移動平均は、隣り合う時点を平均してギザギザをならす記述的な平滑化です。3項中心化では時点$t$に $(y_{t-1}+y_t+y_{t+1})/3$ を対応させます。両端には片側の隣がないので値がありません。
図のどこを見るか
灰色の丸が月次原系列で、3月40や5月50など谷、4月55や10月78など山があります。オレンジの四角と破線が2〜11月の移動平均で、43.3から78.3へなだらかに上がっています。凡例どおり、丸=月次、四角=MA、と形で区別します。
Step 1: 平滑化の効果
例えば3月中心は $(48+40+55)/3=47.7$ で、原系列の谷40より高い。4月中心は $(40+55+50)/3=48.3$ で、山55より低い。短期の凸凹が削られ、右上がりの傾向が読みやすくなります。
Step 2: 端点が欠ける理由
1月は $t-1$ がなく、12月は $t+1$ がないので、3項中心化MAは定義できません。図に1月・12月の四角がないのは計算漏れではなく定義です。12月の85をMAの点と読んではいけません。
Step 3: 選択肢の検討
- MAは常に大きい: 山の月ではMAの方が小さいです(4月55対48.3)。
- 12月85がMAの最後: 12月に四角はありません。原系列の終端です。
- 滑らかさは作図ミス: 平滑化そのものが目的です。一致したら移動平均の意味がありません。
- 凸凹をならし上昇。端は定義できない: 正しいです。
- 原因が証明: 傾向の記述であり、因果の証明ではありません。
移動平均で分かること
- 短期変動を削り、上昇・下降の方向を見やすくする
- 項数を増やすほど滑らかだが、端が欠け、変化のタイミングも鈍る
- 平滑化は説明変数ではない
移動平均は原系列より常に大きい、は山の月で成り立ちません。十二月の原系列を移動平均の最後の点と読むのは、端点が欠けている定義を無視しています。滑らかさが作図ミス、は平滑化の目的そのものを否定しています。右上がりなので原因が証明された、は傾向の記述を因果に昇格した誤りです。統計検定二級では、項数と端点の欠落、ならした後の傾向の読み取りが問われます。図では丸が月次、四角が移動平均、とマーカーで区別します。
したがって、移動平均は短期の凸凹をならし上昇傾向を示し、端の月は3項では定義できない、が最も適切です。
3項の計算を1点で再現する
6月中心は $(50+62+58)/3=56.7$、図の四角と一致します。原系列62の山はならされて56.7になります。10月中心は $(65+78+72)/3=71.7$ です。12月85は平均に入れる隣がないので、中心化3項では点がありません。片側移動平均(過去3か月)なら12月に値が出ますが、本図の凡例は3-term MAで、欠端のある中心化です。
上昇傾向は、MAが43付近から78付近へ右上がりなことで読みます。原系列だけだと3月の谷40が目立ち、傾向を過小評価しがちです。ただし平滑化は遅れるので、急増の「始まった月」をMAの立ち上がりと同一視しないでください。因果(キャンペーンが効いた等)は系列の外の情報です。
凡例では丸が月次、四角がMAです。色が似て見えても線種(実線と破線)とマーカーで追えます。MAが原系列より常に大きいわけではなく、谷では底上げ、山では切り下げ、が同時に起きます。これが「ならす」の定義です。
入門の3項移動平均の計算問題とは、月次12点・端点欠落・傾向の読み取りに焦点を移しています。数値も来店者の例とは共有していません。