EBPM/公共政策データアナリスト

機能軸: ビジネス支援 業界軸: 公共・政策 提供モデル: 事業会社内製

データで行政サービスと政策をアップデート

市役所の会議室で住民データとにらめっこしながら、政策の効果を証拠で示す――公共政策データアナリストの実務を、ヒアリングから提言書作成まで追いました。

役割概要

政策データアナリストは、行政記録・統計調査・オープンデータを統合し、政策の効果検証や改善提言を行う役割です。現場ヒアリングで課題を掘り下げ、因果推論や費用便益分析で意思決定を後押しします。

自治体職員、議会、住民、研究者と協働し、エビデンスに基づく政策立案(EBPM)を実現するのがミッションです。

主な業務領域

データ整備と公開

  • 行政記録統合: 住民基本台帳、税、福祉、教育データを匿名化して連結。
  • メタデータ整備: 項目定義や更新頻度を整理し、オープンデータ化を進める。
  • 品質チェック: 欠損や不整合を検証し、自治体職員でも扱えるようドキュメント化。

政策評価とシミュレーション

  • 因果推論: 差分の差分やRDDなどで政策効果を推定。
  • 費用便益分析: 事業コストと便益を定量化し、優先順位付けを支援。
  • 将来推計: 人口・財政・需要シミュレーションで複数シナリオを提示。

ステークホルダー連携

  • 提言書・ダッシュボード: グラフとストーリーを組み合わせ、意思決定者に説明。
  • ワークショップ: 行政・住民・企業のワークショップを設計し、データをもとに議論。
  • ガバナンス: データ倫理・アクセス権限を定め、継続的な運用体制を構築。

代表的なプロジェクト

兵庫県神戸市 EBPMによる人口戦略の策定と推進

住民基本台帳データを用いて小学校区別の将来人口推計を独自に算定。ダッシュボードで共有し、エリアごとの予測に基づく政策議論や計画策定に活用。データ利活用人材の育成も並行して進めている。

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大阪府高槻市 データ分析に基づく定住促進プロモーション

転出入データを分析し、ターゲットを「20~30代の若い夫婦・カップル」に設定。近畿圏でWeb広告を展開した結果、2年連続で20~40代の人口が増加し、特に30代で転入超過を達成した。

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神奈川県葉山町 ごみ集積所の不適切利用問題に対するRCT(ランダム化比較試験)

ごみの不適切利用という課題に対し、地区をランダムに分けて対策(啓発チラシのポスティング、看板設置)を実施。効果を科学的に検証し、エビデンスに基づいた改善策を導き出した。

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スキル&マインドの3層マップ

テクニカル
  • 統計・因果推論: DID、RDD、PSM、マイクロシミュレーション。
  • GIS・可視化: QGIS、ArcGIS、D3.jsで地理情報を直感的に表示。
  • データエンジニアリング: RDB、CSV、PDFデータを処理し、再利用可能な形式へ整形。
ビジネス理解
  • 政策制度: 行財政、社会保障、教育、都市計画などの制度を理解。
  • 法令・倫理: 個人情報保護、統計法、データ倫理を遵守。
  • KPI設計: SDGsや自治体指標に紐付けて成果を説明。
コラボレーション
  • 行政との伴走: 担当課と週次で確認し、実行可能な提案に落とす。
  • 住民合意形成: ワークショップや説明会でエビデンスを噛み砕いて伝える。
  • 研究機関連携: 大学やシンクタンクと共同で分析手法を磨く。

キャリアの伸び方

スペシャリストパス: EBPMの専門家として自治体や中央省庁でデータ活用プロジェクトをリード。

マネジメントパス: データ活用推進室・政策企画部門のリーダーとして、組織横断のデータガバナンスを整備。

クロスフィールドパス: 国際機関、公共コンサル、シンクタンク、GovTechスタートアップで公共データ活用を推進。

キャリアに関するあれこれ

Q: 行政経験がなくても大丈夫?
民間出身でも、行政プロセスを学びつつ小さな施策から成果を出せば十分活躍できます。条例や手続きの理解を早めに進めることが鍵です。
Q: データ公開で気をつけることは?
匿名化ルールや再識別リスクの評価、住民への説明責任が重要です。公開前に倫理審査や外部有識者のレビューを通す自治体も増えています。
Q: 成果はどう評価される?
政策の効果改善や予算削減、住民満足度向上など定量指標に加え、エビデンスに基づく意思決定プロセスを根付かせたかが評価されます。