バイオインフォマティクス / ヘルスケアデータサイエンティスト

機能軸: R&D・高度解析 業界軸: ライフサイエンス・医療 提供モデル: 事業会社内製

生命データを読み解き治療と研究をつなぐ

解析パイプラインを回しつつ、ラボの研究員や臨床医と仮説を擦り合わせていく――バイオインフォマティクスサイエンティストの実務を現場視点で整理しました。

役割概要

バイオインフォマティクスサイエンティストは、次世代シーケンサーから得られる膨大なオミックスデータを解析し、疾患メカニズムの解明や創薬ターゲット探索を推進します。

製薬企業や医療機関と連携し、研究の初期段階から臨床応用までをデータで橋渡し。再現可能な解析パイプラインと解釈しやすいレポートを提供します。

主な業務領域

データ処理と品質管理

  • パイプライン構築: FASTQからVCFやカウントマトリクスへの処理を自動化。
  • 品質チェック: FastQC・MultiQCでシーケンス品質を監視。
  • メタデータ整備: サンプル属性や臨床情報を統一フォーマットで管理。

解析と仮説生成

  • 差次的発現解析: DESeq2などで治療群との遺伝子発現差を抽出。
  • ネットワーク解析: Pathway解析やタンパク相互作用ネットワークで作用機序を推定。
  • 個別化医療: 変異プロファイルと薬剤反応性データを組み合わせ治療候補を提案。

創薬・臨床連携

  • ターゲット優先順位: バイオマーカー候補を科学的根拠と共に提示。
  • 臨床試験支援: 患者層別化や伴走診断の設計をデータ観点で支援。
  • ナレッジ共有: 可視化レポートや知識グラフで研究者と洞察を共有。

代表的なプロジェクト

理化学研究所 細胞機能・表現型データベース「Cell IO」の開発

大規模言語モデル(LLM)等を用いて、文献情報と1細胞オミクスデータを統合。細胞の遺伝子発現情報と機能・表現型情報を相互に行き来できるウェブデータベースの開発を目指すプロジェクト。

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中外製薬株式会社 患者ビッグデータを活用した創薬研究

電子カルテ、ゲノム情報、臨床試験データなどの患者ビッグデータを統合的に解析。新たな創薬ターゲットの探索や、個別化医療に繋がるバイオマーカーの同定を目指す研究開発を推進している。

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NEC/Transgene社 AIを活用した個別化がんワクチンの開発

患者ごとのがん細胞の遺伝子変異をAIで解析し、最適な抗原を予測。その患者専用の「がんワクチン」を設計・開発するプロジェクト。AI創薬技術で個別化医療の実現を目指す。

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スキル&マインドの3層マップ

テクニカル
  • バイオ統計: サバイバル解析、マルチオミックス統合、ベイズ推定。
  • プログラミング: Python・R、Nextflow、Snakemakeでパイプライン自動化。
  • クラウド/HPC: GCP、AWS Batch、オンプレHPCを使い分け。
ビジネス理解
  • 創薬フェーズ: ターゲット検証~IND申請までのデータ要件。
  • 規制対応: GxPやデータ完全性を意識したログ管理。
  • 医療価値: バイオマーカーが患者アウトカムやコスト改善に与える影響。
コラボレーション
  • 研究者連携: ウェットラボと週次ミーティングで仮説をすり合わせ。
  • 医師・臨床連携: 症例カンファレンスで結果を共有し、レポートを共同作成。
  • データ共有: 公的データベースや社外パートナーとの安全な交換方法を設計。

キャリアの伸び方

スペシャリストパス: シングルセル解析やAI創薬の専門家として研究の最前線をリード。

マネジメントパス: 計算生物学チームのリーダーやディレクターとしてポートフォリオを統括。

クロスファンクションパス: 医療DXスタートアップやヘルスケアコンサルでデータ基盤構築を指揮する道もあります。

キャリアに関するあれこれ

Q: 生命科学の学位は必須?
バイオ系の基礎知識は欠かせませんが、機械学習やソフトウェア出身で活躍している人も増えています。ウェットラボと会話できる程度に生化学・分子生物学を学ぶのが近道です。
Q: ラボとの連携で意識することは?
解析結果をそのまま渡さず、再現条件や検証実験の段取りまで提案します。週次のラボミーティングで仮説→検証→再設計を素早く回すことが信頼につながります。
Q: キャリアパスには何がありますか?
製薬企業のデータサイエンス部門、ヘルスケアスタートアップ、診断メーカー、研究機関など多方面へ展開できます。医療データ利活用やDX案件で需要が高まっています。