。むしろ過適合にも注意、という補足になります。
要約指標と診断図は役割が違う
$R^2$ と係数のpは「直線を信じたときの要約」です。残差プロットは「その直線を信じてよいか」の検査です。高い $R^2$ が出たときほど、図を省略しない、が実務的な守りです。次の手は二次項の追加や変数変換の検討です。
決定係数が高いほど図を省略したくなる、というのが実務の落とし穴です。統計検定二級では、残差プロットの曲線は線形性の疑い、漏斗は等分散の疑い、と役割を分けて問われます。傾きのピー値が小さいことは、一次式で十分であることの証明ではありません。標本が十件と少なくても、両端が同じ方向に外れるユー字は無視できません。
したがって、$R^2$ は高いが残差に曲線があり線形モデルの仮定は疑わしい、が最も適切です。
高い$R^2$が隠す系統誤差
適合値25〜30で残差が約−3、両端で+8〜+9です。直線は中温を過大予測し、低温・高温を過小予測しています。$R^2=0.91$ は「直線からの偏差平方和が小さい」ことであり、「残差の符号が無規則」ではありません。二次の真の関係に直線を当てると、広い$x$範囲では$R^2$が高くても、端でのバイアスが残ります。
$n=10$ は少ないので、曲線に見えるのが偶然の可能性もゼロではありません。しかし両端が同じ方向に大きく外れるU字は、偶然にしては整いすぎています。次の手は散布図に戻って $y$ 対 $x$ を見ること、必要なら $x^2$ 項や区間ごとの直線です。p=0.001は「傾き0」の棄却であり、「一次式で十分」の証明ではありません。
6問目の漏斗(幅)と8問目のU字(位置)を混同しないことが、残差診断の核心です。どちらも「$R^2$が高いから省略」はできません。