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分散分析・実験計画法

Stage 4 — 第4章 | 統計検定準1級チートシート 推定学習時間:100〜120分 | 難易度:★★★★☆


このページで押さえること

ANOVAは「平均の差をF検定する手法」としてだけ覚えると弱いです。 本質は、全体のばらつきを要因で説明される平方和と誤差平方和に分解し、設計に応じた自由度で比較することです。 実験計画では、ランダム化、反復、ブロック化により、比較可能性と精度を確保します。

このページを終えると、こんなことができるようになります:

  • 一元配置ANOVAの平方和分解とF統計量を説明できる
  • 二元配置で主効果と交互作用を区別できる
  • 分散分析表の平方和、自由度、平均平方、F値を読める
  • ブロック化、乱塊法、要因計画の目的を説明できる
  • 一部実施要因計画と直交配列を、効率的な実験設計として理解できる

2級ではここまで、準1級ではここが増える

2級では、分散分析は主に一元配置で「3群以上の平均差をF検定する」ところまでです。平方和を群間と群内に分けてF値を作る、という基本の流れが中心になります。

準1級では、ここに要因を増やす視点実験そのものを設計する視点が加わります。

観点 2級でのレベル 準1級で増える点
要因数 1要因(群の比較)が中心 2要因以上+交互作用
平方和 群間・群内の2分割 主効果・交互作用・ブロックへ細分
設計 (ほぼ扱わない) ランダム化・反復・局所管理・一部実施

つまり準1級では「F値を計算する」で止まらず、どんな設計でデータを取れば平方和分解が意味を持つかまで問われます。差がつくのは、交互作用を主効果で塗りつぶさない判断と、ブロック化・一部実施計画の目的(精度向上か実験数削減か)を取り違えない注意です。


1. 一元配置ANOVA

$a$ 個の群があり、群 $i$ の観測を

\[ Y_{ij}=\mu+\alpha_i+\varepsilon_{ij} \]

とします。 ここで $\alpha_i$ は群効果、$\varepsilon_{ij}$ は誤差です。 帰無仮説は、

\[ H_0:\alpha_1=\cdots=\alpha_a=0 \]

または全群平均が等しいことです。

全平均を $\bar Y_{\cdot\cdot}$、群平均を $\bar Y_{i\cdot}$ とすると、全平方和は

\[ SST=\sum_i\sum_j(Y_{ij}-\bar Y_{\cdot\cdot})^2 \]

です。 群間平方和は

\[ SSA=\sum_i n_i(\bar Y_{i\cdot}-\bar Y_{\cdot\cdot})^2 \]

群内平方和は

\[ SSE=\sum_i\sum_j(Y_{ij}-\bar Y_{i\cdot})^2 \]

です。 平方和分解は、

\[ SST=SSA+SSE \]

です。

📘 前提知識:平方和分解は「ばらつきの原因分け」

ANOVAでは、全体のばらつきを群間差で説明できる部分と、群内に残る誤差へ分けます。 要因が増えると、主効果、交互作用、誤差に分けて読みます。 実験計画は、この分解が意味を持つようにデータの取り方を設計する作業です。


2. F統計量

📘 前提知識:F統計量は「説明できたばらつき ÷ 説明できないばらつき」

群間平均平方 $MSA$ は「群の違いで説明できたばらつき」、誤差平均平方 $MSE$ は「群の中に残った、説明できないばらつき」です。 もし群に本当の差がなければ、両者はどちらも誤差分散を測っているだけなので、比は1の近くに散らばります。 群の差が大きいほど分子だけが膨らみ、比が1より大きくなる——これがF検定の発想です。

群効果の自由度は $a-1$、誤差自由度は $n-a$ です。 平均平方は、

\[ MSA=\frac{SSA}{a-1} \]
\[ MSE=\frac{SSE}{n-a} \]

です。 F統計量は、

\[ F=\frac{MSA}{MSE} \]

で、帰無仮説の下で

\[ F\sim F_{a-1,n-a} \]

に従います。

この式は「群間で説明できた1自由度あたりのばらつきが、誤差1自由度あたりのばらつきの何倍か」を表します。 帰無仮説(群差なし)が正しいとき分子・分母はともに $\sigma^2$ の不偏推定なので比は1付近に、群差があると分子が大きくなり比が1を上回ります。

F検定は、群間のばらつきが群内の誤差ばらつきに比べて大きいかを見ています。 正規性、等分散性、独立性が基本仮定で、特に等分散の崩れはF検定の信頼性を直接損ないます。

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3. 分散分析表

ANOVAの計算は、分散分析表で整理します。

変動要因 平方和 自由度 平均平方 F値
群間 $SSA$ $a-1$ $MSA$ $MSA/MSE$
誤差 $SSE$ $n-a$ $MSE$
全体 $SST$ $n-1$

表では、平方和を自由度で割って平均平方を作り、要因の平均平方を誤差平均平方で割ります。 平方和をそのまま割らない点が重要です。


4. 二元配置ANOVAと交互作用

2つの要因 $A,B$ を考えると、

\[ Y_{ijk}=\mu+\alpha_i+\beta_j+(\alpha\beta)_{ij}+\varepsilon_{ijk} \]

です。 ここで $(\alpha\beta)_{ij}$ は交互作用です。

交互作用があるとは、要因 $A$ の効果が要因 $B$ の水準によって変わることです。 主効果だけを見ると、交互作用を見落とすことがあります。

平方和は概念的に、

\[ SST=SSA+SSB+SSAB+SSE \]

へ分解されます。 各要因と交互作用について、平均平方を誤差平均平方で割ってF検定します。


5. ブロック化と乱塊法

ブロック化は、反応に影響しそうだが主要な関心ではない要因をブロックとしてそろえる設計です。 ブロック内で処理を比較することで、ブロック間のばらつきを誤差から取り除けます。

乱塊法では、各ブロック内で処理をランダムに割り付けます。 モデルは概念的に、

\[ Y_{ij}=\mu+\tau_i+\beta_j+\varepsilon_{ij} \]

です。 ここで $\tau_i$ は処理効果、$\beta_j$ はブロック効果です。

ブロック化の目的は、処理比較の精度を上げることです。 ブロック効果そのものを検定したいとは限りません。

次の図では、二元配置ANOVAを平均プロットと平方和分解の両方から見る。

二元配置ANOVAで主効果と交互作用を線の平行性で示し、全平方和を要因平方和、交互作用平方和、誤差平方和へ分解する図

交互作用は、片方の要因の効果がもう片方の水準によって変わることで、平均プロットでは線が平行でない形として現れる。

線が平行でなければ交互作用を疑う。平方和では、要因A、要因B、交互作用、誤差に分け、それぞれ平均平方を作ってF検定する。

次の図では、ブロック化で誤差を小さくする発想と、完全実施・一部実施要因計画の違いを見る。

ブロック化、乱塊法、完全実施要因計画、一部実施要因計画を実験配置と実験数で比較する図

ブロック化は説明したい要因ではないばらつきを誤差から外し、一部実施要因計画は実験数を減らす代わりに交絡を受け入れる。

実験計画は、用語よりも設計上の目的で分けると覚えやすい。ブロック化はばらつきを生む要因を切り出す操作、乱塊法は各ブロック内で処理をランダムに割り付ける設計である。


6. 実験計画の基本原則

実験計画の基本原則は、ランダム化、反復、局所管理です。

原則 意味 目的
ランダム化 処理割付をランダムにする 系統的な偏りを防ぐ
反復 同じ条件で複数観測する 誤差分散を推定する
局所管理 似た条件をブロック化する 誤差を小さくする

統計的検定は、設計が適切であることを前提にしています。 ランダム化されていない比較では、p値だけで因果効果を主張できません。


7. 要因計画と一部実施要因計画

複数の要因を同時に扱う設計を要因計画と呼びます。 たとえば2水準の要因が $k$ 個ある完全実施要因計画では、

\[ 2^k \]

通りの組合せを実験します。

要因数が多いと実験数が急増します。 そこで、一部の組合せだけを実施する一部実施要因計画を使います。 これは実験数を減らせる一方、主効果と交互作用が交絡する可能性があります。

準1級では、交絡構造を細かく展開するより、「実験数削減と効果の混同のトレードオフ」を押さえます。


8. 直交配列

直交配列は、複数要因の水準組合せをバランスよく配置する表です。 各要因の水準が均等に現れ、要因間の組合せも一定のバランスを保つよう設計されます。

直交性により、効果の推定が他の要因に偏りにくくなります。 ただし、すべての交互作用を自由に推定できるとは限りません。 どの効果を重視し、どの交互作用を無視できるかという設計判断が必要です。


9. 小さな計算例:一元配置の分散分析表を作る

平方和分解からF値までを、3群・各3観測の小さなデータで一通りたどります。

観測値 群平均 $\bar Y_{i\cdot}$
1 2, 4, 6 4
2 4, 6, 8 6
3 6, 8, 10 8

全体の平均は $\bar Y_{\cdot\cdot}=6$、群数 $a=3$、総数 $n=9$ です。

群間平方和は、群平均と全平均の差から、

\[ SSA=\sum_i n_i(\bar Y_{i\cdot}-\bar Y_{\cdot\cdot})^2 =3\{(4-6)^2+(6-6)^2+(8-6)^2\}=3\times 8=24 \]

群内平方和は、各観測と所属群平均の差から、

\[ SSE=\sum_i\sum_j(Y_{ij}-\bar Y_{i\cdot})^2=8+8+8=24 \]

です(各群とも偏差は $-2,0,2$ なので平方和は $8$)。よって $SST=SSA+SSE=48$ で、全平均からの偏差を直接二乗した値とも一致します。

自由度は群間 $a-1=2$、誤差 $n-a=6$ なので、平均平方とF値は、

\[ MSA=\frac{24}{2}=12,\quad MSE=\frac{24}{6}=4,\quad F=\frac{MSA}{MSE}=\frac{12}{4}=3 \]

です。これを分散分析表にまとめると次のようになります。

変動要因 平方和 自由度 平均平方 F値
群間 24 2 12 3
誤差 24 6 4
全体 48 8

$F_{2,6}$ の上側5%点は約 $5.14$ なので、$F=3$ では有意水準5%で帰無仮説を棄却できません。 平方和をそのまま比べず、必ず自由度で割って平均平方にしてから比を取る点が、この計算例の要です。


10. 問題文トリガー辞書

問題文の表現 選ぶ考え方 見る量 典型ミス
「3群以上の平均差」 一元配置ANOVA $F=MSA/MSE$ t検定を繰り返す
「2つの要因」 二元配置ANOVA 主効果・交互作用 交互作用を無視
「ブロック」 乱塊法 ブロック平方和 ブロックを処理効果と混同
「分散分析表」 平方和分解 SS, df, MS, F 平均平方を作らない
「実験数を減らす」 一部実施要因計画 交絡 すべての効果が推定可能と思う
「直交配列」 バランス設計 水準組合せ 魔法の自動最適化と考える

11. 典型ミス・ひっかけ

ミス なぜ危ないか 防ぎ方
多群比較でt検定を総当たりする 第一種の過誤が膨らむ ANOVA後に多重比較
交互作用があるのに主効果だけ解釈する 平均化で効果が隠れる 交互作用を先に確認
平方和と平均平方を混同する F値が変わる SSをdfで割ってMS
ブロック化を標本数増加と同一視する 誤差制御の設計 ブロック内比較を見る
一部実施計画で交絡を無視する 効果推定が混ざる どの効果を犠牲にしたか確認

12. 解法テンプレ

分散分析・実験計画の問題は、次の順で処理します。

  1. 要因の数を数える(1要因なら一元配置、2要因なら主効果+交互作用)。
  2. データ構造から平方和を分解する(全体=群間/主効果/交互作用+誤差)。
  3. 各要因の自由度を決める(群間 $a-1$、誤差 $n-a$ など)。
  4. 平方和を自由度で割って平均平方を作る。
  5. 要因の平均平方を誤差平均平方で割り、F値を $F_{df_1,df_2}$ と比較する。
  6. 設計を問われたら、ブロック化(精度向上)か一部実施(実験数削減)かを目的で判断する。
  7. ランダム化の有無を確認し、因果主張が設計に裏打ちされているかを見る。

13. ここで1問

分散分析表の組み立てを確認したら、演習で「設計に応じて平方和と自由度をどう割り当てるか」を練習します。

このページの確認問題

  • 統計学応用 実験計画法
  • まず解く: 一元配置、二元配置、分散分析表、交互作用、ブロック
  • 目標: 設計に応じて平方和と自由度を組み立てられる

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14. 次に読むページ

次は、標本調査と有限母集団を扱います。 実験で割り付けを設計する発想から、調査で抽出を設計する発想へ進みます。