青の統計学-DS Playground-

推測のためのデータ収集法

観察研究と実験研究、標本調査法、フィッシャーの3原則、バイアスの識別に関する問題

実験研究と操作可能な処理 レベル1

A市の水産加工工場C社は、新しい殺菌温度プロトコルが製品の一般生菌数を減らすかを検証したい。次のうち、この問いを<strong>実験研究</strong>として立てるために最も本質的な条件はどれか。

解説

実験研究と操作可能な処理

この問題では、実験研究を定義する核が「処理を研究者が操作し、実験単位へ割り当てられること」であることを確認します。菌数の尺度や全数調査かどうかは、実験の定義ではありません。

1. 実験研究の定義

統計学でいう実験研究(実験、比較実験)は、研究者が関心のある処理(treatment)を意図的に動かし、どの実験単位がどの処理を受けるかを設計する研究です。この工場であれば、新しい殺菌温度プロトコルと現行プロトコルを、ロットやラインといった実験単位に割り当て、一定時間後の一般生菌数を比べます。処理が「操作可能」であることが出発点です。

2. なぜ操作可能性が本質なのか

因果の問いは「もしこのロットに新プロトコルを適用したら菌数はどうなったか」という反事実を含みます。研究者が処理を割り当てられると、比較の起点を自分で作れます。割り当てが無作為であれば、既知・未知の交絡が群間で平均的に均衡しやすくなります。逆に、過去ロットの温度と菌数を眺めるだけでは、温度は当時の原料や季節、設備の都合で決まっており、研究者が動かす処理ではありません。それは観察研究です。

実験かどうかを決めるチェック
  • 処理は研究者が変えられるか(プロトコル、温度、教材、薬など)
  • 実験単位(ロット、人、店舗)へ、その処理を割り当てられるか
  • 比較の対照(現行法、偽薬、何もしない)があるか

「数値が連続か」「全員を調べたか」は、この定義の代わりになりません。

3. 対照と割付の実務

新プロトコルだけを全部のラインに導入して「菌数が下がった」と見る方法は、季節や原料ロットの変化と処理効果が混ざります。現行プロトコルを受ける対照群(または対照ライン)を同時に置くことで、背景の変動を差し引きやすくなります。さらに、どのラインが新プロトコルを受けるかを現場の勘ではなく乱数で決めると、状態の良いロットだけが新法に回る、という選択を避けられます。

4. 各選択肢の検討

  1. 「過去ロットを回帰すれば実験になる」→ 誤り。過去データの回帰は観察研究の分析です。処理を操作していません。関連や予測はできても、実験にはなりません。
  2. 「処理を実験単位に割り当て、操作できる」→ 正しい。実験研究の定義そのものです。
  3. 「連続量であること」→ 誤り。欠点数や合格・不合格のような離散結果でも実験は成立します。尺度は分析手法の選択に影響しますが、実験かどうかは決めません。
  4. 「全数調査にすること」→ 誤り。全数調査は母集団の全員(全ロット)を調べる話であり、処理の操作とは別次元です。実験は標本の一部のロットでも行えます。
  5. 「良さそうなロットを新プロトコルに回す」→ 誤り。これは研究者が処理を「操作」してはいますが、割付が系統的に偏っています。状態の良いロットに新法が集中すれば、菌数の差はプロトコルではなく原料の差になり得ます。実験として比較可能にするには、偏りのない割付(典型的には無作為割付)が必要です。

統計検定2級では、観察研究と実験研究の分岐を「処理を研究者が割り当てたか」で読みます。

問題 2/20
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