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分割表・対数線形モデル・グラフィカルモデル

Stage 5 — 第4章 | 統計検定準1級チートシート 推定学習時間:90〜110分 | 難易度:★★★★☆


このページで押さえること

分割表は、カテゴリ変数同士の関連を扱う基本形式です。 2級ではカイ二乗検定が中心ですが、準1級ではオッズ比、残差分析、対数線形モデル、条件付き独立、グラフィカルモデルまで接続して理解する必要があります。

このページを終えると、こんなことができるようになります:

  • 2×2表のオッズ比、リスク比、ファイ係数を区別できる
  • カイ二乗検定の残差を使って、どのセルが効いているかを読める
  • 対数線形モデルをセル期待度数のログ線形モデルとして説明できる
  • 階層モデルと交互作用項の意味を説明できる
  • 条件付き独立とグラフィカルモデルの基本を説明できる

2級ではここまで、準1級ではここが増える

2級では、分割表の関連は主にカイ二乗検定(独立性の検定)で「関連があるか/ないか」を判定するところまでが中心でした。

準1級では、ここに「関連の向きと強さ(オッズ比・連関係数)」「どのセルが効いているか(残差分析)」「期待度数の構造をモデル化する(対数線形モデル)」「第三変数を条件にした独立(条件付き独立・グラフィカルモデル)」が加わります。

観点 2級でのレベル 準1級で増える点
関連の有無 カイ二乗検定 オッズ比・リスク比で向きと強さを測る
関連の中身 全体の検定 残差分析でセル単位の寄与を読む
構造のモデル化 (ほぼ扱わない) 対数線形モデル・条件付き独立・グラフィカルモデル

つまり準1級では「独立かどうか」で止まらず、関連の強さ・方向・どのセルが効くか・第三変数で関連がどう変わるかを区別して読むことが問われます。


1. 2×2表とオッズ比

2×2分割表を考えます。

疾患あり 疾患なし
曝露あり $a$ $b$
曝露なし $c$ $d$

曝露ありのオッズは

\[ \frac{a}{b} \]

曝露なしのオッズは

\[ \frac{c}{d} \]

です。 オッズ比は、

\[ OR=\frac{a/b}{c/d}=\frac{ad}{bc} \]

です。 $OR=1$ なら関連なし、$OR>1$ なら曝露ありで疾患オッズが高いと読みます。

リスク比は

\[ RR=\frac{a/(a+b)}{c/(c+d)} \]

です。 オッズ比は「曝露ありのオッズ」が「曝露なしのオッズ」の何倍かを表し、$1$ を境に向きが分かれます。 $ad/bc$ という形は対角の積の比で、行と列を入れ替えても同じ値になるという対称性を持ちます。

オッズ比とリスク比は同じではありません。 リスク比は分母が「曝露群の全体」($a+b$ など)であるのに対し、オッズ比の分母は「非発生数」($b$ など)です。 症例対照研究ではリスクそのものを推定しにくいため、オッズ比がよく使われます。

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📘 前提知識:独立性は「期待度数とのズレ」で見る

分割表で独立なら、行割合と列割合から期待されるセル度数が決まります。 観測度数がそこからどれだけズレるかが、カイ二乗検定や残差分析の出発点です。 対数線形モデルは、この期待度数の構造を主効果と交互作用で表します。


2. ファイ係数と連関係数

2×2表では、ファイ係数

\[ \phi=\sqrt{\frac{\chi^2}{n}} \]

を関連の強さとして使います。 符号付きで表す場合、$ad-bc$ の符号を反映します。

一般の分割表では、クラメールの連関係数

\[ V=\sqrt{\frac{\chi^2}{n\min(r-1,c-1)}} \]

を使います。 カイ二乗統計量は標本サイズが大きいと大きくなりやすいため、関連の強さを見るには標準化した指標が必要です。


3. 残差分析

独立性検定では、期待度数

\[ E_{ij}=\frac{n_{i\cdot}n_{\cdot j}}{n} \]

を使います。 カイ二乗統計量は、

\[ X^2=\sum_i\sum_j\frac{(O_{ij}-E_{ij})^2}{E_{ij}} \]

です。 どのセルが関連に寄与しているかを見るには残差を使います。 標準化残差は概念的に

\[ \frac{O_{ij}-E_{ij}}{\sqrt{E_{ij}}} \]

です。 分子の $O_{ij}-E_{ij}$ は「観測度数が独立期待からどれだけズレたか」で、符号が正ならそのセルは独立モデルより多く、負なら少ないことを表します。 調整済み残差では、行・列周辺の影響を補正します。 絶対値が大きいセルは、独立モデルからのズレが大きいセルです。

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4. 小さな計算例:2×2表の期待度数とオッズ比

ここまでの「オッズ比・期待度数・カイ二乗統計量・残差」を、1つの数値例でつなげます。 次の2×2分割表を考えます。

疾患あり 疾患なし 合計
曝露あり 30 70 100
曝露なし 10 90 100
合計 40 160 200

まずオッズ比は、対角の積の比なので、

\[ OR=\frac{ad}{bc}=\frac{30\times90}{70\times10}=\frac{2700}{700}\approx3.86 \]

です。曝露ありで疾患オッズが約3.9倍高いと読みます。 次に独立を仮定したときの期待度数は $E_{ij}=n_{i\cdot}n_{\cdot j}/n$ なので、たとえば「曝露あり・疾患あり」のセルは

\[ E_{11}=\frac{100\times40}{200}=20 \]

です。同様に各セルの期待度数は

\[ E_{12}=80,\quad E_{21}=20,\quad E_{22}=80 \]

となります。カイ二乗統計量は

\[ X^2=\sum\frac{(O-E)^2}{E} =\frac{10^2}{20}+\frac{10^2}{80}+\frac{10^2}{20}+\frac{10^2}{80} =5+1.25+5+1.25=12.5 \]

です(各セルで $|O-E|=10$)。自由度は $(2-1)(2-1)=1$ で、$\chi^2_{0.05,1}\approx3.84$ を上回るため、有意水準5%で独立は棄却されます。 「曝露あり・疾患あり」のセルの標準化残差は

\[ \frac{O_{11}-E_{11}}{\sqrt{E_{11}}}=\frac{30-20}{\sqrt{20}}\approx2.24 \]

と正で大きく、このセルが関連を強く押し上げていることが分かります。 試験では、オッズ比・期待度数・カイ二乗・残差を同じ表から一貫して計算できることが要点です。


5. 対数線形モデル

📘 前提知識:対数線形モデルは「期待度数の作り方」を分解する

各セルに何件入りやすいか(期待度数)を、対数のスケールで「全体の水準+行の効果+列の効果+行と列の組み合わせ効果」に足し算で分けて表します。 回帰分析で平均を要因に分解するのと同じ発想を、カウントデータに当てはめたものです。 組み合わせ効果(交互作用)がゼロなら、行と列は独立だと読めます。

対数線形モデルは、分割表のセル期待度数 $\mu_{ij}$ の対数を、行効果、列効果、交互作用で表すモデルです。

2元表では、

\[ \log \mu_{ij}=\lambda+\lambda_i^A+\lambda_j^B+\lambda_{ij}^{AB} \]

のように書きます。 交互作用項 $\lambda_{ij}^{AB}$ がなければ、行変数と列変数は独立です。

\[ \log \mu_{ij}=\lambda+\lambda_i^A+\lambda_j^B \]

は独立モデルに対応します。 交互作用項を入れると、カテゴリ間の関連を表せます。

対数線形モデルは、ポアソン回帰としても表せます。 セル度数をポアソン分布とみなし、ログリンクで期待度数をモデル化します。

次の図では、分割表の独立性・対数線形モデルの交互作用項・グラフィカルモデルの条件付き独立が、同じ「関連構造」を別の言語で表していることを見る。

分割表の独立性、対数線形モデルの交互作用項、グラフィカルモデルの条件付き独立を対応づける図

交互作用項なし=独立=グラフのエッジなし、と3つの表現が同じ関連構造に対応する。


6. 階層モデル

対数線形モデルでは、高次の交互作用を入れるなら、その低次の項も含めるという階層性を保つのが通常です。 たとえば3変数 $A,B,C$ で $AB$ 交互作用を入れるなら、$A$ と $B$ の主効果も含めます。

階層モデルの指定は、どの交互作用を認めるかを表します。 3変数で

\[ [AB][AC] \]

と書くモデルは、$AB$ と $AC$ の関連を認めますが、$BC$ の直接関連や $ABC$ の3次交互作用を入れません。

モデル比較には、尤度比カイ二乗統計量やPearsonのカイ二乗統計量を使います。


7. 条件付き独立

確率変数 $X,Y,Z$ について、$Z$ を条件にしたとき $X$ と $Y$ が独立なら、

\[ X\perp Y\mid Z \]

と書きます。 これは、

\[ P(X,Y\mid Z)=P(X\mid Z)P(Y\mid Z) \]

を意味します。

周辺では関連があるように見えても、第三の変数で条件付けると関連が消えることがあります。 逆に、条件付けることで関連が現れることもあります。 分割表では、層別した2×2表を比較することで条件付き関連を確認します。


8. グラフィカルモデル

グラフィカルモデルは、変数をノード、関係をエッジで表すモデルです。 エッジがないことは、何らかの独立性または条件付き独立性を表します。

無向グラフィカルモデルでは、エッジで直接的な条件付き依存を表します。 有向グラフィカルモデルでは、矢印で変数間の方向つき関係を表します。

ただし、グラフは因果を自動的に証明しません。 因果グラフとして読むには、追加の仮定と研究設計が必要です。 統計検定準1級では、まず「グラフで条件付き独立構造を表す」ことを押さえます。


9. 問題文トリガー辞書

問題文の表現 選ぶ論点 見る量 典型ミス
「2×2表の関連」 オッズ比 $ad/bc$ リスク比と混同
「関連の強さ」 ファイ/Cramer's V $\chi^2$ 標準化 p値だけ見る
「どのセルが効くか」 残差分析 標準化残差 全体検定だけで終える
「セル期待度数の対数」 対数線形モデル $\log\mu$ ロジスティック回帰と混同
「交互作用項なし」 独立モデル $\lambda^{AB}=0$ 主効果なしと読む
「条件付き独立」 グラフィカルモデル $X\perp Y\mid Z$ 周辺独立と混同

10. 典型ミス・ひっかけ

ミス なぜ危ないか 防ぎ方
オッズ比を確率比として読む オッズとリスクは違う 分母が非発生数か全体か確認
カイ二乗検定だけで関連の強さを判断する 標本サイズに依存する 連関係数も見る
残差の符号を見ない どの方向にズレたか分からない $O-E$ の符号を確認
対数線形モデルで目的変数を1つ固定する セル度数全体をモデル化する ロジスティックとの違いを確認
条件付き独立を周辺独立と同じに扱う 条件付ける変数で関係が変わる $|Z$ の有無を見る

11. 解法テンプレ

分割表・カテゴリデータの関連の問題は、次の順で処理します。

  1. 何を問われているかを確認する(関連の有無・強さ・方向・どのセル・条件付きのどれか)。
  2. 関連の有無は独立性のカイ二乗検定、向きと強さはオッズ比・リスク比・連関係数で見る。
  3. 期待度数 $E_{ij}=n_{i\cdot}n_{\cdot j}/n$ を作り、カイ二乗統計量と自由度 $(r-1)(c-1)$ を求める。
  4. どのセルが効くかは標準化残差(調整済み残差)の符号と大きさで読む。
  5. 構造をモデル化するなら、対数線形モデルで交互作用項の有無を独立性と対応づける。
  6. 第三変数があるなら、層別して条件付き独立か周辺独立かを区別する。
  7. グラフィカルモデルでは、エッジの有無を条件付き独立として読み、因果と即断しない。

12. ここで1問

カテゴリデータの関連を整理したら、演習で「検定・指標・モデルのどれで読むか」を意識して解きます。

このページの確認問題

  • 統計学応用 多変量解析
  • まず解く: オッズ比、独立性検定、残差分析、対数線形モデル
  • 目標: カテゴリデータの関連を検定・指標・モデルで読める

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13. 次に読むページ

次は、時系列と確率過程を扱います。 自己相関、定常性、ARMA、状態空間、マルコフ連鎖、ポアソン過程、ブラウン運動をまとめて整理します。