母平均の信頼区間の幅と標本サイズ
分野: 推定
母平均の区間幅が $n$ の平方根に逆比例することを使う概念問題です。計算そのものより、「精度を2倍にするコスト」を正しく見積もれるかが問われます。
1. 幅の公式
母分散既知の両側 $(1-\alpha)$ 信頼区間は
$\bar{x}\pm z_{\alpha/2}\,\sigma/\sqrt{n}$
幅 $W$ は半幅の2倍なので
$W=2z_{\alpha/2}\sigma/\sqrt{n}$
2. n を変えたときの倍率
$z$ と $\sigma$ を固定すると $W\propto 1/\sqrt{n}$ です。幅を半分にするには $\sqrt{n}$ を2倍、つまり $n$ を4倍にします。逆に $n$ を2倍にすると幅は $1/\sqrt{2}\approx0.71$ 倍で、半分までは行きません。
3. 他の因子
信頼水準を上げると $z_{\alpha/2}$ は大きくなり幅は広がります。母分散が大きいほど幅は広がります。幅は信頼水準・分散・n の3つで決まります。
4. 選択肢の検討
- 幅を半分にするにはnを約4倍 → 正しい。$W\propto n^{-1/2}$ の直接の帰結です。
- nを2倍で幅が半分 → 誤り。半分にするには4倍です。
- 信頼水準を上げると幅が狭くなる → 誤り。臨界値が増えて幅は広がります。
- 母分散が大きいほど幅が狭い → 誤り。向きが逆です。
- 幅は信頼水準だけで決まる → 誤り。$\sigma$ と $n$ が明示的に入ります。
誤差を半分にする調査は、件数を4倍にする計画
許容誤差 $E$ に対し $n=(z\sigma/E)^2$ です。E を半分にすると n は4倍、というのがサンプルサイズ設計の基本です。
母分散未知・t区間でも、大標本では同じ平方根則が近似的に成り立ちます。有限母集団修正は2級の本問範囲では使いません。
5. 数値例で倍率を固定する
$\sigma=10$、$z=1.96$、n=100 なら半幅は $1.96$、幅は約3.92です。n=400(4倍)なら半幅0.98、幅約1.96で、確かに半分です。n=200(2倍)なら半幅約1.39で、半分には届きません。
信頼水準を95%から99%に上げると z は1.96から2.58になり、幅は約1.3倍に広がります。「より確かにする」と「より狭くする」は同時には成りません。狭くかつ確かにするにはnを増やすしかありません。
母分散未知のt区間でも、大標本では同じ4倍則が近似的に使えます。許容誤差を半分にする調査コストは、単純に2倍ではない、と覚えてください。
幅 $W\propto 1/\sqrt{n}$ を対数で見ると、nを10倍にしても幅は約0.32倍にしかなりません。精度の要求を少し厳しくすると調査費が急増する、というのが実務的な含意です。信頼水準を上げて幅を狭くしたい、という両立しない要求が出たときは、どちらを優先するかを先に決めてからnを計算します。
設計段階で許容誤差Eを決めると $n=(z\sigma/E)^2$ に代入できます。Eを現行の半分にしたい、という要望はnを4倍にする予算申請と同義です。信頼水準を99%に上げたいという要望は、zの増加分だけさらにnを増やすか、幅を広げるかの選択です。本問の正解は、幅とnの平方根則だけを正しく述べています。
幅を半分にするにはnを4倍、が唯一の正しい倍率です。2倍で半分、水準を上げると狭い、分散が大きいほど狭い、幅は水準だけ、はいずれも公式W∝σ/√nに反します。精度と確かさは同時には無料で手に入りません。調査費の見積もりはこの倍率で先に決めてください。平方根則を忘れると予算を半分に見積もってしまいます。
したがって、正しい記述は「幅を半分にするには標本サイズをおよそ4倍にする」です。