母比率の必要標本サイズ概算
この問題では、母比率の区間推定に必要な標本サイズを、保守的な $p=0.5$ で概算します。推定編の母平均の標本サイズ(寿命時間など)とは数値も設定も異なります。
1. 公式の意味
標本比率 $\hat{p}$ の標準誤差は、十分大きな $n$ で $\sqrt{p(1-p)/n}$ です。95%信頼区間の半幅を $E$ 以下にしたいとき、
$$z \sqrt{\dfrac{p(1-p)}{n}} \le E$$
を $n$ について解くと、問題文の公式になります。$z=1.96$ は標準正規分布の両側2.5%点です。
2. なぜ $p=0.5$ か
$p(1-p)$ は $p=0.5$ で最大値 $0.25$ を取ります。過去情報がないとき、$n$ を大きめに見積もる保守的な選択です。真の $p$ が0.5から離れていれば、実際に必要な $n$ はこれより小さくて済みますが、足りなくなるリスクを避けます。
代入する値
- $z = 1.96$
- $p = 0.5$(したがって $1-p=0.5$)
- $E = 0.04$(許容誤差4ポイント)
3. 算術(監査用)
まず $z^{2}$ を計算します。
$$1.96^{2} = 1.96 \times 1.96 = 3.8416$$
次に $p(1-p)$ です。
$$0.5 \times 0.5 = 0.25$$
分子は
$$3.8416 \times 0.25 = 0.9604$$
分母は
$$E^{2} = 0.04^{2} = 0.0016$$
したがって
$$n = \dfrac{0.9604}{0.0016} = 600.25$$
4. 切り上げ
標本サイズは整数であり、600では $E$ をわずかに超える計算になるため、問題の指示どおり切り上げます。
$$n = \lceil 600.25 \rceil = 601$$
確認:$n=601$ のときの半幅は $1.96\sqrt{0.25/601} \approx 1.96\times 0.0204 \approx 0.03998$ で、$E=0.04$ 以下です。$n=600$ では $1.96\sqrt{0.25/600} \approx 0.040008$ と、わずかに超えます。
この公式は無限母集団(または抽出率が十分小さい)近似です。有限母集団修正やネイマン配分は使いません。無回答が見込まれる場合は、必要有効回答601を回収率で割って発送数を別に設計します。発送を増やすことと、無回答バイアスが消えることは別問題です。
5. 解釈の厚み
601人は「有効回答」の目安です。回収率70%を見込むなら発送は約860通です。発送を増やしても、自転車通勤しない人が答えない、といった無回答があれば比率はずれます。必要 $n$ の計算は、無作為抽出が偏りなく回収されたあとの精度の話です。
$E=0.04$ は、推定値が例えば0.22なら区間の半幅が約4ポイント、という要求です。政策で「2割を超えたか」を見たいなら、この精度で足りるかは別判断です。半分の誤差にしたければ $n$ は約4倍になり、次問のスケーリングにつながります。
$z$ を2に近似すると $n=0.25\times 4 / 0.0016=625$ となり、やや大きめです。本問は $z=1.96$ を明示しているので、3.8416を使った600.25の切り上げ601が答えです。
計算の途中値 3.8416、0.9604、0.0016、600.25 を残しておくと、検算が容易です。$1.96^{2}$ を4に丸めると625になり、本問の指示とずれます。指定された $z=1.96$ をそのまま二乗するのが正確です。
したがって、切り上げ後の必要標本サイズは601です。