許容誤差半分でnは何倍
この問題では、母比率の標本サイズ公式から、許容誤差と $n$ のスケーリングだけを取り出します。具体的な $z$ や $p$ の代入は不要で、$n \propto 1/E^{2}$ を使います。
1. 比例関係の確認
公式
$$n = \dfrac{z^{2} p(1-p)}{E^{2}}$$
で、$z$ と $p$ を固定すると、分子は定数です。よって
$$n \propto \dfrac{1}{E^{2}}$$
です。許容誤差を小さくする(より精密にしたい)と、必要な $n$ は誤差の2乗に反比例して増えます。これは母平均の公式 $n=(z\sigma/E)^{2}$ でも同じ構造です。
2. $E$ を半分にする
元の許容誤差を $E$、新しい許容誤差を $E' = E/2$ とします。対応する標本サイズを $n$、$n'$ とすると
$$\dfrac{n'}{n} = \dfrac{1/(E')^{2}}{1/E^{2}} = \dfrac{E^{2}}{(E/2)^{2}} = \dfrac{E^{2}}{E^{2}/4} = 4$$
したがって $n' = 4n$ です。4ポイントから2ポイントへ、という数値例でも、$0.04^{2}=0.0016$、$0.02^{2}=0.0004$ で分母が1/4になるため、$n$ は4倍です。
精度を2倍にすると人数は4倍
許容誤差を半分にするのは、区間の幅を半分にする要求です。標準誤差はおおむね $1/\sqrt{n}$ で小さくなるので、$1/\sqrt{n}$ を半分にするには $n$ を4倍にします。直感に反して「少し精度を上げるだけなのに人数が跳ねる」のが標本サイズ設計の要点です。
3. 数値での検算(017の続き)
017では $E=0.04$ で $n=600.25$(切り上げ601)でした。同じ $z$、$p$ で $E=0.02$ とすると
$$n = \dfrac{3.8416 \times 0.25}{0.02^{2}} = \dfrac{0.9604}{0.0004} = 2401$$
$2401 / 600.25 = 4$ です。切り上げの有無で整数比が4からわずかにずれることはありますが、比例関係そのものは4倍です。本問は倍率を問うので、答えは4です。
4. 実務上の注意
4倍の発送は費用・時間・回答負担を大きくします。許容誤差をどこまで狭めるかは、政策判断とセットです。また $n$ を4倍にしても、無回答や測定バイアスは消えません。精度(ばらつき)だけが改善し得る、という限界を017・015と接続して理解します。
5. 他のパラメータを動かしたとき
$E$ 以外では、$z$ を大きくする(信頼水準を上げる)と $n$ は $z^{2}$ に比例して増えます。99%なら $z\approx 2.58$ で、95%の $(2.58/1.96)^{2}\approx 1.73$ 倍です。誤差を半分にする4倍ほどではありませんが、無視できません。$p$ が0.5から離れると $p(1-p)$ が小さくなり、$n$ は減ります。過去情報があれば保守的な0.5を避けられます。
「精度を2倍」と口で言うとき、人は $n$ を2倍したくなります。標準誤差が $1/\sqrt{n}$ なので、2倍の精度(半分の誤差)には4倍の $n$ が必要です。この2乗則を外すと、予算見積もりが半分になります。L3で問うのはこの比例関係です。
誤差を3分の1にすると倍率は9、10分の1にすると100です。$1/E^{2}$ は急激に増えます。「もう少しだけ精度を」が調査予算を飲み込む理由が、この2乗則です。整数4が答えです。
6. 二乗則を外したときの実務的な失敗
精度を二倍にしたい、と口で言うとき、発送通数を二倍すれば足りると見積もりがちです。標準誤差は人数の平方根に反比例するので、誤差を半分にするには人数を四倍にしなければなりません。予算を二倍しか取らないと、目標の精度に届かず、調査をやり直すことになります。統計検定二級では、母平均でも母比率でも、許容誤差と標本サイズの二乗関係が繰り返し出ます。信頼水準だけを九十五パーセントから九十九パーセントへ上げる倍率は約一・七倍で、誤差を半分にする四倍ほどではありません。どちらを動かすかを先に決めてから人数を逆算します。人数を四倍にしても、無回答や測定の偏りは消えません。精度(ばらつき)だけが改善し得る、という限界を、前問の必要人数と無回答の話と接続して理解します。誤差を三分の一にすると倍率は九、十分の一にすると百です。もう少しだけ精度を、という言葉が調査予算を飲み込む理由が、この二乗則です。
したがって、必要な標本サイズは元の4倍です。