マテリアルズインフォマティクススペシャリスト

機能軸: R&D・高度解析 業界軸: 製造・サプライチェーン 提供モデル: 事業会社内製

シミュレーション×AIで新素材探索を加速

実験室とシミュレーション環境を行き来しながら、狙った物性を持つ材料を逆算で探し出す――マテリアルズインフォマティクスの現場を等身大に描きました。

役割概要

マテリアルズインフォマティクススペシャリストは、量子化学シミュレーションや実験データベースを統合し、望ましい特性を持つ材料候補を高速で絞り込む役割です。従来の試行錯誤に頼った研究を、データ駆動で再構築します。

材料科学者・計算化学者・製造技術者と連携し、機械学習モデルと現場知見を組み合わせた逆設計を実施。試作回数とリードタイムを減らし、研究成果をビジネス価値へ結び付けます。

主な業務領域

データ基盤と特徴量設計

  • 材料データ統合: 実験値・第一原理計算・公開データセットをクレンジング。
  • 記述子設計: 結晶構造や分子構造をグラフ特徴量として表現。
  • 品質管理: 欠損補完や外れ値検知で信頼性を担保。

特性予測と逆設計

  • 機械学習モデル: ランダムフォレストやグラフニューラルネットで物性を予測。
  • ベイズ最適化: 目標性能を満たす組成やプロセス条件を探索。
  • シミュレーション連携: DFT・分子動力学と学習モデルを往復させ精度を高める。

研究実装と価値検証

  • 試作優先度付け: 仮想スクリーニング結果を実験計画へ落とし込む。
  • 効果測定: 不良率・材料コスト・開発期間の改善幅を定量評価。
  • 知財とレポート: 発見素材の特許出願や学会発表をサポート。

代表的なプロジェクト

横浜ゴム株式会社 AI・機械学習を活用したゴム材料開発の技術革新

従来の実験と経験則に依存した開発プロセスに、AIと機械学習を導入。材料の配合と物性値の関係を予測するモデルを構築し、目標性能を満たすゴム材料の探索を高速化・効率化した。

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旭化成株式会社 MI人材育成による開発期間の短縮

社内にマテリアルズ・インフォマティクス(MI)を実践できる人材を育成する教育システムを構築。研究員自らがデータを活用することで、新規材料の開発期間を半分以下に短縮する成果を挙げている。

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ENEOS株式会社 MIシミュレーター「Matlantis」を活用した触媒開発

原子レベルのシミュレーションと機械学習を組み合わせたPFN社のプラットフォーム「Matlantis」を活用。高性能ポリマーの収率を改善するための触媒開発において、実験回数を大幅に削減し、開発を加速した。

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スキル&マインドの3層マップ

テクニカル
  • 量子化学/DFT: VASPやGaussianで計算データを生成。
  • 機械学習: グラフニューラルネットやベイズ最適化を活用。
  • 高性能計算: HPCクラスターやクラウドGPU環境を運用。
ビジネス理解
  • R&Dロードマップ: 材料開発のゲートレビューに合わせ成果を整理。
  • コストとサステナ: レアメタル代替やCO₂削減効果を評価。
  • 知財戦略: 発見した素材の特許戦略を研究部門と連携。
コラボレーション
  • 研究者連携: ウェットラボと仮説検証を繰り返し、知見を共有。
  • 外部協業: 大学・研究機関とデータ共有や共同研究を推進。
  • 成果発信: 論文・学会・社内報告でナレッジを横展開。

キャリアの伸び方

スペシャリストパス: プリンシパルMIサイエンティストとして特定領域の第一人者になり、全社横断の高度解析を牽引。

マネジメントパス: MI研究チームやR&Dデジタル推進室のリーダーとして、研究ロードマップと外部連携を統括。

クロスファンクションパス: 材料系スタートアップ、コンサルティング、製造DX領域へ越境し、データ駆動型研究を広げる道もあります。

キャリアに関するあれこれ

Q: 化学バックグラウンドは必須?
実験プロトコルや物性評価の理解は重要ですが、計算化学・機械学習出身でも実験チームと対話できれば活躍できます。逆に化学出身ならPython・クラウドの勉強を早めに始めると良いです。
Q: 実験チームとはどう協働する?
スクリーニング結果をそのまま渡さず、試作順序と評価プロトコルをセットで提案します。週次のラボ定例で結果を共有し、モデルの改善と仮説修正を繰り返します。
Q: 成果はどう測られる?
開発期間の短縮、試作回数の削減、材料コストや性能指標の改善などR&D KPIへのインパクトで評価されます。論文・特許のアウトプットも重要です。