標本平均の標準誤差
分野: 確率分布
標本平均 $\bar{X}$ のばらつきを、母標準偏差と標本サイズから標準誤差として求める問題です。標準誤差は「1つの標本平均が、母平均のまわりでどれだけ揺れるか」の尺度です。
1. 標本平均の期待値と分散
独立同一分布の標本では
$E(\bar{X})=\mu,\qquad V(\bar{X})=\sigma^2/n$
5. 区間との接続
母分散既知なら平均の95%CIの半幅は $1.96\times1.2\approx2.35$ です。同じ $\sigma=9.6$ でも n=16 なら SE=2.4、n=256 なら SE=0.6 と、平方根でしか減りません。「測定のばらつき9.6」と「平均のばらつき1.2」を報告書で混在させると、精度を過大・過小に見積もります。
中心極限定理より、母集団が多少歪んでいても n=64 なら $\bar{X}$ の分布は正規に近づきます。ただし極端な外れ値が混じる分布では、平均そのものが不安定なので、中央値のSEなど別指標も検討します。
$s/\sqrt{n}$ を使うときは、s 自体が推定である分だけtになり、臨界値は1.96より少し大きいです。本問は $\sigma$ 既知指定です。
標準誤差の単位は元データと同じです。本問なら検査値の単位のまま1.2です。CVのように無次元にはしません。$\sigma/n$ として0.15と答える誤りは、分散公式 $V(\bar{X})=\sigma^2/n$ の平方根を取る段階を飛ばしています。必ず根号を付けて $\sigma/\sqrt{n}$ です。n=64が平方数なのは計算を簡単にするための出題上の配慮です。
標準誤差は信頼区間・検定統計量・必要nの3つに再利用されます。半幅はz×SE、t統計量の分母もSE、必要nはSEを目標値まで下げる逆算です。1.2という一つの数が、推定の精度の共通通貨になります。σ=9.6を『ばらつき』として報告するだけでは、平均の精度を伝えたことになりません。必ずnとセットでSEを書く習慣を付けてください。
答え1.2は9.6÷8です。9.6、0.15、76.8はそれぞれσそのもの、σ/n、σ√nです。根号の位置だけを見れば誤答を切れます。小数第1位までで1.2です。標準誤差は平均の精度であり、個々の測定値のばらつき9.6とは役割が違います。nを4倍にするとSEは半分、という関係もここから読めます。
したがって標準偏差(標準誤差)は
$SE(\bar{X})=\sigma/\sqrt{n}$
2. 代入
$\sqrt{64}=8$ なので
$SE=9.6/8=1.2$
小数第1位までで 1.2 です。
3. 意味
個々の測定値は標準偏差 9.6 で散らばりますが、64件の平均にすると不確かさは 1.2 まで縮小します。$n$ を4倍にするとSEは半分、というのが信頼区間の幅と標本サイズの関係の土台です。
4. 混同しやすい量
- 母標準偏差 9.6 をそのまま答える(平均していない)。
- $\sigma/n=9.6/64=0.15$ とする(根号を忘れる)。
- $\sigma\sqrt{n}$ とする(向きが逆)。
正規母集団なら $\bar{X}\sim N(\mu,(1.2)^2)$ です。正規でなくても、$n$ が十分大きければ中心極限定理で近似できます。
標準誤差は「平均の」標準偏差
データのばらつき $\sigma$ と、推定値のばらつき $\sigma/\sqrt{n}$ を名前で区別する。信頼区間の半幅はおおむね $z\times SE$ です。
母分散未知なら $s/\sqrt{n}$ を使い、小標本ではt分布に切り替えます。本問は $\sigma$ 既知なので正規のSEで十分です。
6. 根号の位置だけを見る
母標準偏差そのものを答えるのは、平均していないばらつきです。人数で割って根号を忘れると、分散公式の平方根を取る段階を飛ばしています。平方根を人数に掛けると、向きが逆で不確かさが膨らみます。統計検定二級では、標準誤差は平均の標準偏差、と名前で区別する問題が定番です。信頼区間の半幅、検定統計量の分母、必要人数の逆算の三つに、同じ標準誤差が再利用されます。個々の測定のばらつきと、標本平均の精度を報告書で混在させないでください。
したがって、標準誤差は 1.2 です。