データサイエンティスト(プロダクト)

機能軸: 分析戦略・意思決定支援 業界軸: SaaS・デジタルサービス 提供モデル: 事業会社内製

データでプロダクトの成長加速度を上げる

各種データとデータサイエンススキルを武器に、A/Bテストが難しい施策でも効果改善や効率化を行うデータサイエンティストの仕事像を解説します。仮説づくりからレポーティング、チーム連携、要求要件整理まで実装以外のマルチな動き方が必要です。

役割概要

プロダクトデータサイエンティストは、ユーザー行動ログや各種データ等を束ねて仮説→検証→ROI説明までを一気通貫で担う存在です。因果推論に基づいた効果検証やレコメンドロジックのエンハンス等などのプロジェクトを回しつつ、意思決定を支援するところまで伴走します。

意思決定の現場に入り込み、プロダクトマネジャー・データエンジニア・マーケターやプロダクトグロース等の三者をデータで橋渡しします。経営陣への説明責任まで支えることでチーム全員のアクションをそろえます。

主な業務領域

行動データの探索

  • ファネル分解: サインアップ〜継続利用の離脱ポイントを特定し優先度を明確化する。
  • セグメント深掘り: LTV上位ユーザーの共通行動をクラスタリングで抽出。
  • 仮説→起案: 行動ログから仮説を立てて、よりCVRの高いロジックへの変更を行う

実験設計とパーソナライズ

  • 準実験の設計: 自然実験や差分の差分法でA/Bテストが難しい施策を評価。
  • 推薦モデル構築: レコメンドやスコアリングモデルでエンゲージメントを向上。
  • メールやLINEの配信ロジック: one to oneのコミュニケーションにより、CVRを最大化。

事業との関わり

  • ステークホルダー連携: マーケやプロダクトグロースと打ち手をすり合わせ、次の施策に繋げる。
  • エグゼクティブ報告: ROIサマリーと次の投資判断材料を短いスプリントで提供。

代表的なプロジェクト

株式会社リクルート CausalImpactを用いたオウンドメディア記事の価値証明

SUUMOは、コンテンツマーケティングが最終的なCVに貢献するかを検証しました。将来の顧客層に対し、オウンドメディアの記事を初期接点とするキャンペーンを実施し、CausalImpact分析で効果を測定。結果、記事に接触したエリアではCVが約35%増加したと推計されました。

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株式会社PREVENT 医療データ解析サービス「Myscope」の開発

健康保険組合の健診・レセプトデータを解析し、生活習慣病の発症リスクを予測するサービスを開発。高リスク者にはオンラインでの生活習慣改善指導を提供し、重症化予防を支援する。

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株式会社みずほ銀行 AI搭載の校閲・校正システムの導入

業界特有の専門用語や規制を学習したAIが、原稿の誤字脱字を自動で抽出するシステムを導入。校閲業務を効率化し、成果物の品質向上とミスの削減を実現した。

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スキル&マインドの3層マップ

テクニカル
  • SQL×Python: BigQueryでデータ抽出し仮説検証を回す。
  • 情報理論の理解: 因果推論やNLP、数理最適など、強みが一つでもあると良いでしょう。
  • 事業のデータ基盤理解: 定期ロジックのエンハンス等で必要になります
ビジネス理解
  • 事業の戦略理解:事業側の戦略の理解は必須です。戦略に基づいた案件の起案が、活躍の鍵です。
  • KPIツリーの理解: マーケファネルに分解し、インパクトが大きく優先度が高い課題から解決しましょう
  • ROIの説明: エグゼクティブ向けに投資効果を端的に提示する必要があります
コラボレーション
  • プロジェクト: PMやエンジニアと協業し、仮説→実装→検証サイクルを共有します
  • CS/マーケ連携: 施策でデータ観点を補強したり、要求の壁打ちからプロジェクトに昇華したりします。
  • プレゼン力: 図や言葉の粒度を相手に合わせて翻訳します。

キャリアの伸び方

スペシャリストパス:会社によって役職名は異なりますが、テックリードになるパターンです。難度の高い仮説検証と基盤整備をリードします。

グロース/PMパス: KPI設計の経験を活かし、グロースリードやプロダクトマネジャーとなって事業KPIを握る道もありえます。

越境パス: 顧客折衝が好きならAIコンサルタントやソリューションスペシャリストとして社外案件を支援するポジションも相性が良いです。

キャリアに関するあれこれ

Q: 実装メインの職種でしょうか?
そんなことはないです。マーケターや営業など、いわゆる事業側のニーズをヒアリングすることで、要求要件を定義していき、委託している開発パートナーと協業して開発プロジェクトを進めて行ったり、分析要件や検証設計のレビュー会に参加したり、結果のレポーティングをしたりと、関係者が多く、動き回ることも多いです。コミュニケーション能力がものを言います。
Q: 将来はどんな業界で需要がありますか?
SaaSやサブスクリプション型サービスはもちろん、金融・メディアでもグロース観点のデータ活用が加速しています。隣接職種のプロダクトアナリストデータエンジニアとチームを組む機会も多いです。Google Colaboでデータサイエンスエージェントが発表され、データサイエンスの民主化は進みそうですが、理論をベースにしていない分析は誤解を招くことがあるので、統計や機械学習の理論をしっかり学んだ人材の需要は依然として高いはずです。