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離散分布:二項・ポアソン・幾何・負の二項

Stage 2 — 第4章 | 統計検定準1級チートシート 推定学習時間:70〜90分 | 難易度:★★★☆☆


このページで押さえること

離散分布は、公式を丸暗記するより「何を数えているか」で分類すると安定します。 固定回数の成功数、非復元抽出の成功数、まれな発生回数、初成功までの待ち時間、$r$回成功までの試行回数は、それぞれ別の分布です。

このページを終えると、こんなことができるようになります:

  • 問題文から二項、超幾何、ポアソン、幾何、負の二項を選べる
  • 各分布の平均・分散を構造から説明できる
  • 二項分布のポアソン近似・正規近似を判断できる
  • 多項分布の共分散が負になる理由を説明できる
  • 非復元抽出と独立試行を混同しない

1. 離散分布は「数えているもの」で選ぶ

離散分布の使い分けは、次の対応で整理します。

分布 何を数えるか 重要条件
ベルヌーイ 1回の成功/失敗 成功確率 $p$
二項 固定回数 $n$ の成功数 独立、同じ成功確率
超幾何 非復元抽出の成功数 戻さずに取る
ポアソン 一定時間・領域の発生回数 まれな事象、独立増分
幾何 初成功までの試行回数 成功確率一定
負の二項 $r$回成功までの試行回数または失敗数 定義の違いに注意
多項 複数カテゴリの度数 合計回数が固定

試験では、「戻さずに」「初めて成功」「一定時間に」「$n$回中」のような言葉が分布選択の手がかりになります。

📘 前提知識:待ち時間と発生回数は別の確率変数

「10回中何回成功するか」は二項分布、「何回目で初めて成功するか」は幾何分布です。 同じベルヌーイ試行から出てきても、数えている対象が変わると分布も変わります。 問題文を読んだら、まず試行回数が固定なのか、成功まで待つのかを分けます。


2. ベルヌーイ分布と二項分布

$X\sim Bernoulli(p)$ は、成功なら1、失敗なら0を取る確率変数です。

\[ P(X=1)=p,\qquad P(X=0)=1-p \]

平均と分散は、

\[ E[X]=p,\qquad Var(X)=p(1-p) \]

です。

独立なベルヌーイ変数 $X_1,\dots,X_n$ の和

\[ S=\sum_{i=1}^{n}X_i \]

は、二項分布に従います。

\[ S\sim Binomial(n,p) \]

確率質量関数は、

\[ P(S=k)=\binom{n}{k}p^k(1-p)^{n-k} \qquad (k=0,1,\dots,n) \]

です。 平均と分散は、独立和として読めばすぐに出ます。

\[ E[S]=\sum_{i=1}^{n}E[X_i]=np \]
\[ Var(S)=\sum_{i=1}^{n}Var(X_i)=np(1-p) \]

二項分布は「固定回数の独立試行で成功回数を数える」分布です。 成功回数が固定されているのではなく、試行回数が固定されている点に注意します。


3. 超幾何分布:戻さずに取る

母集団サイズを $N$、成功個数を $M$、抽出数を $n$ とします。 戻さずに $n$ 個抽出し、その中の成功数を $X$ とすると、$X$ は超幾何分布に従います。

\[ P(X=k)= \frac{\binom{M}{k}\binom{N-M}{n-k}}{\binom{N}{n}} \]

二項分布との違いは、抽出のたびに成功確率が変わることです。 戻さずに取るため、各試行は独立ではありません。

平均は、

\[ E[X]=n\frac{M}{N} \]

です。 分散は、

\[ Var(X)=n\frac{M}{N}\left(1-\frac{M}{N}\right)\frac{N-n}{N-1} \]

です。 最後の

\[ \frac{N-n}{N-1} \]

が有限母集団補正に対応します。 非復元抽出では、戻して取る場合よりもばらつきが小さくなります。


4. ポアソン分布:一定時間・一定領域の発生回数

$X\sim Poisson(\lambda)$ の確率質量関数は、

\[ P(X=k)=e^{-\lambda}\frac{\lambda^k}{k!} \qquad (k=0,1,2,\dots) \]

です。 平均と分散はどちらも

\[ E[X]=\lambda,\qquad Var(X)=\lambda \]

です。

ポアソン分布は、一定時間・一定領域で発生する回数のモデルとして使います。 ポアソン過程では、長さ $t$ の区間の発生回数は

\[ N(t)\sim Poisson(\lambda t) \]

です。

二項分布の極限としても出ます。 $n$ が大きく、$p$ が小さく、$np=\lambda$ を保つと、

\[ Binomial(n,p)\approx Poisson(\lambda) \]

です。 「まれな事象の回数」はこの近似を疑います。


5. 幾何分布と負の二項分布

幾何分布は、初成功までの試行回数を表します。 $X$ を「初めて成功する試行番号」とすれば、

\[ P(X=k)=(1-p)^{k-1}p \qquad (k=1,2,\dots) \]

です。 平均と分散は、

\[ E[X]=\frac{1}{p},\qquad Var(X)=\frac{1-p}{p^2} \]

です。

幾何分布の重要性は無記憶性です。

\[ P(X>s+t|X>s)=P(X>t) \]

これは、すでに失敗が続いたことが、今後の待ち時間の分布を変えないことを意味します。

負の二項分布は、$r$回成功するまでの試行回数、または失敗回数を表します。 定義が2通りあるため、問題文の「試行回数」か「失敗数」かを必ず確認します。 $r$回目の成功が $k$ 回目の試行で起きる確率は、

\[ P(X=k)=\binom{k-1}{r-1}p^r(1-p)^{k-r} \qquad (k=r,r+1,\dots) \]

です。


6. 多項分布

1回の試行で $m$ 個のカテゴリのどれかが起き、カテゴリ確率が $p_1,\dots,p_m$ であるとします。 $n$ 回の独立試行で各カテゴリの度数を $X_1,\dots,X_m$ とすると、多項分布に従います。

\[ P(X_1=x_1,\dots,X_m=x_m) = \frac{n!}{x_1!\cdots x_m!}p_1^{x_1}\cdots p_m^{x_m} \]

ただし、

\[ \sum_{j=1}^{m}x_j=n,\qquad \sum_{j=1}^{m}p_j=1 \]

です。 各成分の平均と分散は、

\[ E[X_j]=np_j,\qquad Var(X_j)=np_j(1-p_j) \]

です。 異なるカテゴリの共分散は、

\[ Cov(X_i,X_j)=-np_ip_j\qquad (i\ne j) \]

です。 合計回数 $n$ が固定されているため、あるカテゴリが増えると他のカテゴリは相対的に減りやすくなります。

次の図では、離散分布を「何を数えているか」と「試行がどう生成されるか」で分ける。

ベルヌーイ試行の和、非復元抽出、待ち時間、極限近似から二項分布、超幾何分布、幾何分布、負の二項分布、ポアソン分布を選ぶ関係図

離散分布は、固定回数で数えるのか、戻さずに取るのか、成功まで待つのかで選ぶ。

図の分岐を使うと、固定回数なら二項、非復元なら超幾何、待ち時間なら幾何・負の二項、まれな発生回数ならポアソンという判断に戻れる。


7. 問題文トリガー辞書

問題文の表現 判断する分布 使う式 確認条件 典型ミス
「1回の成功/失敗」 ベルヌーイ $p,1-p$ 0/1か 二項の$n$を付ける
「$n$回中$k$回成功」 二項 $\binom{n}{k}p^k(1-p)^{n-k}$ 独立・同一$p$ 非復元に使う
「戻さずに抽出」 超幾何 組合せ比 母集団サイズが有限 二項分布にする
「一定時間の発生回数」 ポアソン $e^{-\lambda}\lambda^k/k!$ 発生率が一定か 待ち時間と混同する
「初めて成功するまで」 幾何 $(1-p)^{k-1}p$ 試行回数の定義 失敗回数版と混同
「$r$回成功するまで」 負の二項 $\binom{k-1}{r-1}p^r(1-p)^{k-r}$ 試行回数か失敗数か $r$と$k$を逆にする
「複数カテゴリの度数」 多項 多項係数 合計$n$固定 各カテゴリを独立二項にする

8. 典型ミス・ひっかけ

ミス なぜ危ないか 防ぎ方
二項と超幾何を混同する 独立性と分散が変わる 「戻す/戻さない」を先に読む
ポアソン分布で平均と分散を別にする ポアソンでは同じ $\lambda$ が平均でも分散でもあると確認
幾何分布の定義を取り違える 支持集合が $0,1,\dots$ か $1,2,\dots$ で変わる 問題文の「失敗数」「試行回数」を見る
負の二項で$r$回目成功の位置を忘れる 組合せがずれる 最後の試行は成功と固定する
多項分布のカテゴリ度数を独立とする 合計$n$固定で負の共分散がある 共分散 $-np_ip_j$ を確認

9. ここで1問

このページの確認問題

  • 確率と確率分布の演習へ
  • まず解く: 二項分布、ポアソン分布、超幾何分布、負の二項分布
  • 目標: 問題文から分布を先に選べる

10. 解法テンプレ

離散分布の問題では、次の順で処理します。

  1. 何を数えているかを確認する。
  2. 試行回数が固定か、成功回数が固定かを見る。
  3. 復元抽出か非復元抽出かを見る。
  4. 発生回数か待ち時間かを分ける。
  5. 支持集合が $0$ からか $1$ からかを確認する。
  6. 近似を使う場合は、二項→ポアソン、二項→正規の条件を確認する。

11. 関連教材

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12. 次に読むページ

次は、連続分布と多変量正規分布を扱います。 離散分布が「個数」を扱うのに対して、連続分布では密度、変数変換、裾の重さ、標本分布との接続が重要になります。