回帰の係数表は、点推定(係数)と不確かさ(標準誤差・t・p)をセットで読みます。係数が大きいことと、0と区別できること(統計的有意)は別です。本問は説明変数の有意性に焦点を当てます。
各列の意味
- 係数: 他の変数を固定したとき、その変数が1単位増えたときの売上の平均的な変化
- 標準誤差: 係数の標本ばらつき
- t値: 係数÷標準誤差。0からの離れ具合
- p値: 真の係数が0という帰無の下で、これ以上極端なtが出る確率
Step 1: 有意水準5%でpを見る
広告費は $p=0.000\lt 0.05$ なので、係数0という帰無を棄却できます。湿度は $p=0.586>0.05$ なので、この標本では0と区別できません。切片の $p=0.000$ は「広告費も湿度も0のときの平均売上」が0かどうかであり、説明変数の効果ではありません。
Step 2: 係数の解釈(参考)
広告費の2.15は、湿度を固定して広告費が1千円増えると、売上の予測が平均2.15万円増える、という傾きです。湿度の−0.06は符号こそ負ですが、標準誤差0.11に対して小さく、tは−0.55です。符号だけを「湿度が売上を下げる証拠」と読むのは、p値を無視した過解釈です。
Step 3: 選択肢の検討
- 湿度のみ: 符号が負でもp=0.586で有意ではありません。広告費の方が有意です。
- 両方: 表に載ることと有意であることは違います。湿度は棄却できません。
- 広告費のみ: 正しいです。説明変数のうち5%で有意なのは広告費です。
- 切片が有意なので湿度も効く: 切片と説明変数の検定は別です。
- pが大きい方が重要: pが大きいのは「0と区別しにくい」方向です。重要性の指標ではありません。
係数表の読み順
- どの行が説明変数で、どれが切片かを分ける
- p値を有意水準と比べる
- 有意なら係数の符号と単位で実質的な向きを述べる
有意でない変数を「効果がない」と断言するのは行き過ぎです。効果があるとしても、この標本では検出できていない、が正確です。
湿度が非有意でも、交絡調整のために残す判断はあり得ます。本問が聞いているのは、五パーセントで有意な説明変数はどれか、という読み取りです。切片が有意なことは、説明変数が効いていることの証拠ではありません。ピー値が大きいほど重要、という読みは逆です。統計検定二級の回帰では、係数表の行を切片と説明変数に分け、ピー値を有意水準と比べる手順が定番です。表に載っているから両方効いている、はソフトウェア出力の典型誤読です。
したがって、有意水準5%で有意な説明変数は広告費のみです。
t値の検算と実務的な大きさ
広告費のtは $2.15/0.48\approx 4.48$、湿度は $-0.06/0.11\approx -0.55$ で表と一致します。$|t|$ がおよそ2を超えると両側5%で有意になりやすい、という粗い目安でも、湿度は遠すぎます。切片18.40は「広告費0・湿度0のときの平均売上」で、湿度0%がデータの外なら解釈を急ぐ必要はありません。
「表に載っている変数はすべて効いている」はソフトウェア出力の典型誤読です。出力は推定した項を全部並べるだけで、取捨選択はp値・信頼区間・理論で行います。逆に、湿度が非有意でも、交絡調整のために残す判断はあり得ます。本問が聞いているのは「5%で有意な説明変数はどれか」という読み取りです。
重回帰では、単回帰のとき有意だった変数が、別変数を入れると非有意になることがあります。それは偏効果(他を固定)に切り替わるためです。本表はすでに2変数同時推定なので、広告費2.15は湿度固定下の傾きです。