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パラメトリック検定・ノンパラメトリック検定

Stage 3 — 第7章 | 統計検定準1級チートシート 推定学習時間:100〜120分 | 難易度:★★★★☆


このページで押さえること

このページでは、検定理論を具体的な問題タイプに落とします。 準1級では、検定名の暗記よりも、データ型、分布仮定、対応の有無、標本サイズ、順位を使うかを判断する力が重要です。

このページを終えると、こんなことができるようになります:

  • 正規母集団の平均・分散・分散比の検定を使い分けられる
  • 二項分布・ポアソン分布の検定を標準化または正確法で扱える
  • 適合度検定、独立性検定、一様性検定のカイ二乗統計量を説明できる
  • 符号検定、Wilcoxon検定、Kruskal-Wallis検定の対象を区別できる
  • 並べ替え検定の帰無仮説と再標本化の考え方を説明できる

2級ではここまで、準1級ではここが増える

2級では、t検定・カイ二乗検定など、正規分布や十分大きな標本を前提とするパラメトリック検定が中心でした。

準1級では、ここに分布の形を強く仮定しないノンパラメトリック検定と、対応・群数・データ型による使い分けが加わります。

観点 2級でのレベル 準1級で増える点
分布仮定 正規性を前提にする 順位・符号で分布を仮定しない検定も使う
群の構造 1標本・2標本中心 対応の有無・3群以上まで判定する
再標本化 (ほぼ扱わない) 並べ替え検定で帰無分布を作る

つまり準1級では「t検定かカイ二乗か」で止まらず、データ型・分布仮定・対応・群数・順位の利用から検定を選ぶ根拠を言語化できることが問われます。差がつくのは、対応あり/独立の取り違えを避ける判断と、ノンパラメトリック検定でも前提(対称性・交換可能性)を確認する姿勢です。


1. 正規分布に関する検定

正規母集団の母平均について、母分散既知なら

\[ Z=\frac{\bar X-\mu_0}{\sigma/\sqrt n} \]

を使います。 母分散未知なら

\[ T=\frac{\bar X-\mu_0}{S/\sqrt n}\sim t_{n-1} \]

を使います。

母分散の検定では、

\[ \frac{(n-1)S^2}{\sigma_0^2}\sim \chi^2_{n-1} \]

を使います。

2母集団の分散比では、

\[ F=\frac{S_1^2/\sigma_1^2}{S_2^2/\sigma_2^2} \]

を使い、帰無仮説 $\sigma_1^2=\sigma_2^2$ の下では

\[ \frac{S_1^2}{S_2^2}\sim F_{n_1-1,n_2-1} \]

です。

📘 前提知識:ノンパラメトリック検定は「分布の形を強く仮定しない」選択肢

正規性や等分散性が怪しいとき、平均そのものではなく順位や符号を使って比較する方法があります。 ただし仮定が少ないから常に強いわけではなく、検出したい差の種類も変わります。 何を比較している検定なのかを、平均・中央値・順位・度数で分けて読みます。


2. 2標本平均の検定

📘 前提知識:等分散の仮定は「ばらつきを共通とみなせるか」

2群の平均差を見るとき、2つの群のばらつき(分散)が同じくらいかどうかで使う統計量が変わります。 等分散とみなせるなら、両群の情報を合わせた「プールした分散」で標準誤差を作れます。 ばらつきが大きく違うなら、プールせず自由度を調整するWelchの検定の方が安全です。

独立2標本で平均差を検定する場合、等分散を仮定するかで統計量が変わります。

等分散なら、プールした分散

\[ S_p^2=\frac{(n_1-1)S_1^2+(n_2-1)S_2^2}{n_1+n_2-2} \]

を使い、

\[ T= \frac{\bar X-\bar Y-\Delta_0} {S_p\sqrt{1/n_1+1/n_2}} \sim t_{n_1+n_2-2} \]

です。

等分散を仮定しないならWelchの検定を使います。 対応のある2標本なら、差

\[ D_i=X_i-Y_i \]

に対する1標本t検定に帰着します。 「独立2標本」か「対応あり」かは最初に判定します。ここを取り違えると、自由度も標準誤差も変わってしまいます。

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3. 二項・ポアソンの検定

二項分布 $X\sim Bin(n,p)$ に対して、

\[ H_0:p=p_0 \]

を検定します。 小標本では二項分布を直接使う正確検定が自然です。 大標本では、

\[ Z=\frac{\hat p-p_0}{\sqrt{p_0(1-p_0)/n}} \]

で正規近似できます。 検定では標準誤差に帰無仮説下の $p_0$ を入れる点に注意します。

ポアソン分布 $X\sim Poisson(\lambda)$ では、大標本で

\[ Z=\frac{X-\lambda_0}{\sqrt{\lambda_0}} \]

を使います。 発生率の比較では、観測時間や曝露量を考慮して率を比較します。


4. カイ二乗適合度検定

カテゴリ $1,\dots,k$ の観測度数を $O_i$、帰無仮説の下での期待度数を $E_i$ とします。 適合度検定の統計量は

\[ X^2=\sum_{i=1}^{k}\frac{(O_i-E_i)^2}{E_i} \]

です。 母数を推定しない単純な適合度検定では自由度は

\[ k-1 \]

です。 分布の母数をデータから推定した場合は、その推定した母数の数だけ自由度が減ります。

\[ df=k-1-m \]

ここで $m$ は推定した母数の数です。


5. 独立性検定と一様性検定

分割表で行のカテゴリと列のカテゴリが独立かを調べる検定が独立性検定です。 期待度数は

\[ E_{ij}=\frac{(\text{row total})_i(\text{column total})_j}{n} \]

です。 統計量は

\[ X^2=\sum_i\sum_j\frac{(O_{ij}-E_{ij})^2}{E_{ij}} \]

で、自由度は

\[ (r-1)(c-1) \]

です。

一様性検定は、複数母集団のカテゴリ分布が同じかを見る検定です。 計算式は似ていますが、標本抽出の設計が異なります。 試験では、問題文の目的が「関連を見る」のか「分布の同一性を見る」のかを読みます。


6. 符号検定とWilcoxon検定

対応のあるデータで中央値の差を見たいとき、差 $D_i$ の符号だけを使うのが符号検定です。 帰無仮説の下で、正の差の個数は

\[ Bin(n,1/2) \]

に従います。

Wilcoxon符号付順位検定は、差の絶対値の順位と符号を使います。 符号検定より情報を多く使うため、条件が合えば検出力が高くなります。 ただし、差の分布が対称であることが前提になります。

独立2標本の位置の差には、Wilcoxon順位和検定、またはMann-Whitney検定を使います。 これは2群の値をまとめて順位付けし、順位和を見る検定です。


7. Kruskal-Wallis検定と並べ替え検定

3群以上の位置の差を順位で調べる方法がKruskal-Wallis検定です。 一元配置ANOVAのノンパラメトリック版として理解できます。 全データを順位化し、各群の順位和の偏りを見ます。

並べ替え検定は、帰無仮説の下でラベル交換可能であることを使います。 群ラベルをすべて並べ替え、検定統計量の帰無分布を作ります。 分布仮定に強く依存しない一方、帰無仮説下の交換可能性が重要です。


8. 検定選択表

データ・目的 仮定 代表的検定 見る統計量
1標本平均 正規・分散未知 1標本t検定 t
2標本平均 独立・等分散 pooled t検定 t
2標本平均 独立・不等分散 Welch検定 t近似
対応あり平均 差が正規 対応のあるt検定 差のt
1標本比率 二項 二項検定/z検定 二項またはz
カテゴリ適合 期待度数十分 カイ二乗適合度 $X^2$
2カテゴリ変数 期待度数十分 独立性検定 $X^2$
小標本2×2 周辺固定 Fisher正確検定 超幾何
対応あり順位 対称性 Wilcoxon符号付順位 順位和
3群以上順位 独立 Kruskal-Wallis 順位

次の図では、データ型・群数・対応の有無・分布仮定をたどって検定を選ぶ流れを見ます。

データ型、群数、対応の有無、分布仮定から検定を選ぶフローチャート

まずデータ型と群数で枝を分け、次に正規性・等分散・対応の有無で最終的な検定を確定する。


9. 小さな計算例:カイ二乗適合度検定でサイコロの公平性を見る

ここまでの「期待度数・カイ二乗統計量・自由度」を、1つの数値例でつなげます。 あるサイコロを $60$ 回振り、出目の度数が次のようになったとします。

出目 1 2 3 4 5 6
観測 $O_i$ 8 12 9 11 14 6

公平なサイコロという帰無仮説の下では、各目の期待度数は

\[ E_i=\frac{60}{6}=10 \]

です。カイ二乗統計量は

\[ X^2=\sum_{i=1}^{6}\frac{(O_i-E_i)^2}{E_i} =\frac{4+4+1+1+16+16}{10}=4.2 \]

です。母数を推定していないので自由度は $k-1=5$、上側5%点は $\chi^2_{0.05,5}=11.07$ です。

\[ X^2=4.2<11.07 \]

なので帰無仮説は棄却せず、「公平でない」とは言えません。

ステップ 確認したこと
期待度数 $E_i=60/6=10$
統計量 $X^2=\sum (O_i-E_i)^2/E_i=4.2$
自由度 $k-1=5$(母数推定なし)
判定 $4.2<\chi^2_{0.05,5}=11.07$ で棄却せず

試験では、自由度を $k-1$ から「推定した母数の数 $m$ だけ引く」かどうかの確認が頻出です。


10. 問題文トリガー辞書

問題文の表現 選ぶ検定 確認条件 典型ミス
「対応のある」 差の検定 同一個体・ペア 独立2標本として扱う
「等分散を仮定」 pooled t 分散共通 Welchにする
「期待度数」 カイ二乗系 各セルの大きさ 小セルでも近似
「順位」 ノンパラメトリック 対応・群数 Wilcoxonの種類を混同
「周辺度数固定」 Fisher正確検定 2×2小標本 カイ二乗だけで処理
「ラベルを入れ替える」 並べ替え検定 交換可能性 ブートストラップと混同

11. 典型ミス・ひっかけ

ミス なぜ危ないか 防ぎ方
対応ありを独立2標本で検定する 個体差を消せず検出力が落ちる まずペア構造を見る
二項比率検定の標準誤差に $\hat p$ を使う 検定では帰無分布が基準 $p_0$ を入れる
適合度検定の自由度を $k-1$ に固定する 母数推定で自由度が減る 推定母数の数を引く
Wilcoxon符号付順位と順位和を混同する 対応あり/独立で対象が違う 差を作れるか確認
ノンパラメトリックを仮定不要と考える 対称性や交換可能性が必要 何を仮定しているか確認

12. 解法テンプレ

検定を選ぶ問題では、次の順で処理します。

  1. データ型を確認する(量的か、カテゴリか、順位か)。
  2. 群の構造を確認する(1標本か、独立2標本か、対応ありか、3群以上か)。
  3. 分布仮定を確認する(正規性・等分散が妥当か、順位・符号に切り替えるか)。
  4. パラメトリックなら統計量と自由度を決める(プールt/Welch/カイ二乗の自由度など)。
  5. 小標本・小セルなら、正確検定や連続性補正を検討する。
  6. 当てはめた検定が何を仮定しているか(対称性・交換可能性)を最後に確認する。

13. ここで1問

検定の使い分けを確認したら、演習で「データ型・群数・分布仮定から何を選ぶか」を意識して解きます。

このページの確認問題

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14. 次に読むページ

次は、Stage4として重回帰、OLS、変数選択、残差分析、GLS、多重共線性、正則化を扱います。 推定・検定理論を線形モデルへ接続します。