回帰表と残差図から外挿の可否を判断する
分野: 回帰
本問は統合問題です。つなぐ論点は、(1) 回帰表の係数と $R^2$、(2) 残差プロットによる仮定診断、(3) 適用範囲(外挿)です。表だけ見ると「よく当たる有意な直線」、図と範囲を足すと予測は不適切、となります。
1. 表が示すこと
傾き 2.35 は「データ範囲内で、学習時間が1時間増えると平均点が約2.35点高い」という記述です。t=8.39、p<0.001 は $H_0:\beta_1=0$ の棄却です。$R^2=0.76$ は直線が訓練データの変動の76%を説明した、という当てはまりです。これらは因果でも外挿の保証でもありません。
2. 残差図が示すこと
視線は横軸(適合値)に沿って残差の並びを追います。左で正、中央で負、右で再び正のU字は、直線では捉えきれない曲がった関係の典型です。線形性の仮定が疑わしく、中央では過大予測、両端では過小予測になりやすいです。$R^2$ が高くても系統的パターンは残り得ます。
3. 外挿
観測は3〜16時間、予測したいのは32時間で範囲の約2倍です。直線の延長は、学習時間が伸びても得点が無限に増えるという非現実な外挿になり、残差の曲がりを考えるとさらに危険です。予測区間の公式を機械的に適用しても、仮定が崩れた外では名目の95%が保てません。
4. 3論点の接続
表の有意性と高い $R^2$ は「範囲内の直線近似としては説明力がある」ことまでです。診断が不合格なら、その直線で遠くを予測してはいけません。範囲内でも二次項や変換を検討すべき兆候です。残差が正負両方あること自体は平均0なら普通で、無効の証拠ではありません。
5. 選択肢の検討
- 高い $R^2$ と有意なら32時間OK → 誤り。診断と範囲を無視しています。
- 切片有意なら延長可 → 誤り。切片はx=0の平均で、外挿免許ではありません。
- U字+範囲外なので不適切 → 正しい。3要素を接続しています。
- 正負残差で完全無効 → 誤り。符号が混在するのは健全な残差の条件の一つです。
- tが大きければ外挿誤差は無視可 → 誤り。tは傾きが0でない証拠であり、範囲外バイアスを消しません。
回帰の予測は「表・残差・xの範囲」の三点セット
高い $R^2$ を見たら、次に残差のパターンと、予測したいxがひげの内側かを確認する。
漏斗型なら等分散の問題、U字なら線形性の問題、とパターンで処方を変えます。本図はU字なので、まず線形性です。
6. 表・図・範囲を同時に見る
表だけなら「学習時間が効く、説明力76%」と要約できます。図のU字は、同じデータが直線では系統的に外れることを示します。適合値が小さい領域と大きい領域で残差が正、中央で負、は二次の不足を示唆します。32時間は16時間の2倍で、得点が上限100点なら直線 41.2+2.35×32≈116 となり、定義域すら超えます。これも外挿が破綻している合図です。
範囲内(例えば8時間)の記述ですら、U字が強いなら二次項を検討すべきです。ただし本問の選択肢は32時間の予測可否が焦点なので、診断不合格+範囲外、の両方で不可とします。
tが大きいのは「傾き0ではない」証拠です。外挿のバイアス分散は別の項で、tでは相殺されません。
統合の採点ポイントは、高いR²でも残差U字なら線形性が疑わしいこと、32時間が3〜16の外であること、の両方です。どちらか一方だけでも予測は危ういですが、本問は両方が揃っています。切片の有意性やtの大きさは外挿免許になりません。残差の符号混在は平均0の健全条件であり、モデル無効の証拠ではありません。
適合値が40点台と80点台で残差が正、60点付近で負、という並びは、直線が中央で上にずれ両端で下にずれるイメージです。学習時間を伸ばし続けるほど得点が直線的に増える、という仮定がデータ内ですでにくすぶっています。32時間はそのくすぶりを範囲の外まで延長する操作なので、予測として採用できません。
したがって、残差のU字と外挿を理由に予測を不適切とする判断が最も適切です。