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信頼区間:母平均・母分散・母比率・2標本

Stage 3 — 第4章 | 統計検定準1級チートシート 推定学習時間:90〜110分 | 難易度:★★★★☆


このページで押さえること

信頼区間は、推定量の分布を使って母数の plausible な範囲を作る方法です。 準1級では、公式代入だけでなく、どのピボット量を使うか、母分散既知/未知、正規近似、被覆確率の意味を区別する必要があります。

このページを終えると、こんなことができるようになります:

  • 信頼係数と被覆確率を母数固定・区間ランダムの視点で説明できる
  • 母平均のz区間とt区間を使い分けられる
  • 母分散の信頼区間でカイ二乗分布の上下側点を正しく使える
  • 母比率と2標本差の正規近似区間を構成できる
  • 片側信頼限界と両側信頼区間を区別できる

2級ではここまで、準1級ではここが増える

2級では、信頼区間は「平均なら $\bar X\pm z\sigma/\sqrt n$」「分散ならカイ二乗」のように、対象ごとの公式に代入する形で扱いました。 準1級では、それらの公式がどこから来るか(ピボット量を作り、母数について解く)を理解し、被覆確率の意味、2標本、片側限界、正規近似の限界まで踏み込みます。

観点 2級でのレベル 準1級で増える点
区間の作り方 対象別の公式に代入 ピボット量を作って母数について解く
解釈 「95%の区間」 母数固定・区間ランダムの被覆確率として説明
対象の広がり 1標本の平均・分散・比率 2標本差・プール分散・Welch・片側限界
近似の扱い 正規近似を使う 近似が崩れる条件($np$ が小さい等)を意識

つまり準1級では「公式を当てはめる」段階から、ピボット量から区間を導き、近似の前提と被覆確率の意味を言える段階へ進みます。差がつくのは、分散の区間で母数が分母に来るため上下を取り違えない処理と、片側で $\alpha/2$ ではなく $\alpha$ を使う区別です。


1. 信頼区間の意味

母数 $\theta$ に対して、標本から作る区間

\[ [L(X),U(X)] \]

\[ P_\theta\{L(X)\le \theta\le U(X)\}=1-\alpha \]

を満たすとき、信頼係数 $1-\alpha$ の信頼区間と呼びます。

ここでランダムなのは区間であり、母数 $\theta$ は固定です。 「この区間に母数が95%の確率で入る」と言うとベイズ的な表現に見えます。 頻度論では、「同じ手続きを繰り返すと、作った区間の95%が真の母数を含む」と読みます。 ベイズ統計の信用区間(credible interval)は「母数が区間に入る確率」を直接述べる点で解釈が異なるので、両者を混同しないことが重要です。

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📘 前提知識:ピボット量は「母数以外の分布が分かる量」

信頼区間は、いきなり上下限を暗記するより、分布が分かる統計量を作る方が安定します。 その統計量の不等式を書き、最後に知りたい母数について解き直します。 分散の区間で上下が逆になりやすいのは、この解き直しで母数が分母にあるためです。


2. ピボット量で作る

信頼区間の基本は、母数を含み、分布が母数に依存しない量を作ることです。 このような量をピボット量と呼びます。

たとえば $X_i\sim N(\mu,\sigma^2)$ で $\sigma^2$ 既知なら、

\[ Z=\frac{\bar X-\mu}{\sigma/\sqrt n}\sim N(0,1) \]

です。

\[ P\left(-z_{\alpha/2}\le \frac{\bar X-\mu}{\sigma/\sqrt n}\le z_{\alpha/2}\right)=1-\alpha \]

を $\mu$ について解くと、

\[ \bar X\pm z_{\alpha/2}\frac{\sigma}{\sqrt n} \]

が得られます。


3. 母平均の信頼区間

母分散既知

正規母集団または大標本で母分散 $\sigma^2$ が既知なら、

\[ \bar X\pm z_{\alpha/2}\frac{\sigma}{\sqrt n} \]

を使います。

母分散未知

正規母集団で母分散未知なら、

\[ T=\frac{\bar X-\mu}{S/\sqrt n}\sim t_{n-1} \]

なので、

\[ \bar X\pm t_{\alpha/2,n-1}\frac{S}{\sqrt n} \]

です。 母分散未知で $S$ を使っているなら、有限標本ではt分布です。

大標本では、t分布と標準正規分布の差は小さくなります。 ただし試験では、問題文が正規標本・母分散未知を明示したらt区間を優先します。


4. 母分散の信頼区間

📘 前提知識:分散の区間は「左右対称にならない」

平均の信頼区間は $\bar X$ を中心に左右対称に伸びるので、感覚的につかみやすい形です。 しかし分散の区間では、$\sigma^2$ が式の分母に入り、しかも使うカイ二乗分布が左右非対称(0以上で右に裾が長い)です。 そのため「推定値 ± 誤差」という対称な形にはならず、上限と下限を別々のカイ二乗点から作ります。 母数が分母にあるので、不等式を解くと上下が入れ替わる点に注意します。

正規標本では、

\[ \frac{(n-1)S^2}{\sigma^2}\sim \chi^2_{n-1} \]

です。 上側 $\alpha$ 点を $\chi^2_{\alpha,\nu}$ と書く流儀では、

\[ P\left(\chi^2_{\alpha/2,n-1} \le \frac{(n-1)S^2}{\sigma^2} \le \chi^2_{1-\alpha/2,n-1}\right) \]

の添字定義に注意が必要です。 教材によって、上側点と下側点の記号が逆に見えます。

安全な処理は、まず

\[ a\le \frac{(n-1)S^2}{\sigma^2}\le b \]

と置き、$0

\[ \frac{(n-1)S^2}{b}\le \sigma^2\le \frac{(n-1)S^2}{a} \]

分母が逆になるため、上下を取り違えやすい箇所です。


5. 母比率の信頼区間

$X\sim Bin(n,p)$、標本比率を

\[ \hat p=\frac{X}{n} \]

とします。 大標本では、

\[ \hat p\approx N\left(p,\frac{p(1-p)}{n}\right) \]

です。 標準的な近似区間は、

\[ \hat p\pm z_{\alpha/2}\sqrt{\frac{\hat p(1-\hat p)}{n}} \]

です。

ただし、$n\hat p$ や $n(1-\hat p)$ が小さい場合、正規近似は不安定です。 準1級では、近似条件や連続性補正、正確区間の存在を意識します。

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6. 2標本の信頼区間

独立な2標本で平均差 $\mu_1-\mu_2$ を推定します。 母分散既知なら、

\[ (\bar X-\bar Y)\pm z_{\alpha/2} \sqrt{\frac{\sigma_1^2}{n_1}+\frac{\sigma_2^2}{n_2}} \]

です。

母分散未知だが等分散を仮定する場合、プールした分散

\[ S_p^2= \frac{(n_1-1)S_1^2+(n_2-1)S_2^2}{n_1+n_2-2} \]

を使い、

\[ (\bar X-\bar Y)\pm t_{\alpha/2,n_1+n_2-2} S_p\sqrt{\frac{1}{n_1}+\frac{1}{n_2}} \]

です。

等分散を仮定しない場合は、Welchの近似自由度を使います。 試験では、等分散の明示があるかを必ず確認します。


7. 片側信頼限界

上側信頼限界は

\[ P_\theta(\theta\le U(X))=1-\alpha \]

を満たす $U(X)$ です。 母平均で母分散既知なら、

\[ U(X)=\bar X+z_\alpha\frac{\sigma}{\sqrt n} \]

です。 下側信頼限界は

\[ L(X)=\bar X-z_\alpha\frac{\sigma}{\sqrt n} \]

です。

片側では $\alpha/2$ ではなく $\alpha$ を使います。 検定の片側・両側との対応でも頻出です。

次の図では、分布が分かるピボット量の不等式を立て、それを母数について解き直して信頼区間にする流れを見る。

ピボット量の不等式を母数について解いて信頼区間を作る流れ

ピボット量の上下限を固定してから母数について解くと、両側でも片側でも同じ手順で区間が作れる。

ピボット量の確率不等式を母数について解き直すのが、信頼区間構成の共通の骨格である。


8. 小さな計算例:母平均のt信頼区間を作る

ここまでの「ピボット量・母分散未知・t分布」を、1つの数値例でつなげます。 正規母集団から $n=25$ の標本を取り、標本平均 $\bar X=50$、不偏標準偏差 $S=10$ が得られたとします。母分散は未知です。

母分散が未知なので、ピボット量は

\[ T=\frac{\bar X-\mu}{S/\sqrt n}\sim t_{n-1}=t_{24} \]

です。 95%信頼区間では $t_{0.025,24}\approx 2.064$ を使います。標準誤差は

\[ \frac{S}{\sqrt n}=\frac{10}{\sqrt{25}}=2 \]

なので、信頼区間は

\[ \bar X\pm t_{0.025,24}\frac{S}{\sqrt n} =50\pm 2.064\times 2 =50\pm 4.128 \]

すなわち、おおよそ $[45.87,\ 54.13]$ です。

ステップ 確認したこと
ピボット量 $T=(\bar X-\mu)/(S/\sqrt n)\sim t_{24}$
臨界値 $t_{0.025,24}\approx 2.064$
標準誤差 $S/\sqrt n=2$
区間 $50\pm 4.128\approx[45.87,54.13]$

もし母分散が既知だったり大標本だったりすれば、$t_{0.025,24}$ の代わりに $z_{0.025}\approx 1.96$ を使い、区間はやや狭くなります。 試験では「正規標本・母分散未知」と書かれたらt分布を選ぶことが要点です。


9. 問題文トリガー辞書

問題文の表現 使う分布 区間の型 典型ミス
「母分散既知の平均」 標準正規 $\bar X\pm z\sigma/\sqrt n$ tにする
「母分散未知の平均」 t $\bar X\pm tS/\sqrt n$ zにする
「母分散」 カイ二乗 $(n-1)S^2/\chi^2$ 上下を逆にする
「母比率」 正規近似 $\hat p\pm zSE$ $p$ と $\hat p$ を混同
「等分散2標本」 t pooled variance Welchと混同
「片側信頼限界」 z/t/chi-square $\alpha$ 点 $\alpha/2$ を使う

10. 典型ミス・ひっかけ

ミス なぜ危ないか 防ぎ方
信頼区間を母数がランダムと解釈する 頻度論の定義とズレる 区間がランダム、母数固定
分散区間で上下を逆にする $\sigma^2$ が分母にある 先に $a\le Q\le b$ と置く
片側で $\alpha/2$ を使う 信頼係数が変わる 片側は片方の尾だけ
等分散の記述を読まない 自由度と標準誤差が変わる pooledかWelchかを確認
正規近似区間を小標本比率に使う 近似が崩れる $np,n(1-p)$ を確認

11. 解法テンプレ

信頼区間を作るときは、次の順で処理します。

  1. 推定対象を確認する(母平均・母分散・母比率・2標本差のどれか)。
  2. 母分散が既知か未知か、標本サイズが大きいかを読み、使う分布(z・t・カイ二乗)を決める。
  3. 母数を含み分布が分かるピボット量を作る。
  4. ピボット量に確率不等式(両側なら $\alpha/2$、片側なら $\alpha$)を立てる。
  5. 不等式を母数について解き直す。分散のように母数が分母にある場合は上下の入れ替わりに注意する。
  6. 2標本なら、等分散の明示を確認してプール分散かWelchかを選ぶ。
  7. 比率では $n\hat p$ と $n(1-\hat p)$ を確認し、正規近似が妥当かを判断する。

12. ここで1問

信頼区間の作り方を確認したら、演習で「どのピボット量から区間を導くか」を意識して解きます。

このページの確認問題

  • 統計学応用 推定
  • まず解く: 平均・分散・比率・2標本の信頼区間
  • 目標: ピボット量から区間を自力で導ける

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13. 次に読むページ

次は、仮説検定の枠組みを扱います。 信頼区間と検定は、同じ標本分布を別の形で使っています。